基本情報
公開:2022
監督:片山慎三(他作品「岬の兄妹」)
主な出演者:佐藤二朗(お父ちゃん) 伊東蒼 (娘の楓) 清水尋也(名無し/山内照巳)
あらすじ
<以下「さがす」公式サイトより引用>
「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」
大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。
ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。
失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。
感想らしきもの
思い出すだけで蘇る「嫌な気持ち」
今、このレビューを書いているのは鑑賞してからちょうど1年後。ストーリーの細かな部分は忘れてしまっているけど、いくつかのシーンとその時の自分の感情を今も鮮烈に覚えています。オープニング「お父ちゃん」が陽の当たる暖かそうな庭で一人で不思議なアクションをしているシーン(のちにそれは殺人のリハーサルだとわかるわけですが)の牧歌的なのに「これは絶対やばいことしてるぞ」と直感するゾワゾワした気持ち。自殺志願者だった「お母ちゃん」がいざという時に見ず知らずの男に「白い靴下」を履かせられる時の怯えた顔と絶望的な気持ち。そして胸がぎゅううとなる親子で卓球をするラストシーン。
…って思い返してみたら嫌な気分にしかなっとらんじゃん。なんつー胸糞映画なん?!
とワナワナしてきましたが、映画は「その人の欲望」を正直に描いているだけなんです。なぜそれが嫌な気分になるのか?人の欲そのものが「キモい」んでしょうか?誰にでも欲はありますよね?あなたも私もキモいってことでしょうか?…などということをぐるぐると考えさせられてしまいました。
いやはや。「力のある映画」とはこういう作品のことを言うんでしょうね。
監督・脚本は片山慎三氏。前作「岬の兄妹」は見ていませんが(ストーリー読むだけでおそろしすぎて見られない)「人が見たくないものを撮る」と言われているようで。一番隠しておきたい真の欲望をわざわざ最後のヴェールを剥がして見せてくる。そんでもってこっちはわざわざお金を払って嫌な気持ちになっている。それが美しいものであれ醜いものであれ、人は「見たい」という欲望を抑えられません。それはまだ傷が治っていないのに絆創膏を剥がしたくなるあの快感に似ています。ああ、一番醜いのは「見たいという欲望」を丸出しにしてスクリーンのこちら側にいるワタシなのだね…ということに気づいてうなだれてしまう、そんな映画ですのでこれから観ようという方は覚悟してご覧あれ。この年(2022年)の胸糞映画ぶっちぎりトップ1位だと思います。
気になった「お父ちゃんのスマホの謎」(がっつりネタバレ)
それともう一つ書いておきたいことが。うろ覚え記憶で申し訳ないのですが、どうしても納得できなかった部分があります。お父ちゃんのスマホの件です。
中盤より少し後、娘の楓は殺人鬼の山内を追いかけ彼が落としたスマホを手に入れます。そのスマホはお父ちゃんのものだったはず。「なぜこの人がお父ちゃんのスマホを持っているの?」と、楓はここでお父ちゃんがよからぬことに関わっていることに気づき、怒涛のラストの展開に繋がるわけです。
ラスト、楓はそのスマホを使って自殺志願者のフリをしてお父ちゃんとSNSでやりとりをします。この時、お父ちゃんが山内を始末して表彰されて、その後卓球場を再建しているわけだからそれなりに時間が過ぎているように思うのですがその間、楓が持っていたお父ちゃんのスマホ代は誰が払ってたん…??お父ちゃんもスマホを持っていたということは「前のスマホは失くした」ってことで新たに契約したんですよね?だったら前のは解約しない??ふつう。私の勘違いだったら申し訳ないのですが…同じような疑問を持っている人いないかな?と思って書いてみましたん。
人生変わった度
★★★
人の欲望を覗き見している時、あなたの「見たい」という欲望もまた覗かれているのだ
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