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不穏映画が大好物のアラフィフ女 不穏度を数値化しています 感想と考察が入り混じる映画レビュー すべて個人の感想です

【猿楽町で会いましょう】感想(ネタバレちょいあり)/残酷な真実が映った恐怖恋愛映画

 

不穏度

15(100を満点として)

あえて不穏映画に入れさせていただきます…

基本情報

公開年:2021年

監督:児山隆

脚本:児山隆 渋谷悠

キャスト:金子大地(小山田修司)石川瑠華(田中ユカ)栁俊太郎(北村良平)小西桜子(大島久子)前野健太(嵩村秋彦)

上映時間:121分

あらすじ

<以下、アマプラの紹介文より引用>

鳴かず飛ばずのフォトグラファー、小山田は、読者モデルのユカと出会う。次第に距離を縮めていく2人だが、ユカが小山田に体を許すことは決してなかった。そんな中、小山田が撮った彼女の写真が、2人の運命を大きく変えることになる。

評価

怖い怖い怖い!怖かったようー!!

先日いたく感動した「万事快調 オール・グリーンズ」の監督の長編デビュー作ということで観てみたんですよ。「恋愛ものだと思ったらホラーだった」「胸糞悪過ぎ」などの評判があったことは知っていたのですが、予想以上。

残酷。ものすごく嫌なものを観てしまった感が凄い。(褒めてます!)リビングで夫と一緒に寝っ転がって「やべえぞ」と笑いつつ観ていたので、まだこの程度のキツさとモヤモヤで済んでいる。映画館で一人で見たら2〜3日は引きずったのではないでしょうか…。

かなりインパクトの強い劇薬系恋愛映画です。お若い方はそれなりに覚悟をして観てください。では以下、感想です。 (注!ラストシーンについて触れています!)

感想

みいちゃんが頭をよぎる

メンヘラ女子に振り回される金子大地という役柄が似ているせいか「ナミビアの砂漠」と比較するレビューもちらほら。ワタシが思い出したのは「青の帰り道」と漫画「みいちゃんと山田さん」です。

群像劇である「青の帰り道」は、とある女の子が芸能界に憧れ上京したものの搾取され転落していくというエピソードが似ています。

そして「みいちゃんと山田さん」を思い出したのは今作のユカがみいちゃんと被ったからです。その理由は後述するとして、この作品、構成がとても面白いのです。

第一章は駆け出しフォトグラファーの小山田(金子大地)と読モのユカ(石川瑠華)との出会い。恋に落ちたのねと思ったら第二章で時間が遡り、小山田に会うまでのユカが描かれます。第一章で印象的だったユカの言葉や行動の理由が明かされるのです。

んで、観ているほうは「あちゃ〜!」となる。ヤバいんですよこの女。

例えば、初対面で小山田が着ている「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のTシャツを見て「人がゆっくり歩くと怖いってロメロの発見ですよね〜」とのたまうのですが、この言葉は彼氏の受け売りそのまま。彼女、別に映画好きなわけじゃないんですよ。映画好きとしては初対面の子にこんなこと言われたら好きになっちゃうだけになんか腹立ちます。

空っぽのユカは一時が万事この調子。性格が悪いのも周囲の人たちがそうだからでしょう。

そしてもう一つ面白いのが、小山田とユカそれぞれの境遇を雑誌編集者・嵩村というハラスメント野郎を介して描いていること。

売り込みにきた小山田を軽くあしらい、バカにする。一方で行きつけのメンズエステでユカにはセクハラ。その2人を「写真家と被写体」として出会わせるのが嵩村です。

この時点で2人は共に「夢を人質に大人に搾取される若者」です。

小山田が撮ったユカの写真は賞を取る。小山田は評価され、ユカも若い子たちから羨望の眼差しを向けられます。

うまくいけばカラックスとビノシュのごとく2人してのしあがっていけそうですが、そうは問屋が卸しません。

小山田がうまくやっていくのに対し、ユカは今ひとつ現状を打破できない。なんでかと言えば、ワタシは単純にこの子がバカだからだな、と思ってしまいました。いや、酷い感想なんですけど。

出発点は同じなのに差がつく。性差はあるにせよ、人は生まれながらに平等ではないという不都合な真実が浮かび上がってきます。

小山田のほうは性欲も落ち着けばやがて「そもそものレベルの違い」に気が付く。あとは別れしかありません。周囲に聞かれたら「彼女に嘘をつかれたから信用できなくて別れた」と言うのでしょうが、本当は、「この後に及んで嘘をつくほどのアホと一緒にいたら足を引っ張られるから別れた」、が正しいかと。

ものすごく残酷で、誰もが口には出せないけれどうっすら気づいていることを真正面から描いているように思います。だから怖いんです。

写真家や女優になりたいみたいな夢って、技術もあるけど人間としての総合力が必要だと思うんですよ。ユカには小山田ほど「世間を渡っていく能力」がない。こういうのって訓練でどうにかなるもんじゃないですよね。みいちゃんを思い出した理由がこれです。

さらにある程度経験を積んだ大人ならユカがモノにならないことが分かりますが、かといって本人に諦めろとは言えません。だってかわいそうじゃん?

そういう、分かっているけど言ってあげない大人ばかりがいる場所が東京なのです。そしてその東京の象徴的な場所が猿楽町。渋谷と代官山の間くらいにあり、若いクリエイターなら多少無理しても住みたいと思うのでしょう。

怖いところやなあ。若者の夢を吸い取るブラックホールみたい。

ただ児山監督は「万事快調」で東海村をとても魅力的に撮っていたので、こちらも街映画かな?と期待しましたが、あんまりグッとこなかったのは残念。

気になる最後の写真

さて、誰もが気になるのがラストシーンで残された写真の意味です。裏側しか見えませんが、おそらく最後のユカの顔でしょう。

猿楽町の小山田の家に元彼を呼んで浮気したユカ。喧嘩になって大泣きするユカに小山田はカメラを向ける。ユカがカメラを取り上げようとすると「俺のだ!」と鬼の形相。小山田にとってこの瞬間、ユカはただの被写体で恋人ではなくなっていた。本気で泣き喚く女の顔なんてそう撮れるものではないので「おいしい」と思った。けれど彼は冷徹な人間ではないのでその写真を発表することはできず、思い出の詰まったアパートに置いていった…と解釈しています。

この場面だけ切り取ると青春っぽくてエモいし、そもそもこのお話、男側から見た「不思議な女の子と付き合ったほろ苦い思い出」として美しく描くこともできるんですよね。

でもユカ側の事情が生々しいのでそんなノスタルジックな青春恋愛ものになっていないところが面白いし不穏。

恋愛の描き方も今世代的になったよなあ、としみじみします。

さて、エンドロールに流れる歌では「ここが天国だって思った」というフレーズが何度も繰り返されます。なんの地獄だよキッツーっ!相当にえぐられる映画なんで、覚悟ができたらぜひどうぞ。

ユカ役の石川瑠華さんはじめ、キャストは皆素晴らしいです。激しめのベッドシーンがあるのでR15+となっています!

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児山隆監督作品「万事快調 オール・グリーンズ」レビューはこちら。

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「ナミビアの砂漠」レビューも書きました

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