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映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【Winny】評価と感想/東出昌大が演じるあまりに魅力的な天才プログラマー!

 

Winny

Winny

  • 東出昌大
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基本情報

公開年:2023年

監督:松本優作

脚本:松本優作 岸健太郎

キャスト:東出昌大(金子勇)三浦貴大(壇俊光 Winny弁護団事務局長)皆川猿時(桂充弘  Winny弁護団長)吹越満(秋田真志 Winny弁護団主任弁護人)渡辺いっけい(北村文也 京都府警ハイテク犯罪対策室警部補)吉岡秀隆(仙波敏郎 愛媛県警巡査部長)

上映時間:127分

あらすじ

<以下公式サイトより引用>

2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。

次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。しかし、運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する——。

なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか。

本作は、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語である。

評価

うわ〜、面白かった!実際の事件扱った作品なので観る人を選ぶかも知れませんが、ワタシはとても面白かったです。最大の魅力は東出昌大が演じた天才プログラマー金子勇氏のなんとも言えないチャーミングさ!東出氏は遺族に会い話を聞いて役を深めていったそうで、ご遺族も「そっくり!」と感激されたのだとか(良い話だな〜)!浮世離れした金子氏の姿を普通の感覚を持った壇弁護士の三浦貴大の目線で見せていく。観客は壇氏と共に金子氏にだんだん魅了されていきます。最後は泣いちゃいましたよ…。

では、以下もう少し詳しく感想です。(実話なんで注釈つけるのもアレですがネタバレしてます!)

感想

Winnyと当時の2ちゃんねる

インターネット老人会の皆様、お達者でお過ごしでしょうか?今やインターネットは日常の道具の一つとなりましたが、ネット社会が今よりずっとアングラだったあの頃、楽しかったですよね…。アスキーアートとかフラッシュとか懐かしかねえ…。

さて…「Winny」はそんな「あの頃」、00年代初頭の話です。何度も書いていますがワタシは物理で2を取ったことのある人間なんで(もちろん10段階評価です)、IT周りのことはさっぱり分かりません。それでも必要に駆られてPCを触り始めたのが90年代半ば。当初は仕事に必要だから始めたネットですが、2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)が台頭してきた00年頃には完全におもちゃになっていました。「匿名」の良さと悪さがごった煮になっていた当時の2ちゃんねるは、人間の業の凄まじいパワーが渦を巻き、それはそれは面白かったんですよ。何しろ「これまで誰にも言えなかった本音」を世界に発信することができて、さらに共感してくれる人が現れたりするんですから!その渦の中からWinnyは生まれ、だからこそ国家権力に恐れられたんです。

あまりにも魅力的な金子勇=東出昌大

さて、今作の主役である金子勇(東出昌大)は趣味で開発したファイル共有ソフト「Winny」を2ちゃんねる上で公開。もちろん無料です。この便利なソフトは瞬く間にユーザーを増やしますが、個人同士で映画や音楽をやりとり出来るため著作権を侵害するユーザーが現れます。そして金子も「著作権法違反幇助」の容疑で逮捕されてしまう。これ、キモになるのが「Winnyを作った際、著作権を侵害しようとする意図があったかなかったか?」という「お気持ち」の部分なんです。いやそんなところ突かれましても…っていうこの裁判に2年半かかってしまう。本作はその2年半の出来事を描いています。ですので法廷劇がメインです。

当時東大の助手だった金子勇という稀代のプログラマーは完全な変人です。頭の中はプログラムでいっぱい。警察に「捜査に協力してね」と言われたら素直にハイと応じて、絶対に署名してはいけない書類に署名してしまう。

この変人を「ナイフで人を刺したら刺した人は逮捕されてもナイフを作った人は逮捕しませんよね?」という理論で弁護するのが壇弁護士(三浦貴大)をはじめとする弁護団たち。

やがてITにそこそこ詳しい壇弁護士と金子の間に友情が芽生えてきます。そして観客は壇の目を通じて金子勇という変人に魅了されていくのです。宇宙と飛行機が大好き。大変な時にぼーっと星を見上げている。魚が上手く食べられない。プログラミングの話になると相手を置いてけぼりにして喋り続ける。…たぶん今なら何かしらの病名がつきそうですが、当時こんな人沢山いませんでしたっけ?!

面白いのは、法廷にいてもなんだか当事者でないみたいなんです。弁護団との飲みの席では「自分が有罪になることが世のためになるのなら、有罪でもいいんです」なんて言ってしまう。おそらく本音でしょう。自分が有罪か無罪かなんて興味がないんです。しかし弁護団に「君が有罪になると後に続く開発者が萎縮してしまうよ」と諭されて戦う決意を新たにします。とことん素直な人です。

失われた30年を描いた作品

2年半を戦った裁判は有罪。その後逆転無罪となり最高裁で無罪判決が出たのは2011年。逮捕から7年が経っていました。そして金子は2013年、心筋梗塞により43歳という若さで亡くなります。映画は有罪後は後日談として短くまとめ、エンドロールに金子勇本人の映像を流します。「逆転無罪!」のカタルシスを描かず、喪失感だけを観客の心に残す、とても上手な脚本だと思いました。

そう、この作品は「失われた30年」を描いているのです。ジョブズにもザッカーバーグにも成り得た天才がいた。その天才の大切な時間を国家権力が奪った。しかも何のためなのか最後までよく分からない。

「アメリカで生まれたyoutubeという配信サービスがスタートする」というネットニュースを見てなんともやりきれない顔をする壇弁護士の表情が印象的です。

本作の中の金子勇が「失われた30年」の象徴だとしたら、ああ本当はこんなにもチャーミングな時代だったんだろうな、と思って悲しくなりました。とても良い作品です。東出昌大氏の演技もすごいからもっと知られてもいいのになあ。

それから映画では善として描かれている金子ですが、もちろん批判もあります。Winny事件について興味を持った方はWikiをどうぞ〜。詳しく載っており今作と全く異なる見方がある事も分かります。

ja.wikipedia.org

人生変わった度

★★★★

金子勇氏、同い年なんだよね…。やりきれないわ…

2024/4/16現在、アマプラ会員特典で観られます〜

 

Winny

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他、東出昌大出演作品レビューはこちら。

 

kyoroko.com

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