基本情報
公開:2021年
監督:濱口竜介(他作品「ドライブ・マイ・カー」「寝ても覚めても」)
主な出演者:古川琴音 中島歩 玄理 渋川清彦 森郁月 甲斐翔真 占部房子 河井青葉
あらすじ
<以下「偶然と想像」公式サイトより引用>
「偶然」をテーマに3つの物語が織りなされる「短編集」。
親友同士の他愛のない恋バナ、大学教授に教えを乞う生徒、20年ぶりに再会した女友達…
軽快な物語の始まり、日常対話から一転、鳥肌が立つような緊張感とともに引き出される人間の本性、切り取られる人生の一瞬…
あえて1話紹介するなら(ネタバレ)
創作のストーリーは「偶然」と「必然」のバランスが大切で、偶然が多いと「ご都合主義」と言われてしまいますわね。ずいぶん難しいところに切り込んでいったな、というのがタイトルを見た時の印象。しかし3つの話どれも面白く、どれかとは言い難いんだけど、あえて一つ紹介するなら一番「笑った」真ん中の話。
ストーリーは
『作家で教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。』
<公式サイトより引用>
ちょっとエロいのもいいです。ここで生まれる一番の偶然は「瀬川先生にメールを打とうと、アドレスを入力していたら佐川急便が来る」という部分。爆笑です。
考えた人も、脚本読んだ人も爆笑したのではないでしょうか。この、ただそれだけの偶然によって、登場人物はその後思いもしない人生を歩むことになるわけです。
いや〜、恐ろしい。そして面白い。
そしてキモになるが女子学生の奈緒が瀬川の研究室で瀬川の小説のエロい描写を朗読するシーン。奈緒は瀬川を誘惑しなくてはならないのでここぞとばかりに臨場感を出して…ではなくわりと淡々と読みます。しかし瀬川はそれにグッときてしまうのです。
「淡々と文字を読みあげる」これ、「ドライブ・マイ・カー」にもありました。「感情を排除してセリフを読み上げる」読み合わせのシーンが何度かありましたね。いわゆる「濱口メソッド」といえる演技の付け方、本やインタビューで読んで知ってはいましたが、「これかあ〜」と思わせてくれたシーンです。
あれは濱口映画で濱口作品の作り方を見せてくれる、入れ子のような作品なのです。
それはともかく。グッときてしまう瀬川を見て、思いました。
「『淡々と文字を読むのが好き』って、カントクの性癖なのでは…??」
自分の恥ずかしいところを曝け出さないと表現として面白いものを作ることはできません。そしてその「恥ずかしい生身」は意外なところに見え隠れしますよね。まあ、深い考察は「ドライブ・マイ・カー」のことを書く時にいずれ。さて、この作品では「偶然」と言いつつ、みなその偶然は人と人の出会いによって生まれています。つまり「奇遇」です。奇遇といえば、例えば「中学校でたまたま隣の席になった子と仲良くなり、20年以上友情が続いている」とか「今のパートナーとはたまたま〇〇で知り合った」なんてのは誰にでもあるのではないでしょうか?まるで映画のような奇跡は誰の身の上にも起きているんです。そんな日々の奇跡を美しくちょっと面白く昇華してくれた愛すべき作品。本当にこの作品に出会えて良かったなと思います。
ところで第3話に登場するの役者は占部房子と河井青葉のほぼ2人なんだけど、この2人、濱口竜介監督が若き日に作った藝大卒業制作作品「passion」にも出演しているんですよね。(とは言え、この作品では2人がからむシーンはなかったように記憶していますが。)監督、占部、河井が一同に会したその第3話のタイトルは「もう一度」。たぶん狙ってないけど、ニクイ。
濱口作品の中では「ハッピーアワー」に次いで好きかも。心がほんわりと暖かくなる人生讃歌です。
人生変わった度
★★★★★
わたしやあなたのごく平凡な人生も美しい偶然に彩られている
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残念ながら2023年2月時点でAmazonプライムビデオには入っていません。
同じ濱口竜介作品置いておきます。
カンヌで4冠達成。一躍「世界の濱口」となった一本。濱口メソッドの種明かしがここに。
東出昌大が不倫相手と出会った一本(ゲスい〜)正直、ワタシはあんまり…です。
え、マジ?!これも入ってるんだ!!観ます!!