基本情報
公開年:2023年
監督:ベン・アフレック(他監督作品:アルゴ)
脚本:アレックス・コンベリー
キャスト:マット・デイモン(ソニー・ヴァッカロ)ベン・アフレック(フィル・ナイト)ビオラ・デイビス(デロリス・ジョーダン/マイケル・ジョーダンの母)ジェイソン・ベイトマン(ロブ)
上映時間:112分
あらすじ
<以下公式サイトより引用>
1984年、人気がなく業績不振のナイキのバスケットボール・シューズ。ソニーは、CEOのフィルからバスケットボール部門の立て直しを命じられる。競合ブランドたちが圧倒的シェアを占める中で苦戦するソニーが目をつけたのは、後に世界的スターとなる選手マイケル・ジョーダン――当時はまだド新人でNBAの試合に出たこともなく、しかも他社ブランドのファンだった。そんな不利な状況にもかかわらず、ソニーは驚くべき情熱と独創性である秘策を持ちかける。負け犬だった男たちが、すべてを賭けて仕掛ける一発逆転の取引とは…!?
「グッド・ウィル・ハンティング」でベン・アフレックとマット・デイモンの友情の話を書きましたが、(下にリンク貼っときます〜)この「AIR/エア」もまさかの友情話でありました。とても面白く点数つけるとしたら80点。監督ベン・アフレックは手堅くて、まあ手堅すぎというかもうちょっと何かはみ出したほうが爆発力が出たのでは…ってとこがマイナス20点の理由かなあ。ネタバレ感想、よかったとこと気になったとこまとめてみました〜。
(以降ネタバレ注意です!)
感想・良かったところ
どっぷり1984年に浸れる!
日曜の午後のせいもあり、映画館、かなり人が入っていました。とはいえワタシのようなおばはんおっさんが多数だったように思います。そうです、舞台は1984年。この当時のカルチャーを覚えているか、もしくは当時が好きなお若いマニアさんにはたまらない映画です。オープニングをはじめ、ちょいちょい当時の映像がそのまま挟まってきます。音楽もシンディ・ローパーとか、ブルース・スプリングスティーンとか。日本もアメリカも勢いのある楽しい時代だったよな…
ソニーは決して「ヒーロー」じゃない
主役はマット・デイモン演じる「ソニー」。弱小バスケ部門を担当しており、年齢的にもそれなりの権限のある位置にいます。このソニーが当時のナイキからしたら常識的にはとても考えられない「マイケル・ジョーダンとの契約を勝ち取る」というミラクルを起こすわけですが、特に普段からぶっとんだ人ではないんですよね。ここがポイント。
人生には、あとで思うと「どうしてあの時あんなに夢中になれたんだろう」「どうしてあんなに頑張れたんだろう」という時期があります。この物語はソニーのそんな「神がかり期」を切り取った作品です。オープニング、ソニーはカジノでボロ負けします。しかしビデオを繰り返し見て「ジョーダンは大スターになる」と思い込んだ彼はアポなしで自宅に乗り込み、プレゼンで感動的なスピーチをし、契約を勝ち取ります。このスピーチがまさに神がかり。ジョーダンのその後の人生を言い当てているのです。ジョーダンの実際の「その後の人生」の映像がカットバックで入れられる演出もあいまって泣いちゃいましたよ。(思い出したけど大変なこともあった人だよね)「普通の人」が神がかっちゃって「天才」を説得するのですよ。面白いです。
しかしいざ契約の際、ジョーダンのお母さんから出された「前代未聞の条件」を飲み込むことができず、契約をあきらめようとします。お母さんから電話が来た時すでにソニーの「神がかり期」は過ぎ去っていたように思います。だって「そんな条件は飲めないよ」と怯える常識人になってるんだもの。しかし、ソニーが「神がかり期」に振り撒いた情熱は他の人に伝播しています。フィルはその情熱にほだされて「前代未聞の契約」を結び、結果ナイキの大躍進につながるのです。
「神がかり期」と表現しましたが、ワタシの夫はこういう時期のことを「狐に憑かれる」と表現します。曰く、お狐様は突然やってきて、ある日突然いなくなってしまうのだとか…。なんかわかりますね。
友情と言わずになんと言う?
主人公のソニーは一人者で家ではテレビディナーの日々。しかし周囲には同僚や話せる上司、喧嘩ばかりしているエージェントなどそれぞれ「ただの仕事仲間」とは言い語いもっと「友人」に近い関係の人々がたくさんいます。「交渉相手」になるマイケル・ジョーダンの母親ともそんな「表す言葉が見つからない関係」になるんです。作品はソニーとその相手との1対1の関係をとても丁寧に描いています。大きなことを成し遂げるのも結局は人と人との関係なわけですよ。ええっと…面倒だからと「上の者に確認しますね〜」などと逃げてきた自分に反省しかありませぬ…。「AIR/エア」がどんな映画かと聞かれたら、たぶん「友情の話」と答えると思います。
感想・気になった点
もしかして事実に忠実過ぎ?
この作品、マイケル・ジョーダンは後ろ姿しか出てきません。その代わり当時の本人の映画が出てきます。また、当然ながら・ジョーダン本人にこの企画を通し意見をもらっています。そのジョーダンの意見の一つが「母親役はぜひビオラ・デイビスで」というのがあったそうで。最後に本当のお母さんの映像が出てきますが、似てるんですよすごく。ビオラ、似せてきてる。こんなことからわかるようにどうやらかなり史実に近い映画になっているようで。「アルゴ」を観た時にも思ったんですけどなんか真面目にやりすぎな気がするんですよ、ベン・アフレック。「現実は小説よりも奇なり」とは言いますが「奇なり」なことってそうそうないっすから。事実にこだわった結果、全体的に小さくまとまりすぎな気がしました、ハイ。
ナイキはカネとクチを出したのか?!
最後のほうにあるソニーとCEOのフィルの会話。なぜかそこに「ナイキ豆知識」が唐突にぶっこまれます。「『ナイキ』という社名じゃなかったかも知れなかった」「あの有名なロゴマークは35ドルで学生に作ってもらったもの」というまさに「ナイキ雑学」。え?いる?このセリフ?絶対ナイキからゴリ押しで入れろって言われたヤツですよね?と思いパンフのスタッフ名をくまなく見てみましたが制作陣にナイキの関係者はいないよう…。製作総指揮の一人に「ウォール•ストリート・ジャーナル」の記者でソニーにインタビューしてから交流が続いている」という方がおり、おそらくこの方が企画発案者でしょう。
さきほど書いた「ジョーダン母がつきつけた前代未聞の契約条件」というのは「毎年エア・ジョーダンの売り上げの何割%かを払ってもらう」というもの。個人名が商品の名前になっているのですから今では当たり前に思えますが当時は画期的な考えだったんですね。
こんなことを知るとですよ?ナイキが製作費にいくらかお金を出し、ついでに口も出し、興行収入の何%かを得る契約になっていてもおかしくないなと思いますよね。(すみませんすべてワタシの想像です!)もしカネもクチも出さず収入からピンハネもせず「好きなように描いていいよ」と許可を出したとしたらですよ?その男前ぶりに惚れてまうので、ナイキのシューズをぜひ買わせていただこうと思います!
4/19追記:TBSラジオ「こねくと」の町山智浩さんコーナーを聞いていたらなんと!ナイキはいっさいこの映画に関わっていないそうです。しかしその理由が「エア・ジョーダンはナイキの社員みんなでつくったものでソニーだけの功績ではない」というもの。しかもナイキをその後ソニーをクビにします。頭にきたソニーはアディダスに転職したんですって!!どっちの言い分もありそうですが、なんとも…ですねえ…やっぱナイキのシューズは買わないよ…(実はアディダス派なんです)
「AIR/エア」はアマゾンプライムビデオで観られます
こちらは「グッド・ウィル・ハンティング」のことを書いた記事。ってか映画の内容じゃなくてマットとベンの友情のことを書いてます〜
「ボーン・イン・ザ・USA」からRun-D.M.Cの「My Adidas」、the Clashまで!「ベストヒットUSA」世代には涙で前が見えないッ!AIRのサントラはこちら。