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【レザボア・ドックス】ネタバレ感想/ライク・ア・ヴァージンと教養について考えた

 

レザボア・ドッグス [Blu-ray]

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  • クエンティン・タランティーノ
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基本情報

公開年:1993年

監督&脚本:クエンティン・タランティーノ

キャスト:ハーヴェイ・カイテル(ミスター・ホワイト)ティム・ロス(ミスター・オレンジ)マイケル・マドセン(ミスター・ブロンド)スティーヴ・ブシェミ(ミスター・ピンク)クエンティン・タランティーノ(ミスター・ブラウン)

上映時間:100分

あらすじ

<以下DVD「ストーリー」より引用>

宝石強奪のために集められた、互いの素性は知らない6人の男たち。彼らは計画どうり宝石店を襲撃するが、逆に包囲していた警官隊の猛攻撃を受ける。彼らの中に警察の「犬」が紛れていたのだ。

なんでも来年1月に4Kリマスター版が全国劇場公開されるのだとか。ほおお〜!観に行こうかな久しぶりだしなあなんて思っていたらBS-TBSで放映があり、観たことないという夫が一緒に観たがったために結局お家鑑賞とあいなりました。

いや〜、面白かったです!タランティーノは最新作の「ワンス・アポンア・タイム・イン・ハリウッド」が最高傑作という呼び声もありますが、ワタクシは映画館で「長げえな…」と思ってしまったクチでして。やっぱりスパッと短くてシンプルでスタイリッシュでキレッキレのバイオレンスが炸裂しているこの「レザボア・ドックス」が一番好きですよ!…ってなわけで以下ネタバレありの感想です〜。

感想

「ライク・ア・ヴァージン」を語れる教養

「レザボア・ドックス」の「Reservoir」はどういう意味か…?実はこれスラングでもないらしく英語圏の人にもよく分からないのだとか。「溜まり場の不良ども」みたいな意味を持たせつつ発音の良さでつけられたタイトルだ、という説もあります。

そんな意味不明なタイトル同様、映画は「マドンナの『ライク・ア・ヴァージン』にはどんな意味があるか?」という、まったく意味のない無駄話からはじまります。

ダイナーでしゃべっているのは黒スーツの男たち6人。ライク・ア・ヴァージン話はド下ネタなので詳細は省きますが、やがて話は「ウェイトレスにチップを払うか否か」というまたもやどうでも良い方向に転がり、全員が知り合いであろうオッサンにドヤされて店を後にすると、例の曲が流れタイトルバックへ。

例の曲↓(この曲のタイトルに関する話も面白い!YouTubeの概要欄をぜひ読んでみてください!)

www.youtube.com

んで、黒みタイトルの間に何やら怒鳴り声と銃声が聴こえ、「なんだなんだ?!』と思っていると絶妙のタイミングでタイトルがあけ、さっきの男たちのうちの2人が銃口を向け合っている。

どひ〜!!震えるほどの格好良さ!強盗団の話なのに強盗シーンをいっさい見せないんですぜ?!

どうやら強盗は失敗、6人の中に「警察の犬」がいる。果たして「犬」は誰なのか?がだんだんと炙り出されていくんですが、その過程で6人はこの仕事のために集められたお互い素性を知らない赤の他人同士であることがわかります。誰かが捕まった時に仲間を売らないよう、名前はもちろん自分のことはいっさいしゃべるなという掟がある。だから「ホワイト」「ブラウン」と互いを色で呼び合っているわけです。

ここで思うのは「自分の素性をいっさい悟られないように場をもたす話をする」というのはかなり難しいのではないか、ということ。仕事や家族、趣味の話はもちろんダメ。好きな野球チームの話も出身地や在住地が推測できるのでダメ。カープが好きなんて言ったら絶対広島に縁がありますよね?「この前こんなことがあってさあ〜」ってのもどこに地雷があるかわからない。う〜む難しい…。

話は飛びますが、「一人の時間を酒とギャンブル以外で潰せるもの、それが教養である」と言ったのは中島らも氏だったと思います。ごもっともだと思うのですが「レザボア・ドックス」を観たワタシはこうも思うのです。「自分の情報をいっさい開示せず、その場の誰もが参加可能な話題を提供できること、それも教養である」と。

さて、となると冒頭の「ライク・ア・ヴァージン」にまつわるド下ネタ。これもまた教養だと思うのですよね。当時のアメリカでマドンナとライク・ア・ヴァージンを知らない人はいないし、下ネタ嫌いなオッサンはいない。しかも生々しい経験談ではなく、歌詞の内容をあれやこれや勝手に推測して楽しんでいるだけです。話題としては100点ですよ!

今の日本で女性だけの集まりだったらどんな話題がいいかしら?と考えを巡らせてみたのですが、「SMAPの再結成はありえるか?」あたりではどうでしょう?う〜ん、年代によるかなあ??

と、だいぶ話はそれましたが冒頭の「なんじゃこりゃ?この意味のないおしゃべり、映画の内容に関係あるんかいな?」というシーンが、後に「自分の素性を明かさないための話題」と気づくと途端に「くぅ〜カッコいい!」とシビれてしまう、このキレ味こそがタランティーノなわけですよ!

オレンジ(ティム・ロス)の悲しみ

さて、犬は誰なのか?ネタバラシをしてしまうと、もう初めから撃たれてて100分間ずっと瀕死の男ことミスター・オレンジ(ティム・ロス)です。一番ありえない設定です。だって潜入捜査をする刑事って「デキる男」だと思うじゃないですか?それが失敗して死にかけてて、警察も助けに来れる場所にいるのに誰も来てくれないんですもの。

この脚本がすごいのは「ありえない!」と観客をびっくりさせるためにオレンジが犬なのではないところです。オレンジのキャラクターを短い時間でしっかりと描いていて「こいつなら失敗するかもな」と納得できるんです。努力家ではあるけど地頭はあまりよくない様子が同僚との会話でわかる。おそらく職場でもそうみなされているから見捨てられた。んでそんな彼を最後まで信用してくれるのが「ホワイト」という名も知らない男だったりするわけだ。男たちの群像劇としても面白いけど、オレンジを主役だと思って肩入れして観ると、それはそれでしんみりとするものがあります。これは2度目か3度目に観た今回の思わぬ再発見でした。

オタク文化の始まりと終焉

1992年にアメリカで公開された同作は瞬く間に話題を呼び、ビデオ屋の店員だったタランティーノは一躍時の人となります。膨大な映画の知識を再構築して生み出した古くもあり新しくもある彼の作品はまさに「オタクが産んだカルチャー」と言えるでしょう。映画の誕生から100年あまりたった今、先人の積み上げてきたものをリスペクトしつつ生まれ変わらせる脅威の新人が現れた!!タランティーノの出現は鮮烈でした。

あれから30年、「オタク」はすっかり大衆化しすでに文化を産む土壌ではなくなったような気がします。なんだか寂しいわあ…などと思っていても仕方ないので、次の先鋭者の塊から新しい映画が生まれることを期待すべきなんだろうなあ…。うん、それを観るまでは死ねないッ!!と心意気を新たにするアラフィフ映画ファンなのでした。

人生変わった度

★★★★

例の曲を耳にすると反射的に黒スーツ軍団を思い出すよね

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