映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【そして僕は途方に暮れる】評価と感想(ネタバレあり!)/藤ヶ谷太輔の「振り向き顔」が全て!

 

基本情報

公開年:2023年

監督&脚本:三浦大輔

キャスト:藤ヶ谷太輔(菅原裕一)前田敦子(鈴木里美)中尾明慶(今井伸二)毎熊克哉(田村修)野村周平(加藤勇)香里奈(菅原香)菅原智子(原田美枝子)豊川悦司(菅原浩二)

上映時間:122分

あらすじ

<以下公式サイトより引用>

自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一は、長年同棲している恋人・里美と、些細なことで言い合いになり、話し合うこともせず家を飛び出してしまう。その夜から、親友、大学時代の先輩や後輩、姉のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、ついには、母が1人で暮らす北海道・苫小牧の実家へ辿り着く。だが、母ともなぜか気まずくなり、雪降る街へ。行き場を無くし、途方に暮れる裕一は最果ての地で、思いがけず、かつて家族から逃げていった父と10年ぶりに再会する。「俺の家に来るか?」、父の誘いを受けた裕一は、ついにスマホの電源を切ってすべての人間関係を断つのだが――。

評価

予告編を観て気になっていた「そして僕は途方に暮れる」がアマプラに入っていたので早速観てみましたよ。気になった理由は主演の藤ヶ谷太輔氏の「振り向いた時の顔」です。「不安寄りの無」とも言うんでしょうか、恐れてはいるけど深くは考えてない、みたいな顔がとても印象的だったんです。

さて、評価はというと、う〜ん、つまらなくはないけど微妙‥。良かったところはなんといってもキャスティングです。クズフリーター役の藤ヶ谷太輔氏をはじめ、真面目で硬い彼女役の前田敦子さん、飲んだくれ先輩の毎熊克哉氏、怖いお姉ちゃん役には香里奈さん、父親でクズ界のラスボスはトヨエツと、みんなピッタリで素晴らしい!では、その他の素晴らしかった点と微妙に感じた点がどこだったのか?以下感想です〜。(注意!ネタバレしています!)

ネタバレあらすじと感想

これ、元は舞台作品だそうで。あとで公式サイトを読むまで気がつきませんでした。舞台原作を映画にするとどうしても「あ、これ舞台だな」って分かる独特のセリフ回しだとか、設定の小ささみたいなのを感じるのですが、同作にはそれがなくて逆に「これ舞台でどう演ってたの?!」って思っちゃいましたよ。こういうの好きです。

話は、裕一(藤ヶ谷)と里美(前田敦子)の同棲している部屋のいつもの朝から始まります。部屋の隅には捨てる予定であろう、縛られた「キネマ旬報」。わざわざナメて映すあたり、主人公の映画好きを観客に訴えたいようです。身支度を整え仕事に行く里美とダラダラ寝ている裕一。裕一はその上朝ごはんの支度から電球替えまで全て里美にやらせているクズ男。さらに浮気をし、それがバレて「話し合いをしましょう」と訴える里美が怖くて出ていく。その後、親友宅、先輩宅と渡り歩きます。と、次々に裕一の知人が登場するんですが、それぞれ部屋の中が映されるので「どんなキャラクターの人間か」というのがパッと分かるんです。

んで友人たちはダメ人間の裕一を見放さないのに、人と向き合うのが怖い裕一は自分から逃げていく。この「逃げる」過程で前述した「不安寄りの無」な振り向き顔を何度か見せてくれます。作り過ぎない表情がとても良い。観客の感情を乗せられる余白があるんです。この時彼が何を考えていると思うのか、観る人によってだいぶ異なるのではないでしょうか。

遂に行く場所がなくなった裕一は東京に住む姉の家に行きますが、こっぴどく叱られる。それでずっと電話を無視していた北海道の母親の元に向かいます。

…っていう、人とそして自分とも向き合えないダメ人間の逃亡劇なんですけど、「微妙…」と思ってしまったのが、「物語のための物語」になっている点。物語が彼の逃亡の手助けをしてしまっている。例えば、「まったくお金ないわけじゃないのになぜ友人知人の家に泊まろうとする?ネットカフェに泊まっては?」と思ってしまうんですが、これは彼の友人をその人が住む部屋と共に紹介するためですよね。前述したようにそのおかげで観客には友人知人のキャラが分かりやすくなるのですが、そのためにお話を作るのはどうなんだ?と。それから人間関係苦手なのに連絡手段がLINEではなくすべて電話というのも妙です。

あと12月の苫小牧で鳥の声がするんですが、それがシジュウカラのさえずり。さえずりは鳥にとって恋の歌。春に歌われるものなんで「さすがに早すぎでは?!」と。「牧歌的な雰囲気の演出として適当な鳥の声を入れた感」を感じてしまいました…。(何か理由があるのならすみません!)

さて、苫小牧の実家に帰った裕一ですが優しい母親の元にすら居られなくなり、離婚した父親の部屋に身を寄せる。この父親というのが「逃亡の大家(たいか)」みたいな人。裕一がこうなった原因は父親だったわけです。

実家に帰りたくない人って、そこに見たくないものがあるからなんですよね。それは大概、自分自身の分身だったりする。父親と対決した裕一はようやく逃げるのをやめて東京に帰りますが、「逃げたツケ」はちゃんと払わなくてはならなかった。ネタバレになりますが、逃亡中に里美と親友の伸二がデキちゃってた…というのが大筋の流れです。

ラストカットで、裕一が何度かまた「振り向き」ます。でもその顔は不敵に笑っている。それは人生の最終章まで逃げ切った父親の顔にも見えるし、もう逃げないぜ、という決意表明の顔にも見える。人はそう簡単には変われないけれど裕一には良くしてくれる周囲の人や、「映画」という夢もまだあるんですよね。このダメ人間の後日談はまた観たいなあ、と思いましたよ。

全体的には微妙な映画だと思いましたが、細部は面白いところも沢山ありました。実家に自分をよく知る人たちが勢揃いした時の「いたたまれなさ」なんて凄く良かったです!(身に覚えがありすぎてイタタタってなったわ!)

人生変わった度

逃げ続けるもまた人生

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