桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]
不穏度
35(100を満点として)
屋上のトランペット。長いキス。思春期は残酷。
基本情報
公開年:2012年
監督:吉田八大
キャスト:神木隆之介(前田 涼也/映画部)橋本愛(東原 かすみ/バドミントン部)
東出昌大(菊池 宏樹/野球部)山本美月(飯田 梨紗)松岡茉優(野崎 沙奈)
上映時間:103分
あらすじ
<以下、公式サイトより引用>
ありふれた時間が校舎に流れる「金曜日」の放課後。1つだけ昨日までと違ったのは、学校内の誰もが認める“スター"桐島の退部のニュースが校内を駆け巡ったこと。彼女さえも連絡がとれずその理由を知らされぬまま、退部に大きな影響を受けるバレーボール部の部員たちはもちろんのこと、桐島と同様に学校内ヒエラルキーの“上"に属する生徒たち、そして直接的には桐島と関係のない“下"に属する生徒まで、 あらゆる部活、クラスの人間関係が静かに変化していく。校内の人間関係に緊張感が張りつめる中、桐島に一番遠い存在だった“下"に属する映画部前田が動きだし、物語は思わぬ方向へ展開していく。
姪っ子が高校生になりましてね。「あの小さかった子が…」と目頭が熱く…なるほど面倒を見てきてないんで、かわりにこの映画のことを思い出しました。
2012年、国内映画賞を総なめした青春映画の傑作です。TSUTAYAで一週間レンタルをした間に5回リピートしたほど気に入りました。高校2年生のとある1日を「陰キャの映画部男子」「イケてる男子」「イケてる女子」「スクールカースト真ん中ちょっと上にいるバド部女子」「若干下めの吹奏楽部女子」などそれぞれの視点で、そのピラミッドのバランスが微妙に崩れる瞬間を鮮やかに切り取っています。
って、今さらワタシが何か言えることなどない名作ですが好きなんで語らせてくださいー。
感想
何しろ役者が素晴らしい!
神木隆之介さんをはじめ、いつも一緒にいる映画部の友達役の前野朋哉さん、普段は空気を読んで友達と合わせてるけど多分「本当の自分」を持っているバド部の橋本愛さん、そして桐島の友人で「イケてる男子」の東出昌大さん、バレー部の「イケてない」仲野大賀さん、真摯にスカウトを待っている野球部のキャプテン、高橋周平さん。もう全員名前を挙げたくなるほどすばらしい。中でも光るのが学年1のイケてる女子山本美月さんの友人、紗奈役の松岡茉優さん。「友人」と書きましたけど、良くいる「力のある人間(学内ナンバーワンの美女)の脇にいてその威光をカサに着るイケ好かないヤツ」です。この紗奈役があまりにもハマっていたため松岡茉優さん自体を嫌いになりました。いや、今でも若干嫌いなくらいですわ。(褒めてますよ?)
グロシーンでまさかの号泣
ラスト近くのシークエンスです。映画のハイライトを飾るにふさわしいこの場面、見るたびに号泣します。どんなシーンかと言いますと、陰キャの映画部の連中が屋上でゾンビ映画を撮影しているんですよ。そこへ「桐島が屋上にいた!」という噂を聞いた陽キャの生徒たちが乱入してくる。しかし桐島はいない。感情がいっぱいいっぱいになっている陽キャの生徒たちは映画部員に当たり散らし、撮影をぶち壊します。
監督の神木くんは、彼らと正面から喧嘩する代わりに、映画部員たちに「こいつらを喰い殺せ!」と命じます。ゾンビに扮した部員たちは陽キャたちを襲う。とはいえ文化部の連中は体育会系にかなうはずもなく返り討ちに合う。でも神木くんが回すフィルムの中では違います。美少女橋本愛さんがゾンビ部員に首を喰われ、鮮血が飛び散るのです。これはもちろん夢のシーンです。映画好きだけが見ることのできるフィルムの中の夢。
それにしてもゾンビが出てきて鮮血が飛び散るとこで泣くとはね…。そのおかしさも相まって観る人に忘れられない感情を刻むんです。ああ、思い出すだけで胸がぎゅーっとなりますわ…。
桐島は電話に出たのか?
この作品(小説も含め)よく語られる「桐島=神」説。確かにタイトルになっているのに最後まで出てこない桐島は「ゴドーを待ちながら」のゴドーと同じですね。映画のラスト、東出くん(桐島の友人の菊池)は桐島に電話をかけます。遠くには野球部の練習風景。そのコールが鳴り響き、野球部の練習音にかき消されて映画は終わります。
さて、桐島は電話に出たのでしょうか?気になる方も多いと思いますが、ワタシは出なかったと思います。というかどっちでもいい。「菊池が桐島に電話をした」という行為に意味があるのですから。勝手な想像をするなら、菊池は留守電に長い一人語りを残すのではないでしょうか。告白であり懺悔。それに対する神からの返答は「沈黙」なのです…(by 遠藤周作)
この作品、全体的にセリフは少なく人物の目線で複雑な感情を表現しています。最初のほうの教室のシーンで、吹奏楽部女子の目線とちょっとした動きだけで東出くんに恋していることが分かる数カットの流れがとても好きです。
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芥川賞受賞の原作本はこちら。