
基本情報
公開年:2026年
監督&脚本:イド・フルーク
キャスト: マラ・エムデ(ヴェラ・ブランデス)ジョン・マガロ(キース・ジャレット)アレクサンダー・シェアー(マンフレート・アイヒャー)マイケル・ワッツ(マイケル・チャーナス)
上映時間:116分
あらすじ
<以下公式サイトより引用>
ドイツ・ケルンに住む高校生ヴェラ・ブランデスは、音楽好きでナイト・クラビングも大好き。厳格な歯科医の父親への反抗心もあり、ふとしたきっかけで来独ミュージシャンのツアーをブッキングするバイトを始めることになる。仲間たちの協力を得ながら、持ち前のバイタリティを発揮して仕事が軌道に乗り始めた頃、ベルリンのジャズ・フェスティバルに出向いた彼女は、アメリカの天才ピアニスト キース・ジャレットの演奏を聴き、雷に打たれるほどの衝撃を受け、キースのケルン公演の開催を決意する。いくつもの困難を乗り越えて当日を迎えるが、舞台にはキースが希望していたものではない違う種類のピアノが用意されていて、キースは演奏を拒否。開演時間が迫りくる中、ヴェラは……。
評価
公開からだいぶ日にちは経ちましたがアップリンク吉祥寺は満員。口コミでヒットしているそうですが評判通りの面白さ&感動作でした!なんと爽やかな青春映画!
ジャズを全く知らないので、そもそも「1975年のケルン・コンサート」自体が何なのか、マニアの夫に事前に解説してもらいました。
簡単に言えば、天才ジャズピアニスト、キース・ジャレットが1975年ケルンで行ったライブで、それを録音したレコードはジャズとしては世界一売れた超有名なもの。あまりに売れすぎて俗物化されたせいでジャズ喫茶には「ケルン・コンサートお断り」の張り紙が出たとか。
しかし当日のコンディションが非常に悪かったことと元来の気難しい性格のため、キース自身はこの音源を気に入っていないのだそう。
へえ〜。知らんかった。
他にも色々あるようですが、ワタシくらい無知な方もこの程度を知っておけば大丈夫です。
んで映画のほうですが、実話に基づく話というのも感動的ですが、それ以上に物語としてよく出来てるなあ〜と感心してしまいました。
以下、感心ポイントを感想としてまとめてみます〜。ラストのオチはさすがに書きませんが、近いところまでネタバレしてしまうので、嫌な方は引き返して下さい!
感想
冒頭は50歳になった主人公ヴェラの誕生日パーティーの様子。彼女が「時間を巻き戻して」、16歳に戻ります。
語り手ヴェラは第四の壁を破り、観客に自分の状況を説明します。
そしてもう一人、第四の壁を破る人物がいる。マイケル・ワッツという音楽ライターです。この人は、もう一人の主役であるキース・ジャレット側に付き、この天才ジャズピアニストの状況を説明しつつ、ジャズの歴史まで教えてくれるんです。ありがたい…!
ヴェラのほうの比重が大きいですが、ヴェラとキースが邂逅するまでのそれぞれの道のりを描くことで1975年1月24日のコンサートがいかに「奇跡」だったかを語っていきます。
16歳のヴェラは25歳と偽ってバーに忍び込んではジャズの生演奏を聴いている。ある時出会ったジャズマンに「コンサートをブッキングしてよ」と言われ、よく分からないままプロモーター的なことをやり出します。武器は若さゆえの勢い。厳格な父親と対立しつつ、18歳にして資金を回してオフィスを借りるやり手です。
そんな彼女がキースの演奏に聴き惚れて地元ケルンでのコンサート開催を企画。
一方のキース。これも知りませんでしたが彼のピアノって「即興」なんですよ。アメリカで売れ線音楽を作ることに疲れたキースはヨーロッパを巡り、ピアノ1台だけで即興コンサートを開く。商業ではなく芸術を求めたのです。劇中では一人で行う即興演奏がいかに難しいかをマイケル・ワッツが解説。面白いシーンになっています。
辞書によれば「即興」とは…
「あらかじめ準備や計画をせず、その場の雰囲気や瞬間のひらめきに基づいて、即座に音楽、演技、詩歌などを創作・表現する手法のこと」。
技術がなくてはできないし、しかし技術は邪魔になる。キースにとって1975年のツアーはいかに自分の殻を破れるかの戦いだったのでしょう。
そこに現れるヴェラというやけに若いプロモーター。仕切りが悪すぎて、当日用意されていたピアノはリクエストしていたメーカーのものではない上に状態が悪すぎる。機嫌を損ねたキース、「今日はできない」と公演数時間前にキャンセル、ホテルの部屋に引きこもってしまいます。
ヴェラはこの危機をどう乗り越えるのか?!というのが終盤の見どころ。
実はヴェラのここまでの動きってずっと行き当たりばったりなんです。意図せず「即興」的な動きをしている。そう、芸術家であるキースが自分の枠を壊すことに苦しんでいた中、若いヴェラは軽々とそれを飛び越えていた。
ヴェラはキースに「あなたが弾いてくれないと私が困る」と言います。びっくりするほど何も考えていません。人を説得する時に「私が困るから」ってないでしょう。当然キースは「知らんがな」と追い返します。
諦めきれないヴェラ、キースの部屋の前でブチギレながら「用意された舞台と違うから出来ないなんて、そんなの即興と言えるの?!アンタむしろ私に感謝すべきよ!」(うろ覚えですがこんなセリフ)みたいなことを言う。
あらかじめ準備や計画をしていたらこんなことは言えません。彼女は「即興」を体現したようなキャラクターなのです。
物語は「そんな2人が出会ったからこそ奇跡の一夜が起きた」とまとめています。感動的です。この後大オチが来るのですが、それも含めて最後泣いちゃいます。
人と人が出会えば何かが生まれる。たとえそれがたった一晩の出来事であれ、最悪なシチュエーションだったであれ。AI時代になって人間の面白さを強く感じるようになりました。ああ、人間っていいよなあ〜…
とはいえ、事実はこんな美しい話ではないのでしょうね。監督がこの映画の許可を取るためキースに連絡したら、興味がないとのことでケルンコンサートの音源は使わせてくれなかったのだとか。
そんなわけでタイトルのケルンコンサートの曲はかかりません。
でもだからこそジャズ映画ではなく青春映画になって幅広い人々の心を打つ作品になったのでしょう。さっぱりジャズを知らないワタシも胸を打たれた一人だからね。
「1975年のケルン・コンサート」、まだしばらくは上映してそうです。公式サイト貼っておきますね〜。未成年がバンバン飲酒&喫煙するのでPG12となっています〜。