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【ウォーフェア 戦地最前線】感想(ネタバレなし)/リアルすぎる戦場から立ち上がるもの

不穏度

30(100を満点として)

なにしろここは最前線

基本情報

公開年: 2026年1月16日

監督&脚本: アレックス・ガーランド、レイ・メンドーサ

キャスト:ディファラオ・ウン=ア=タイ(レイ・メンドーサ役) ウィル・ポールター(エリック役)コズモ・ジャーヴィス(エリオット役)ジョセフ・クイン(サム役)チャールズ・メルトン(ジェイク役)キット・コナー(トミー役)

上映時間:95分

あらすじ

2006年、イラク戦争の激戦地ラマディ。アメリカ海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」の小隊8名は、アルカイダ幹部の監視・狙撃任務のため、深夜に現地の民家を占拠する。しかし、敵に存在を察知され、予期せぬ先制攻撃を受けてしまう。反乱勢力に完全に包囲され、退路を断たれた密室のなかで重傷者が続出。指揮系統がパニックに陥り、地獄絵図と化した極限状態のなか、隊員たちは生き残るための決死の脱出プランを試みる。

評価

2025年話題になったものの劇場に足を運べなかった一本。こういう作品に言っていいのかいつも悩みますけど、面白かったです!映画館で観たかった!

キャッチコピーは「95分、戦場に閉じ込める」。まさにその通り、最前線で実際にあった出来事をなるべく忠実に再現、映像としても挑戦的な95分でした。

この手法が、「戦争反対!」とか逆に「アメリカカッコいい!」とかの思想がまったくないのに戦争の不気味さをジワジワと感じさせるのですよ。

では以下、ざっくり感想です。

感想

アレックス・ガーランドは、アメリカ内戦の様子がリアルすぎると話題になった「シビル・ウォー」でメガホンを取った監督。レイ・メンドーサは同作の軍事アドバイザーだったとか。元シールズ隊員とのこと、どうりであの作品の戦闘シーンも凄かった!

そして「シビル・ウォー」で意気投合した2人が、レイの体験談を元に脚本を書き、共同監督したのが今作「ウォーフェア」です。

劇中の通信兵がレイ。当時の仲間たちの証言も得つつ、2006年のラマディでの地獄のような95分をなるべくそのまま再現したのだそう。

ガーランド監督はインタビューでこんなことを言っています。

映画は編集で時間が圧縮されていくのが常です。だから映画における事象は現実より遥かに早く進む。たとえば誰かがお茶を淹れる場面では、やかんが沸くのを映像は待ったりはしない。カットが入ることで、2分ではなく7秒で沸騰するんです。

しかし『シビル・ウォー』の撮影時に兵士がリアルタイムで見せた動きを見ていると、戦闘の大半が沈黙や視線の交わし合い、あるいは小さな合図で構成され、それが後の爆発的な動きに繋がっていた。それに気付いたとき、とても興味を唆られたんです。そこで『シビル・ウォー』の編集作業中に、レイに「戦争をありのまま描く戦争映画をつくってみないか」と提案しました。音楽も、時間の圧縮も一切使わない。誰かが2分間何も言わず座っているなら、2分かけてその通りに映す。

そうなんです、これ「24」なんですよ。

えーと、お若い方はご存知ないかもなので説明すると「24(トゥエンティーフォー)」は00年代に大ヒットしたアメリカドラマ。冒頭で事件が起き、テロ対策ユニットが対応するのですが、それをオンタイムで見せていく。1シーズン24回で1話1時間。CMが60秒ならCM明けのタイムもちゃんと60秒後になっている…という画期的なつくりでした。

スケールが大きく幾つものパートがあり、世界のあちこちで物語が進行するので中弛みは起きません。

一方の今作「ウォーフェア」の舞台はイランのとある民家の中。ほぼここだけで展開します。

それでも中弛みなく緊張感が続くのは、最前線の戦場ということと、こだわりの音響でしょう。レイによれば、戦場では発射や弾丸がかすめる音で銃との距離を判断するそうで、そんな音の違いも忠実に再現しているのだとか。

印象的だったのは「手榴弾が投げ込まれた部屋に荷物を取りに行く」という前半のシークエンス。弾丸が飛んでくるかもしれない部屋に緊張しながら仲間の荷物を取りに行くが、何事もなく帰ってくる。普通の戦争映画ならカットになる…いや、脚本にも起こされないような地味すぎる場面です。

こういったシーンを入れ、かつ映画として面白くするには工夫が必要。とくに今作は「実際の出来事を忠実に再現」と謳っているのですから嘘は描けない。となると工夫できるのはカメラ位置とカット割だけになります。それでよく見ると、兵士たちの正面顔を割とよく映しているんですよね。「緊張感」を表現するのに一番分かりやすいのは、やっぱり「緊張した人の顔を映すこと」なんだよなあ、なんて当たり前のことに気がついたりして。

冒頭にわざとらしい人物紹介がないので名前も役割もよく分からないままに進んでいきますが、ちゃんと表情や態度でキャラクターが判別できるようになっているのも上手い。

さて、物語に話を移すと、映画の中には敵への憎しみも祖国への忠誠心もなく、兵士が「業務」をこなしています。上官に命じられたことをし、仲間が傷ついたら助け、時に失敗し、時にズルをする。恐怖感を抜きにすればやっていることはオフィスと変わらない。

満員電車に揺られて定時に出社、厳しいノルマに追われ、うっすら病んでいる…って割と普通の生活ですけど、何のために?なぜそこまで?と聞かれたら答えられません。それが習慣だからです。

戦場最前線の彼らも同じように見えました。何のため?とか考えないのが当たり前な感じ。血まみれの仲間を助けに弾丸飛び交う中に飛び込むなんていくらでも感情的に描けますが、そうじゃないんですよ。激しいショックを受けつつもそれが業務だからやってるようにも見えます。

人間って躾けたらこうなるんだあ…とゾッとします。人殺しだろうが何だろうが業務になれば出来る。こういった「何とも不気味な感じ」が図らずもスクリーンから立ち上がってきているのが今作の面白いところ。

できるだけ忠実に再現してみたら、当事者たちが意識しなかったものが写り込んでいた…みたいな。

エンドロールに実際の兵士の写真と俳優の写真が並びます。モザイクが入っている人もいるのが生々しい。この極限状況を乗り越えた彼らは一体どんな人生を送っているんだろう?殺したり殺されたりを業務とすることは、その人そのものを根源から変えるのではないのか?それは人ひとりをぶっ壊すことにならないの?優秀な人材を壊したら国力衰退するんじゃないの?じゃあ国は何のためにそんなことするの?

うーん…

戦争反対を高らかに訴える作品より、ずっと色々考えてしまいました。真摯に作られた映像作品の力を目の当たりにしましたよ…

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ウォーフェア 戦地最前線

ウォーフェア 戦地最前線

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「お前はどの種類のアメリカ人か?」でお馴染み、シビル・ウォーのレビューはこちら。内戦のアメリカで4人のジャーナリストが「闇の奥」を目指す戦地ロードムービー。人間ドラマもあり面白いです。戦闘シーンの迫力もすごい!

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