基本情報
公開年:2023年2月17日〜
監督:ポール・ヴァーホーベン(他作品に「氷の微笑」「スターシップ・トゥルーパーズ」など)
キャスト:ビルジニー・エフィラ(ベネデッタ) シャーロット・ランプリング(シスター•フェリシタ) ダフネ・パタキア(バルトロメア)
上映時間:131分
あらすじ
<以下映画「ベネデッタ」公式サイトより引用>
17世紀イタリア。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは6歳で修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性を助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任したことで周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められ権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた…。
感想(ちょっとネタバレ)
突然ですが「神秘体験」ってしたことあります?!ワタシの場合8歳か9歳くらいのころ、ラジオを聞いていて「次にこの曲かかるな」と思ったら本当にかかるということが度々ありました。こんなもんを神秘体験っつうのもナンですが、自分的には「わ、わたし神様みたいになってる‥どうしよう…」とガクブル。怖くて誰にも言えず、そうこうしているうちに神はいなくなってしまいました…。
子供のころにこういった体験された方多いんじゃないでしょうか。「ベネデッタ」も同じように少女時代にそんな神秘をたびたび起こします。その奇跡は大人になっても続き、ついには聖痕まで受け、「奇跡を起こす女」として修道院長に上り詰めるのです。
ベネデッタは17世紀に実在した女性。「奇跡」の捏造疑惑、さらには修道女相手の同性愛(当時は罪です)で告発され、裁判にかけられます。
その裁判記録をキリスト教研究者のジュディス・C・ブラウンが1980年代、フィレンチェの史料館で偶然発見。ブラウンはキリスト教の歴史上非常に稀なこの裁判について「ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア―」を書き上げ、これが今作のベースになっているというわけ。(パンフレットより参照)
この原作をあの過激なエロ&バイオレンスのポール・ヴァーホーベン監督が描く…。そりゃカンヌも騒然とするだろうよと初日に映画館に足を運びました。
1938年生まれ、撮影時オーバー80才のヴァーホーベン。いやすごい。何がすごいって。自身の専門であるキリスト教(このあたりはパンフの高橋ヨシキさんの解説に詳しいです)にエロとバイオレンスのソースをまったく薄味にすることなくなんなら煮詰めたような濃さでブチ込んでいるのです。
あまりに強烈すぎてまだ考えがまとまりませんが、一つ思ったのはベネデッタの真の目的はやはり神と繋がることだったのでは、と。捏造を疑われても仕方ないほどの怪しげな奇跡を起こし、その奇跡によって若くして修道院長の座に座る。さらにはその修道院長室でエロエロ…。と書くとどう見ても俗物にしか見えませんが、オーガズムに達した直後憑かれたようにイエスに祈り出すその姿はどんな手段を使っても神と繋がりたいという「聖」を感じます。
注目を浴びる、権力を手に入れる、肉欲を埋める…そんな世俗的な望みが少しあったとしてもあくまで神と繋がるためのステップに過ぎなかったのでは、と。
ラスト、火炙り直前になっても決して諦めず生き延びようとするベネデッタの力強さはまさに聖女。おそらく神を信じていない世俗主義者の前修道院長のフェリシタ(シャーロット・ランプリングです。素晴らしい目の演技です)と見事な対比で描かれます。
そして物語はベネデッタの起こした奇跡は本物だったのか捏造だったのかはっきりしないまま終わります。もはやどちらでもいいんです。なんにせよ「それは起きた」のですから…。
聖と俗の混沌をストーリーと映像で表現したとても素晴らしい作品だと思いますが、なんせエロ&汚&バイオレンスなもんで万人におすすめはできません。ヴァーホーベン作品に耐性のある人だけどうぞ〜。
人生変わった度
★★★
性・聖・生 みんな同じじゃね?
みんな大好きヴァーホーベン作品「氷の微笑」置いときますね。(あなどるなかれ!サスペンスとして超面白いです。最後の観客に答えを委ねるところは「ベネデッタ」とも通じます!)