映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【さがす】感想とラストについてネタバレ考察/胸糞映画の大傑作!


さがす [Blu-ray]

基本情報

公開:2022

監督:片山慎三(他作品「岬の兄妹」)

主な出演者:佐藤二朗(お父ちゃん)  伊東蒼 (娘の楓) 清水尋也(名無し/山内照巳)

上映時間123分

あらすじ

<以下「さがす」公式サイトより引用>

「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」

 

大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。

ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。

失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。

感想

思い出すだけで嫌な気持ちが蘇る

今、このレビューを書いているのは鑑賞してからちょうど1年後。ストーリーの細かな部分は忘れたけど、いくつかのシーンとその時感じた肌感を今も鮮烈に覚えています。オープニング「お父ちゃん」が陽の当たる暖かそうな庭で一人で不思議なアクションをしているシーン(のちにそれは殺人のリハーサルだとわかるわけですが)の牧歌的なのに「これは絶対やばいことしてるぞ」と直感するゾワゾワした気持ち。自殺志願者だった「お母ちゃん」が見ず知らずの男に「白い靴下」を履かせられる時の「ひっ!」と芯から肝が冷える感じ。島のじいさんがAVコレクション部屋の襖を開けた時の「うへえ…」な感じ。

…って思い返してみたら嫌な気分にしかなっとらんじゃん。なんつー胸糞映画なん!

とワナワナしてきました。いやはや。「力のある映画」とはこういう作品のことを言うんでしょうね。

監督・脚本は片山慎三氏。前作「岬の兄妹」は見ていませんが(ストーリー読むだけでおそろしすぎて見られない)「人が見せたくないものを撮る」と言われているようで。一番隠しておきたい部分を最後のヴェールを剥がして見せてくる。それがどんなに醜いものでも相対する人は「見たい」という欲望を抑えられません。ああ、一番醜いのは「見たいという欲望」を丸出しにしてスクリーンのこちら側にいるワタシなのだね…ということに気ずいてうなだれてしまう、そんな映画ですのでこれから観ようという方は覚悟してご覧あれ。この年(2022年)の胸糞映画ぶっちぎりトップ1位だと思います。

考察

スマホの謎

うろ覚え記憶なのですがどうしても納得できなかった部分がありまして、それについてあれこれと考えておりました。中盤より少し後、娘の楓は殺人鬼の山内を追いかけ彼が落としたスマホを手に入れます。そのスマホはお父ちゃんのスマホです。「なぜこの人がお父ちゃんのスマホを持っているの?」と、楓はここでお父ちゃんが山内と関わっていることに気づきます。怒涛のラストへの伏線です。

ラスト、楓はそのスマホを使って自殺志願者のフリをしてお父ちゃんとSNSでやりとりをします。この時、画面に映るのはお父ちゃんが山内を始末して表彰されたことを報じる新聞記事。そして夢だった卓球場の再建を成し遂げていることがわかります。ってことは島での事件からそれなりに時間が過ぎていますよね?ここで疑問に思ったのが「じゃあ楓が持っていたお父ちゃんのスマホ代は誰が払ってたん…?」ということ。お父ちゃんもスマホを持っていたということは「前のスマホは失くした」ってことで新たに契約したんですよね?だったら前のは解約しますよね、お金引き落とされちゃうし。うーむ…。

しかしよくよく考えたら楓が使っていたスマホは楓本人のスマホである可能性もあるな…と思って今見直してみたらしっかり「お父ちゃんのスマホ」でした。むむむ…可能性としては島での事件から1ヶ月経っていないということでしょうか…

楓がお父ちゃんを通報した理由

父娘2人が卓球台を挟み球を打ち合うラストは圧巻です。言うまでもありませんが楓は通報しています。遠くに聞こえるパトカーのサイレンはお父ちゃんを迎えにくる警察です。楓はなぜ通報したのか?それはお父ちゃんの「真実の姿」をさがしあて、見つけてもなお残る謎を知りたかったからではないでしょうか?その謎とは「お母ちゃんの死」にお父ちゃんがどうかかわっていたのか?ということなのでは。卓球場で天井からお母ちゃんが吊る下がっているシーンがあります。これは楓の幻視です。「卓球場で首をくくった」という、おそらくお父ちゃんからもたらされた情報から想像したのでしょう。しかし実際は違いますよね。天井から吊る下がっていたわけではありません。つまり楓はお母ちゃんの死の真実を知らない。そして彼女はお父ちゃんがお母ちゃんの死に関わっていることを感づいたのでしょう。

エアラリーの意味は?

白いピンポン球を打ち合う2人。映画が終わるほんの数秒前、その球が消えます。楓がエアサーブし、お父ちゃんが打ち返す。ピンポン球の音だけは響くが球はない。ここも不思議ですよね。ほんとにさっきからワタシの勝手な解釈で申し訳ないのですがこれ、「間に行き来するものがなくなっても2人の関係はずっと続く」という意味なのではないでしょうか。楓はきっとお父ちゃんを見放さないでしょう。出所したお父ちゃんを「おかえり!」と照れたように迎える数年後の姿が観たいと思いましたよ。西成という町の猥雑さと秘めた暖かさも感じる作品でした。

人生変わった度

★★★

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②「パラサイト」のポン・ジュノ監督の傑作。コロシの胸糞度は「さがす」と同じくらいかも…「殺人の追憶」

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