基本情報
公開:1959年
監督:ビリー・ワイルダー(他作品「アパートの鍵貸します」「サンセット大通り」等)
主なキャスト:マリリン・モンロー, トニー・カーティス, ジャック・レモン
あらすじ
禁酒法時代のシカゴ。酒場のミュージシャン、ジョー(トニー・カーティス)
とジェリー(ジャック・レモン)はギャングのコロンボ一家が密告者を殺す場面を目撃してしまい、追われるハメに。
2人は追手を巻くため女装して女性ばかりのジャズバンドに潜り込んでマイアミへ。
そこでジョーはバンドの女性歌手シュガー(マリリン・モンロー)に一目惚れしてしまう。さらに成金じいさんが現れて、ジェリーを女性だと思い込んで猛アプローチ。
そこへギャング一味が現れて…。
ホットなジャズナンバーがスクリーンを彩るとっても楽しいコメディ。
Amazonプライムで見られます
わたくし、50歳をちょいっと過ぎた妙齢のおばはんですが、先日20歳くらいの子にキラキラした目で「戦争体験したんすか?!」と言われてビビりましたよ。
ビビったと言っても、「アホなのか?」ではなく、「わかるわ、その感じ」というものでした。
自分も20歳くらいの時、親より歳上の人はみな「昔の人」でした。昔の人がどんな年代に生きたか興味もなかったし。
今や自分が「そっち側」になっただけのことですね。
と、同時に今はどうも時間が一定方向に流れていない感じもするんです。SNSを通じて同じ趣味のまったく年代の違う同士が仲良くなったり、2021〜22年あたりに80年代のシティポップが再流行しましたが、ハマっている人は「懐かしくて聞いてる」のではなく「いい曲だと思って聞いてる」んですよね。時代が古かろうと新しかろうといいものはいい、という時代になったわけです。配信で古い映画もバンバン見られるわけだし。
そうなんです。
あったんですよ。Amazonに。マリリン・モンローの代表作「お熱いのがお好き」が。観られるんですよね〜。なんと良い時代!
念の為言っておきますが、私は公開当時はまだ生まれていません。初見は2000年過ぎてから。そしてこの映画はモノクロなのですが、カラー映画がなかった時代ではありません。わざとモノクロで撮影しています。(理由は後述)
この作品の良さ、いくつもあって長くなりそうなんですが大きく3つに絞ってみます。
みどころ3つ
① 珠玉のギャグセンス
とにかくセリフが面白い。マリリン演じる「シュガー」はセクシーで素直というかちょっと頭が良くない女の子。億万長者と結婚することを夢見ています。そのシュガーにお金持ちのふりをして近づくジョー。停泊していた船を勝手に「これ俺の船なんすよ」と偽って船上デートに誘います。
船の中に飾ってあったカジキを
ジョー「これ、俺が釣ったニシンだよ」
シュガー「あら、大きい!でもニシンの酢漬けって小さな瓶に入っているわよね?」
ジョー「酢につけると縮むのさ」(出まかせのウソ)
シュガー「まあ、物知りなのね!」
(…って書き起こしてみたら面白くもなんともないな…)
うろ覚えですがこんな感じのやりとりがあり、笑ってしまうのですよ。
そういえば子供の頃「酢を飲むと身体が柔らかくなる」というトンデモ迷信があり母親に「酢を飲みなさい!」と脅迫のように言われましたが、このセリフから生まれた都市伝説ではないかと推測しています。
それはともかく。
映画史に残る「最後のセリフ」も思わず笑いつつ、う〜んと感心してしまいます。(これはぜひご自分で確かめてください!)
また、DVDの特典映像の中でギャグをより面白く思わせる「間」についてトニー・カーティスが語っています。劇中、ジェリー(ジャック・レモン)がマラカスを振りながら笑かすセリフを言うシーンがあります。
「セリフ」〜シャンシャンシャン(マラカスの音)〜
「セリフ」〜シャンシャンシャン〜
「セリフ」〜シャンシャンシャン〜
の繰り返しですね。
このシーン、当初は「セリフ」ちょっと間を置いて「セリフ」だったそうですが、「お客さんに『ここで笑って!』という分かりやすい間を必要なのでは?」ということになり、間にマラカスをシャンシャン振ることになってのだとか。
ま〜、こういうのお笑い芸人さんには常識なんでしょうけど、よく考えられていますわな。
② マリリン・モンローが可愛い!
そしてこの作品の良いところの2つ目。なんと言ってもマリリン・モンローの可愛さにつきるでしょう。よく「セクシー」と表現されるマリリン。私も映画で実際に動き、しゃべったり歌ったりするのを見る前は「セクシーな女優さん」だと思っていました。でも違うんです。マリリンは「可愛い」のです。公開当時マリリンは33歳。享年36歳なので、亡くなる3年ほど前です。この時のマリリンはちょっとふっくらしていて本当にかわいい。しかし当時の33歳といえば「年増」の域。マリリンも焦っていたのでしょう。「シュガー」のような「セクシーだけどちょっとバカ」な役はもうやりたくないと拒んでいたそうです。飲酒や睡眠薬に頼るようになり撮影現場に遅刻は当たり前。キスシーンもあるトニー・カーチスが、『マリリンとキスするなんでヒトラーとキスするようなもの』とまで言ってマリリンを嫌ったという噂が流れます。しかし、インタビューの中でカーチスはこの発言をきっぱり否定。「彼女は素晴らしかったよ」と絶賛しています。
マリリンが「演じたくなかった」役がこれほどまでに輝いて見えるのは皮肉としか言いようがないです。これがスターというものなんでしょうか…。
「お熱いのがお好き」を観て以来、すっかりマリリン・モンローのファンになってしまい、いくつかの作品を観ましたが、この作品の中のマリリンが一番可愛いと私は思います。動いているマリリンを観たことがなくて「なんで『伝説の女優』なの?」と思っている方がいればぜひ一度観てみてください。
③ 1920年代のファッションがおしゃれ
最後の良いとこ3つ目。1920年代の衣装がおしゃれ!この作品はアカデミー衣裳デザイン賞受賞作でもあります。舞台は禁酒法時代のアメリカ。ってことは1920年代。女性の間でフラッパースタイルというファッションが流行します。
マリリンの服もみんなかわいいし、でかい男2人の女装もおしゃれです。ちなみにこの作品がモノクロになったのは「カラーだと女装が綺麗に見えなかったから」だそうです。確かにクソデカ男なのに、モノクロのせいか見ようによっては可愛くみえますね。
そんなこんなで「お熱いのがお好き」の良さを改めて振り返ってみたのですが、「人生変わった」視点で見ると、マリリンの可愛さかな。仕事で辛いことがあった時、眠れない夜、何度も見返した作品です。「可愛い」に救われた、と思うし、こんな自分でも「可愛い」を頑張れば救われる誰かがいるかも知れないな、なんて。
人生変わった度
★★★★
「可愛い」は人の役に立つ
※Amazonプライムビデオ、トップ画像がカラーになっていますがモノクロ作品です。