映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【素直な悪女】あらすじと解釈/ブリジット・バルドーが魅せる女の欲情と悲しみ


素直な悪女【ブルーレイ版】 [Blu-ray]

基本情報

公開:1957年

監督:ロジェ・ヴァディム(他監督作品:「月夜の宝石」「輪舞」)

脚本:ロジェ・ヴァディム

キャスト:ブリジット・バルドー(ジュリエット)エリック(クルト・ユルゲンス) ミシェル(ジャン=ルイ・トランティニャン) アントワーヌ(クリスチャン・マルカン)

上映時間:91分

あらすじ

<以下、DVD紹介文より引用>

南仏サン・トロペの町の孤児ジュリエット(ブリジット・バルドー)は、まだ18歳という若さであるが、自然と男の心を挑発せずにはおかぬような性的魅力にあふれた娘である。彼女は子供のないモラン老夫婦に引き取られ、夫妻の経営する書店で働くことになったが、彼女のまわりには、その魅力に惹かれていろいろな男が集まってくる。

ジュリエットを狙う男の一人はエリック(クルト・ユルゲンス)である。彼は「エスカル」という酒場の主人でなかなかの事業家。内気で病弱な青年ミシェル(ジャン=ルイ・トラティニアン)もジュリエットをひそかに愛しており、またミシェルの兄でプレイボーイのアントワーヌ(クリスチャン・マルカン)も彼女の魅力に惹かれている男の一人であった・・・

ここんとこお騒がせの有名シェフと不倫の某有名女優、やっぱり離婚しましたね…。元夫が記者会見で語ったため女優の過去の不倫まで掘り起こされてしまいました。(そういうことしゃべんのどうかと思うぞ某キャンドル氏!)すらりとした脚を出しピンヒールで恋する人の元に向かうその女優さんの写真を見て思い出してしまったのがこの作品「素直な悪女」です。ブリジッド・バルドーを主役に当時の夫ロジェ・ヴァディムが撮った映画でB.Bの素晴らしい肢体ばかりが取り沙汰されますが、南仏の明るい風景の中に女の性と業がべっとり貼りついている、実は重い作品だと思います。

ワタシの思うあらすじと解釈

上記の「あらすじ」はDVDの「商品説明」の欄にあったもの。信頼できる映画データベースにもほぼ同じ内容が記載されています。これを読んでワタクシ驚いてしまいましたよ。「えっ?そんなハナシだったっけ?!」うーん、人によって捉え方が違うのが映画の面白さですが、「あらすじ」でここまで違うとは…。ちと納得できないので以下ワタシが捉えた「あらすじ」を書いてみます。

町中の男たちの視線を集める孤児のジュリエットは自分の中から湧き上がる欲情を持て余している。そんなジュリエットが「寝たい」と思った男がアントワーヌ。しかし彼からは相手にされず、ヤケになって内気で気弱なその弟と結婚。当然そんな男には満足できずこれまで通り遊びまくる。やがてアントワーヌとも寝ることに成功。しかしやはりアントワーヌには愛されず、その上夫に知られてしまい家を飛び出す。情熱を発散させようと飲み屋で踊っていたところ、夫に平手打ちされる。ジュリエット、「こいつ意外とやるじゃん…」と欲情したので仲良く2人で帰る。ちなみに中年男のエリックは年上だけあって自らの欲情に振り回されているジュリエットをよく理解しており、ちやほやするが実のところは娘を見るような気持ちでいる。

…とまあ、ずいぶん違う話になりました。簡単に言えば商品説明のあらすじは男性目線、ワタシのあらすじは女性目線ってことです。ワタシはこの作品を「性欲を持て余している若き美女の話」だと思っています。ジュリエットは「ヤりたい」欲情で頭がいっぱいですが、女という性の面倒臭さは「ヤりたい」の裏に必ず「かつ愛されたい」という欲望がくっついてくることです(生まれ持ったものなのか文化的に仕込まれたものなのかは置いといて)。弟と結婚する前にアントワーヌともさっさと寝るチャンスはあったのですが、彼が「アイツは寝るだけの女だ」と言っていたのを聞いて悲しくなって逃げ出してしまうのです。ジュリエットは自分でも制御できないほどの強すぎる欲情と「でも愛されたい」の間に引き裂かれて、他人から見たら非常識な行動を取ってしまう。最後、夫がビンタしてくれたことによって、「愛してくれる男」と「寝たい男」がやっと1人の男の中に重なったのでしょう。Mとかいうことじゃなく、ね。

M.Mと正反対のB.Bの魅力

さて、アメリカのマリリン・モンローと並び称されるフランスのブリジット・バルドー。どちらもセックスシンボルと言われますが性質はまったく違いますね。M.Mの守ってあげたくなるか弱さに比べ、B.Bの身体からはまさにジュリエットそのもののような「持て余さんばかりの情熱」がはみ出しています。とくに最後、一人でダンスを踊るシーンの肉欲の表現といったら!「受け身のM.Mに対し、狩りをするB.B」。こんな比較のされかたをよくします。しかしそんなB.Bの「か弱さ」を感じさせるシーンがあるのです。赤いワンピースを着てパーティー会場をうろうろするシークエンスで見せる後ろ姿。身体に沿ったワンピースはお尻からウエストにかけてB.Bの奇跡のような美しい曲線を見せてくれます。しかしそのまま目を上にやるとなで肩と今にも折れそうな細い首にドキッとします。この華奢な肩と首に孤児として育ち、愛情を求めるジュリエットの悲しみを感じてしまいます。「素直な悪女」はB.Bの身体と表現者としての魅力を知り尽くしたロジェ・ヴァディムが生み出した奇跡の一本と言えるのではないでしょうか。その結果、共演のジャン=ルイ・トランティニャンと浮気され、離婚となったのは皮肉としか言いようがありませんが。

人生変わった度

★★★★

すべての女の中にはジュリエットがいる

※残念ながら現在アマプラでは配信されていません。U-NEXTで観られるっぽいです〜

マリリン・モンローについて書いた過去記事置いておきますね〜。

kyoroko.com

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