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【恋人たち(2015年邦画)】感想/そして人生は続く


恋人たち [DVD]

不穏度

30(100を満点として)

光石研は信じるな

基本情報

公開年:2015年

監督:橋口亮輔(他監督作品「二十歳の微熱」「ハッシュ!」「ぐるりのこと」)

脚本:橋口亮輔
キャスト: 篠原篤(篠塚アツシ)成嶋瞳子(高橋瞳子)池田良(四ノ宮 )黒田大輔 (黒田大輔)光石研(藤田弘)

上映時間:140分

あらすじ

<公式サイトより引用>

東京の都心部に張り巡らされた高速道路の下。アツシ(篠原篤)が橋梁のコンクリートに耳をぴたりとつけ、ハンマーでノックしている。機械よりも正確な聴力を持つ彼の仕事は、ノック音の響きで破損場所を探し当てる橋梁点検。健康保険料も支払えないほどに貧しい生活を送る彼には、数年前に愛する妻を通り魔殺人事件で失ったという、つらく重い過去がある。

郊外に住む瞳子(成嶋瞳子)は自分に関心をもたない夫と、そりが合わない姑と3人で暮らしている。同じ弁当屋に勤めるパート仲間と共に皇族の追っかけをすることと、小説や漫画を描いたりすることだけが楽しみだ。ある日パート先にやってくる取引先の男とひょんなことから親しくなり、瞳子の平凡な毎日は刺激に満ちたものとなる。

企業を対象にした弁護士事務所に務める四ノ宮(池田良)は、エリートである自分が他者より優れていることに疑いをもたない完璧主義者。高級マンションで一緒に暮らす同性の恋人への態度も、常に威圧的だ。そんな彼には学生時代から秘かに想いを寄せている男友だちがいるが、ささいな出来事がきっかけで誤解を招いてしまう。

それぞれの“恋人たち”は、失ってはじめて「当たり前の日々」のかけがえのなさに気づいていく―― 。

感想的なこと

以前も言いましたがあまりに感動しすぎた映画ってなかなか感想を書きにくい。ただただ「良かったです」としか浮かばないんすよね。この作品「恋人たち」もまさにそんな一本でして…。紹介したい気持ちは山々ですが何を書けばいいのかわからないので、周辺のことをつらつらと。

「二十歳の微熱」から22年

その昔新宿東口に「シネマアルゴ」というミニシアターがありました。1993年橋口亮輔監督のデビュー作「二十歳の微熱」をこの小さな映画館で行列に並んで観た記憶があります。評判に違わず、胸が締め付けられる良い青春映画でした!いち観客のざれごとですが、この時「この監督、ワタシと『死にたみの量』が近いんじゃないか?」とうっすら思ったのですよ。そして22年の時を経て「恋人たち」を観た時その予感は確信に変わったわけです。子供の頃からなんとなく憂鬱気味な人間(暗い、とも言う)のワタシは同じ傾向の人が分かります。

橋口監督は「二十歳の微熱」発表と前後してゲイであることを公表。その後「渚のシンドバッド」「ハッシュ!」で高く評価されましたが、うつ病に。そして2008年そのうつ病体験を生かして「ぐるりのこと。」を発表。(良い作品だけどしんどかった…)「恋人たち」はその7年後の作品です。寡作の監督なので時々「どうしてんのかな…」と心配して検索をかけてしまいますよ。(親戚のおばちゃんかよ)

さて、デビュー作「二十歳の微熱」は「ウリセン」を扱ったという、当時としてはセンセーショナルな内容だったこともあり異例の大ヒット。シネマアルゴでも歴代最高の観客動員数だったとか。このヒット作に対し非常に辛口の評価をつけたのが淀川長治先生です。当時「デビューしたての新人監督の作品に何もそこまで言わなくても…」と気の毒になったくらいボロカスに言っていた記憶がありまして。

んで、今回「恋人たち」についてちょっと調べていたらお披露目試写会での橋口監督のインタビュー記事が出てきました。「『あんたならやれる』淀川長治さんの言葉胸に」という見出し。え?ボロカス言われれたよね?!どういうこと?と思って読んでみると…、淀川先生、メタクソに酷評した直後に「1回映画を選んだのなら、最後までやりなさい。あんたならできる」と言ってくれたのだとか。「あんたならできる」は表現したい、せざるを得ない橋口監督の人間性を見抜いてのことだったのでしょう。そうだったのか…良かった…。と何故かワタシまで一緒にホッと胸を撫で下ろしたのでした。(やっぱり親戚のおばちゃん)

長い映画の魅力とは

さて当ブログには、「上映時間」というカテゴリーがあり、映画の長さ別に分類してあります。すぐ「タイパが悪い」などど抜かす輩は好きではありませんが、個人的にも映画は2時間前後でピシッとまとめるのが良いんでねえの?と思います。しかし長い映画ならではの魅力もあります。それは「登場人物と友達になれること」。スクリーンのあっち側とこっち側という隔たりはあるにしても2時間半〜3時間も濃厚な時間を一緒に過ごすんですよ?もう友達ですよね?

実際、「ハッピーアワー」(濱口竜介監督:317分!)の4人の主人公とか、「風とともに去りぬ」(222分!)のスカーレットとか友達ですから、ええ。

さて、「恋人たち」は140分。2時間オーバー。まあまあの長さです。そして映画の中でしんどい日々を過ごす人々の問題はほとんど何も解決されずに終わります。映画が終わった後も彼らの人生はどこかで続いているんでしょう。だから今でも時々思うんです。深夜お風呂で髪を洗っている時、眠りにつく前、あるいは駅のホームでふと。奥さんを通り魔に殺されたあの人は少しは元気になったかな?職場の片腕のない先輩と仲良くやっているといいな。瞳子さん、雅子様は皇后様になられましたね。性格の悪い弁護士の彼は少しは丸くなったかしら?

相手はこちらを知らないのにバカみたいですけど、みんな幸せであれ!と願わずにはいられない、「恋人たち」はそんな作品です。ずっしりと重いけど、スクリーンの向こう側の友達たちが分けてくれたその重みが、こちらの孤独を和らげてくれるように思うんですよ。

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恋人たち

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