映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【隠し砦の三悪人】感想/棒読みお姫様の魅力がスゴイ痛快時代劇

 

基本情報

公開年:1958年

監督:黒澤明

脚本:菊島隆三 小国英雄 橋本忍 黒澤明

キャスト:三船敏郎(真壁六郎太)千秋実(太平)藤原釜足(又七)上原美佐(雪姫)

上映時間:139分

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あらすじ

<以下アマゾンプライムビデオの紹介文より引用>

戦国の乱世、秋月家は隣国の山名家と戦って敗れる。秋月家の侍大将・真壁六郎太は、世継ぎの姫君・雪姫を擁して隠し砦にこもる。六郎太はお家再興のための軍資金を運び出す脱出計画を練るが、敵地を横断突破するより他に道はない。六郎太、雪姫ら一行は奇策に満ちた敵中突破作戦を開始する・・・・・・。危機また危機、アクションに次ぐアクションが小気味いい痛快娯楽時代劇。

先日NHKBSで「ローマの休日」をやってましてね、昼の1時から。やらなくてはならないことがたくさんあったのにテレビの前から離れられずに困りましたよ。スクリーンの中に幸せがぎゅーっと詰まっているようで、何度観てもいくつになってもうっとりしちゃいます。やっぱヘップバーンのアン王女は絵に描いたような理想のお姫様よね…と思ってふと考えました。いや待て。邦画にも素晴らしいお姫様がいたな、と。ハイ、「隠し砦の三悪人」の棒読みお姫様こと雪姫(上原美佐)です。毎度ながら今さら語るまでもない名作ですので、今回はお姫様の魅力を中心にまとめた感想です〜。

感想

痛快時代劇といえばコレ!

ともかく楽しくて面白い「隠し砦の三悪人」。3人(1人の侍と2人の百姓)の男たちがお姫様とお宝を守りつつ敵地を抜けるという単純明快なストーリーで、「スターウォーズ」の原型になったことはつとに有名。これ以前「生きものの記録」「蜘蛛の巣城」など暗め重めの作品が続いたのでカラッと明るい話を作りたかった、と黒澤監督自身が語っていました。

もっとも有名なのが三船敏郎が両手で刀を持ち裸馬に乗って疾走するシーン。すごいすごいとは聞いていたものの、実際に観た時度肝を抜かれましたよ。あんなのが追いかけてきたら気迫の部分で「もう負け無理」ってなりますわな。公開当時映画館で観た人たちは本当にびっくりしたと思います。

際立つお姫様の魅力

さて、問題のお姫様。上原美佐演じる「雪姫」です。逃避行の道中しゃべるとお姫様だとバレるので「しゃべれない娘」という設定。それでも漏れ出てしまう気品があります。上原美佐さんはこの作品のためにスカウトで選ばれたまったくのど素人。撮影への参加が決まってから乗馬と剣術を習い、現場でも監督が身振り手振り全部やってみせ、それを「お人形のようにマネました」とのこと。上原さんこの時20歳。いや〜大監督と有名役者に囲まれて本当に大変だったでしょう。ヒリヒリした緊張感が「身をやつして敵地を掻い潜るお姫様」にピッタリ。

んでですね、最後のほうお姫様だとバレてしまいそこからしゃべるのですが(これ以前にも話すシーンはありますが)、これがズッコケるほどの棒でして。「あてがわれたセリフをしゃべってる感」がすごいのですが逆にセリフの素晴らしさが際立つのですよ。全体的にセリフが簡潔で無駄がなく実にピリリとした脚本なんですが、特に最後の姫が捕らえられてから脱出するまでのセリフはどれもこれも格好良すぎて暗記するほど何度も観てしまいました。

一国の主としての矜持を熱弁する姿、「犬死に無用!」の情け、そしてキリリと眉を上げたメイク、長い脚を見せつけるようにすっくと立つ姿…。雪姫はどこをとっても本当のお姫様!

ルックスと雰囲気でキャスティングしたであろう雪姫ですが、そのつたなさ故に別の何か(今回の場合はセリフの良さ)が引き立つってコレ、映画ってホント総合芸術だよなあと思います。ちなみに上原美佐さんはその後いくつかの作品に出演しましたが、「自分には向いていない」と2年ほどですっぱり辞めてその後は主婦業に専念したそうです。この潔さもまた「やっぱり雪姫っぽいなあ」と思ってしまうのでした。

アマゾンプライムビデオでレンタル料400円〜(2023/12/21現在)です〜