映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【寝ても覚めても】ネタバレ解釈/唐田えりか演じる朝子にムカっ腹!だけど…?


寝ても覚めても [Blu-ray]

基本情報

公開年:2018年

監督:濱口竜介

脚本:田中幸子 濱口竜介

キャスト:東出昌大(丸子亮平 / 鳥居麦)唐田えりか(泉谷朝子)瀬戸康史(串橋耕介)山下リオ(鈴木マヤ)伊藤沙莉(島春代)

上映時間:119分

あらすじ

<以下公式サイトより引用>

東京。

丸子亮平は勤務先の会議室へコーヒーを届けに来た泉谷朝子と出会う。ぎこちない態度をとる朝子に惹かれていく亮平。真っ直ぐに想いを伝える亮平に、戸惑いながら朝子も惹かれていく。しかし、朝子には亮平に告げられない秘密があった。亮平は、2年前に朝子が大阪に住んでいた時、運命的な恋に落ちた恋人・鳥居麦に顔がそっくりだったのだ――。

5年後。

亮平と朝子は共に暮らし、亮平の会社の同僚・串橋や、朝子とルームシェアをしていたマヤと時々食事を4人で摂るなど、平穏だけど満たされた日々を過ごしていた。ある日、亮平と朝子は出掛けた先で大阪時代の朝子の友人・春代と出会う。7年ぶりの再会。2年前に別れも告げずに麦の行方が分からなくなって以来、大阪で親しかった春代も、麦の遠縁だった岡崎とも疎遠になっていた。その麦が、現在はモデルとなって注目されていることを朝子は知る。亮平との穏やかな生活を過ごしていた朝子に、麦の行方を知ることは小さなショックを与えた。

一緒にいるといつも不安で、でも好きにならずにいられなかった麦との時間。ささやかだけれど、いつも温かく包み、安心を与えてくれる亮平との時間。朝子の中で気持ちの整理はついていたはずだった……。

好きすぎて書けない濱口作品の一本だが…?

ベネチア国際映画祭の銀獅子賞受賞おめでとうございます、濱口竜介監督!

濱口作品はワタシのオールタイムベスト5のうちの一本「ハッピー・アワー」をはじめ、「ドライブ・マイ・カー」、初期作品の「不気味なものの肌に触れる」「passion」などいずれも大好きでして、好きすぎて書けないのです。何度も言ってますけどあまりに深く感動してしまうと、どこが良かったとか何が素晴らしいとか掘り下げることもできずただただ「…良いッ!!(涙目)」になってしまうのですわ。ものすごく良かった「偶然と想像」もどうにか書いてみましたが、表面を撫でる程度の紹介になってしまい、なんかもうすんません(誰に?)って感じです。

kyoroko.com

しかし銀獅子賞受賞の作品「悪は存在しない」も楽しみなこともあり、もう一本書いてみようと思って選んだのが「寝ても覚めても」です。正直これ、濱口作品の中で唯一好きではありません(未見の作品もありますが)。いや、良い映画だと思いますよ?でも好きにはなれない。その理由についてだったらワタクシ生来の性格の悪さを発揮して書けそうだなあ〜と思いキーボードを叩いてみましたよ。因みにゲスい紹介の仕方をするならば、同作は当時杏さんの夫だった東出昌大氏が不倫相手の唐田えりか氏と出会った作品であります。イヒヒ。さあ映画の内容を知りたくなりましたね?!お読みいただけるのであれば、ぜひ最後までお願いします〜。

感想

主人公・朝子の気持ち悪さとは?!

どうしてこの作品が好きではないか?それはズバリ主人公の女性「朝子」(唐田えりか)のキャラクターが女の嫌なところを煮詰めたようでムカムカするからです。

あのですね、登場人物のキャラクターに共感できるとかできないとか、好きだとか嫌いだとかで映画を語るのはとてもつまらないことだと思います。ええ思います(二回言った)。それでもこう言わざるを得ないほど観てる間じゅうずっとムカムカしてしまったのですよ!

さて、どこがそんなにイラついたのか?あらすじを追いつつ、紐解いてみます。(以下は朝子嫌いのワタシから見た歪みまくった「あらすじ」ですのでご了承ください。ネタバレもしています!)

まず朝子役の唐田えりかさん、地味です。美人ですが華やかではなく地味目。テレビドラマに出た際「人の彼氏取りそうな女優」と評されたそうですがまさにその通りの「一見地味だが油断ならないしたたかそうな」見た目と、絞れば水が滴りそうなウエッティな雰囲気の役者さんです。

同作、東出昌大が1人2役なのですが、まず朝子は東出Aと恋に落ちます。東出Aこと麦は尖っててミステリアスで奔放な男性。いかにも地味女が憧れそうです。地味女、憧れ君と付き合えたもんだから、もうはしゃぐはしゃぐ。バイクで転けて2人して空を仰ぐシーン、あれ冒頭のほうだった気がしますが「こやつ、はしゃぎすぎて何も見えてなくないか?」と早くも不穏な予感がビシバシします。そんで麦はある日フラッと朝子の元を去ります。まあ、そういう人を好きになったんだから仕方ないよね。

傷心の朝子、一からすべてをやり直すべく大阪から東京へ。そこで東出Bこと、誠実で優しいごく真面目な会社員、亮平と出会います。もちろん同じ東出氏ですんで「麦と顔がそっくり」という設定。んで朝子は亮平からアプローチされます。でも朝子はですね、亮平みたいな人に魅力を感じませんよ全然。現に一度は交際を断ります。でも大震災があって心境の変化かなんかで同棲。2人は震災のボランティアをやってて定期的に東北に行くんです。確か言い出しっぺは朝子で、亮平を付き合わせているように思います。その朝子が帰りの車の中、助手席でぐうぐう寝てやがんですわ。ここムカつきポイントでした。ワタシもよく助手席でうとうとする女ではありますが、付き合わせた時はちっと気を使いますよ。朝子おぉ、人を遠方まで付き合わせといてそりゃないだろうよ、と。ボランティアも自己満足なんじゃないの〜?って感じだし。

んで、そろそろ結婚すべか、みたいなところで東出Aこと麦とばったり再会、焼け木杭に火がつきます。亮平なんて顔が似ているだけの繋ぎの男ですもの。

結婚の直前、朝子は亮平の目の前で麦の手をとり、逃避行。2人、車で北へ向かいます。ここも大きなムカつきポイントでした。なぜって朝子は亮平と一緒に猫を飼ってたからです。男は捨てても猫捨てんなや、と思いましてね。(思い出すだけでムカムカ)

ところが旅先で朝子、心変わりをして帰ってきます。亮平の元へ。はあぁ?どの面下げて?ここいらになるともうムカムカするというより呆れてしましましたわい。麦は魅力的ですが風来坊で一緒に生活できるようなタイプではありません。現実を見るとやっぱり亮平のほうが食わせてくれそうだな、ってなったんでしょう。最後は2人で新居の2階から川を眺める姿で終わります。

いや〜、ワタシの「嫌いセンサー」にクリティカルヒットした朝子という人物のキャラクター。んでもってその後唐田さんと東出氏の例の不倫騒動ですよ。一報を聞いた時「朝子お―!!お前やりおったな!!」と叫んでしまいましたわい…。

朝子は本当に嫌な女なのか?!

さて、ここまで読んでくださったあなたは共感してくれたでしょうか?それとも「まったくこの作品理解してへんやん」と思われたでしょうか?

そうなんです、ここで映画のタイトルを思い出してください。「寝ても覚めても」です。実は「麦は死んでいる」(どのタイミングで亡くなったかはぜひ作品をご覧下さい)、「これは朝子が見た夢の話」という説もあるのですよ…。そうなるとちょっと見方が変わってきますよね?!物語には東北大震災が出てきますし、麦が再び朝子の前に現れてからのシーンは異様なホラー味を感じます。とくに東北への逃避行は黄泉の国に向かっているよう…。もしこれが地味女の悲しい妄想だったとしたら。朝子は愛する人を亡くした絶望の中、必死に再生へともがいてる健気な女性なのかもしれません。

原作は未読ですが、唐田えりかさん本人の資質と映像の魔力で朝子のキャラが強くなりすぎた結果、ワタシのような感想を持つ者が生まれたのだと思います。朝子をどう思うか、ぜひみなさんの感想を聞きたいです。

それからまったく違う2人を演じた東出昌大氏2人とも良かったし、大阪時代の朝子の友達役の伊藤沙莉さん、被災者の仲本工事氏はとても印象的でした。

人生変わった度

★★★

なんにしても猫は置いてくなよ!

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映画館でしばらく立ち上がれないほど心震えた「ドライブ・マイ・カー」。

原作は芥川賞作家・柴崎友香氏の「寝ても覚めても」。本当の朝子はここにいるのかもしれません。