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【ゴールド・ボーイ】感想(ネタバレちょいあり!)と考察/沖縄の日差しが眩しい胸糞展開

 

不穏度

30(100を満点として)

やたら人は死ぬけど不穏ってわけじゃないです

基本情報

公開年:2024年

監督:金子修介

脚本:港岳彦

キャスト:岡田将生(東昇)安室朝陽(羽村仁成)黒木華(安室香)星乃あんな(上間夏月)前出燿志(上間浩)

上映時間: 129分

あらすじ

<以下アマプラの紹介文より引用>

義父母を崖から突き落とす男の姿を偶然にもカメラでとらえた少年たち。事業家の婿養子である男は、ある目的のために犯行に及んだのだ。一方、少年たちも複雑な家庭環境による貧困や、家族関係の問題を抱えていた。「僕達の問題さ、みんなお金さえあれば解決しない?」朝陽(13)は男を脅迫して大金を得ようと画策する。「何をしたとしても14歳までは捕まらないよ。少年法で決まってるから」殺人犯と少年たちの二転三転する駆け引きの末に待ち受ける結末とは……。

評価

最後の最後まで転がり続けるストーリー!いやはや評判通りの面白さでした!いや、これ面白いと言っていいんかな…。沖縄の明るい空を海をバックに陰惨な殺人事件が繰り広げられ、しかも子供(13〜14歳)が関わっているから胸糞悪い。胸糞悪映画の傑作「さがす」を思い出しました…。では以下、少々ネタバレありの感想と、気になった点考察です〜。

感想

なんとなく日本人離れした発想のプロットだなと思ったら、やはり原作は中国の小説。日本映画ではありますが、エンドロールにも中国人らしき方々のお名前がたくさん出てきました。中国のエンタメはよく知りませんが、韓国映画に近いなあという感想。話の展開のためなら人をバンバン殺す。その展開の方法も「不運が重なって」ではなく、強烈なキャラクターが出てきてソイツがとんでもないことをやらかしていく、って方法です。

先ほど「さがす」を思い出した、と書きましたが、それは登場するサイコパスが実は1人ではないってことなんです。まず冒頭に義父と義母を事故に見せかけて殺す東昇(ひがしのぼる/岡田将生)。コイツがやばい人間だということは、息を吐く様に嘘を付く様子からもすぐ分かります。

そしてもう1人が中学生の朝陽(あさひ/羽村仁成)。成績がよく、シャツのボタンを上までキチンと止め、働きづくめの母親に優しいコイツのヤバさは徐々に見えてきます。

なんとも言い難い胸糞悪さを感じるのは、この朝陽という子供の存在。いくつかの実際の事件を思い出してしまうんですよ。「もし自分の子がこうだったら…」と、その事件を報じたニュースを観た時に感じたあの恐怖を思い出してしまう。ワタシが長く生きてきたおばちゃんだからでしょうけど。

そうなんです、映画って皆そうですけど、外国作品だったら「ひどい話だけど面白かった!」で済むんですが、日本人が演じる日本映画となると、現実とオーバーラップしてモヤモヤするんですよね。ってことは自国の映画を良く見るアメリカ人は毎度こんなモヤモヤを抱えてるのか…大変だな。

そんな胸糞展開の中で一縷の爽やかな風を感じさせてくれるのが夏月(なつき)の存在。観客が唯一感情移入できる人物です。演じたのは星乃あんなさんという方ですが、この手足の長い女の子、声に説得力があってとても良かったです。

考察

夏月はなぜ振り返ったのか?

ここからは、観た人にしか分からない話になりますが…。作品に爽やかな風を吹き込んでくれる夏月ですが、最後に3人(朝陽・浩・夏月)で昇のマンションに向かう時、一人振り返るんですよ。夏月が振り返ってまで観た光景はバス停とその向こうに広がる海と空。沖縄ならたいして珍しくもない光景です。

この印象的な場面は2度出てきます。1度目の時は「帰りのバスの時間を気にしてんのかな?」くらいに思いました。というか意味が分かりませんでした。

2度目はラストで夏月の手紙の中の回想として出てきます。その時に気付くわけです。彼女はおそらく「最後の風景」を見るために振り返ったのだと。聡明な彼女はマンションで何が起きるか予測がついていた。おそらく生きてその部屋を出られはしないだろう、と。帰りのバスに乗ることはないだろう、と。

赤いバス停と風に揺れる緑の木々と、その奥にどこまでも広がる青い空と海。絵の様な景色を最後に瞳に刻みたかったのかも知れません。(ううう…カワイソウすぎる…)

朝陽の計画はいつから?

2人目のサイコパス朝陽は、いつ実父とその再婚相手の殺害を思いついたか?というのも気になります。

ざっくりストーリーを説明しますと、昇が義父母を殺害している現場を偶然動画で押さえた中学生3人が昇を脅迫する。当初の目的はお金だったが、途中で「朝陽が憎んでいる実父とその再婚相手の殺害」に変わる。その目的を果たすため、朝陽は昇と他の2人を利用するんです。

昇を利用して実父と再婚相手を殺害するというこの計画、かなり初期段階で思いついているように思えます。

というのも、当初「1000万円あればいいよね」と朝陽が2人に言っていた脅し金額が、昇を目の前にした際、説明もなしに「6000万円出せ」と変わっている。朝陽はとても頭の良い子です。「株を売ればいいじゃないか」と迫るなど、中2にしては社会の仕組みもよく知っている。だからこそ現金6000万円が簡単には用意できないこともわかっていたはず。あえての難題をふっかけて相手の出方次第で、自分の殺人計画に巻き込もうとしたのではないでしょうか。恐ろしや…。

ゴールドボーイの意味

タイトルの「ゴールドボーイ」。これはおそらく朝陽がとった金メダルのことでしょう。彼は数学オリンピックで優勝しているのです。そして昇は同じ大会で銀メダル。「数学」でも「犯罪」でも、2位は1位に勝てなかった、と。朝陽が昇の部屋でトロフィーを見つけて発覚するこのくだり、大事なところだと思うんですが、あまり強調されずさらっと終わってしまいます。だからしばらくタイトルの意味考えちゃいましたよ…。

さて、そうは言っても朝陽は「無冠」の大人、つまり刑事である江口洋介には敵わなかった。この差はやっぱり子供と大人の差です。どんなに頭が良くても人生経験がない。朝陽には「人の見立て」みたいなのが出来ないのです。夏月があんなに純粋で優しく、そして頭の良い子だとは思わなかったでしょう。一方、人の間で揉まれてきた大人は「被害者ヅラしている朝陽だが、コイツはこんなタマじゃない」ってのが感覚的に分かる。最後は現実的なところでピリオドがついて良かったです。

あと舞台を沖縄にしたのも、その太陽のまぶしさと貧しさが胸に響きましたよ。陰惨な事件には極寒もしくは常夏の景色がよく似合いますな。

追記:見逃しましたが、エンドロールの後に「ゴールドボーイ2」のテロップが出るそうですね。えっ、てっきり朝陽は警察に捕まったと思ってましたが、違ったの?!

ゴールドボーイはアマプラで観られます〜。

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「さがす」のレビューも置いときますね!

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