映画ごときで人生は変わらない

感想と考察が入り混じる映画レビューブログ。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【王国(あるいはその家について)】感想/創作の過程をキュビズム的に描いた意欲作

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基本情報

公開年:2023年

監督:草野なつか

脚本:高橋知由

キャスト:澁谷麻美(竹本亜希)笠島智(垣内野土香)足立智充(垣内直人)

上映時間:150分

あらすじ

<以下公式サイト「ストーリー」より引用>

出版社の仕事を休職中の亜希は、一人暮らしをしている東京から、1時間半の距離にある実家へ数日間帰省をすることにした。それは、小学校から大学までを一緒に過ごしてきた幼なじみの野土香の新居へ行くためでもあった。

野土香は大学の先輩だった直人と結婚して子供を出産し、実家近くに建てた新居に住んでいた。その家は温度と湿度が心地よく適正に保たれていて、透明の膜が張られているようだった。まるで世間から隔離されているようだと亜希は思った。

最初は人見知りをしていた野土香の娘・穂乃香は、亜希が遊びの相手をしているうちに彼女に懐いた。一方、野土香からはとても疲れているような印象を受けた。

数日後、亜希は東京の自宅にいた。彼女は机に座り手紙を書いていた。夢中でペンを走らせ、やがて書き終えると声に出して読み始める。

「あの台風の日、あの子を川に落としたのは私です」

そして今、亜希は警察の取調室にいる。

野土香との関係や彼女への執着、直人への憎悪について、亜希は他人事のように話し始めた。

こう見えて(どう見えて?!)「あっしのような者が人様の作った作品にああだこうだ適当な事言ってすんません…」という気持ちを抱きつつ日々このブログを書いています。初日に観に行ったこの「王国(あるいはその家について)」、とても面白かったんですけど、「あっしのような者が…」意識をより強く感じてしまい気づいたら1週間寝かせてしまいました。

単純に面白い映画だと思いましたよ。150分という長尺を感じさせない身を乗り出すほどのスリリングな展開、そして最後の手紙にはボロボロと泣いてしまうほど揺さぶられるものがありました。ただ「分かる/分からない」で言ったら「分からない」。いや「たぶん理解できていない」。映画のことをきちんと勉強している人が大きな文脈の中で捉えて評論すべき作品なのでしょう。いつものように「面白かったでえす!」でまとめるのはさすがに気が引けます。そんなわけで今回は完全な備忘録となりました。ちゃんとしたレビューはネット上にたくさん上がっているのでぜひ検索してみて下さい!良い映画です。

感想

・「カットのつなぎ合わせで物語を構築する映画という芸術」を解体して再構築し裏側(リハ)までも見せたまさにキュビズム的な映画だと思った

・観たことのない手法なので評価されるのはわかる

・しかしテーマが「身体」で「役者が声を獲得していく過程」と言われるといまいちわからない。単純に「一つのセリフでも色んな言い方ができる。引き出しの多い役者というのはすごいなあ」と思ったので。「正解の声」とはなんなのか?

・確かに「この役者今、ゾーンに入っているな」という場面はあった

・ど頭に取調室→なぜ?を探る展開は良かった

・どのような計算式であの編集になったのか?シナリオの順通りでない一見バラバラのシーンの置き方が絶妙。これが身を乗り出した理由

・シナリオ面白かった!ストレートに映像化した作品も観たい

・垣内家の夫婦がウチとそっくりでゾッとするリアリティ

・直人と亜希の王国が「相手を必要とする」のに対し野土香は一人で王国を作れる人だと思う

・助監?が「シーン〇〇」と言い、ト書きを役者が読むシーンは、今この劇場の中一人一人が違う景色を見ていると思って鳥肌が立った!テロップつけないの大正解

・この手法になぜこのシナリオでなくてはならなかったのか?(シナリオが面白かっただけに)

・もう一度同じ手法をやるとしたらどんなシナリオなら良いのか?

 

この映画を観たいと思ったのは↓にも書きましたが脚本家に惹かれたからなのですよね。

kyoroko.com

シナリオのト書きによれば「垣内家」は奥に雑木林があり庭に大きな樫の木がある平家。「田んぼの中に浮かぶ船のように見える」とあります。

こんな素晴らしい現場が見つかれば、きっとこの「家」が真の主役となる上質なサイコスリラー作品になることでしょう。そんな「まだ見ぬ映画」を夢見るところまでがこの作品なのですよ。鑑賞してから1週間も寝かせてしまったのはスルメのごとく味がいつまでも続く作品だからかも知れません(って今気がついたよ)!

公式サイト貼っておきます〜

www.domains-movie.com

直人役の足立智充さん主演作品「夜を走る」レビューはこちら。ネタバレありありなのでご注意!

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