不穏度
55(100を満点として)
見えないから怖い
基本情報
公開年:2011年
監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:ギャレス・エドワーズ
キャスト: スクート・マクネイリー(アンドリュー・コールダー)ホイットニー・エイブル(サマンサ・ワインデ/サム)
上映時間:94分
あらすじ
<以下DVDの紹介文より引用>
NASAは、太陽系に“地球外生命体”の存在を確認。探査機がサンプルを採取したが、大気圏突入時にメキシコ上空で大破してしまう。その直後から突如出現し始めた地球外生命体の増殖によって、メキシコの半分は危険地帯として隔離された…。
6年後、“モンスター”たちの襲撃で大きな被害を受けるメキシコでスクープを狙うカメラマン、コールダーは、上司から怪我をしてしまった社長令嬢のサマンサを、「アメリカとの国境まで送り届けろ」という命令を受ける。2日後にはアメリカ軍が国境を閉鎖してしまうという状況下で、“モンスター”たちからの襲撃を避けながら2人は海岸に向かうが、コールダーのミスでパスポートとチケットが盗まれ、港に取り残されてしまう。
残された手段は、危険地帯を通る陸路だけだった。
繁殖期を迎えた“モンスター”の襲撃とアメリカ軍の爆撃に怯えながら旅するその道程で、彼らが見たものとは!?そして、2人は無事に危険地帯から逃げ出すことができるのか?
解説
アカデミー視覚効果賞受賞の「ゴジラ-1.0」、迫力ありましたね〜!
※レビューはこちらです〜
さて、怪獣映画つながりで観たのが「モンスターズ/地球外生命体」。
昨晩ウトウトしながらアマプラの「ウォッチリスト」を見ていたら「何これこんなの入れたっけ?」(アマプラユーザーあるあるですな〜)って映画が出てきまして。それがこの作品だったのです。2010年、120万円程度で作られた超低予算映画。ギャレス・エドワーズ監督の出世作です。
なんでも2010年数々の映画祭で受賞、タランティーノやリドリー・スコットも絶賛したそうな。ほおお〜。ギャレスはその後2014年にモンスター•ヴァースシリーズ一作目の「GODZILLA ゴジラ」を監督。そして元々VFX製作者だったそうで、これ「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督のキャリアとかぶるじゃ〜ん!ってことに興味を抱き観てみましたよ。以下感想と評価・考察などなど。(ラストまでのネタバレしています!)
感想と評価・考察
ジャンルが変わっていく面白さ!
グーグルで「モンスターズ/地球外生命体」と入れると「つまらない」「意味がわからない」がかなり上位に出てきます。えっ?そうかあ?確かに年に5本しか映画を観ない人にお勧めはしませんが、まあまあマニアックな作品も好きよ💖というアナタは観ても損はなし。魅力はなんといってもそのノンジャンルっぷり。タイトルと導入からSFでありモンスターものだと思っていると、途中からロードムービーになりラブロマンスにもなっていく。実際の現地ロケはごくわずかで、男女2人の役者の台詞もほぼアドリブなのだとか。
モンスター(地球外生命体)はあくまで主人公たちが見た目線でしか登場しません。はじめはテレビの画面の中。夜間赤外線カメラで遠方から映したものなのでシルエットしかわからない。そして初めての接近遭遇は船で渡航中の時、水の中から少しだけ見えるというもの。次は襲われ大惨事になるのですが、2人は車の中にいるのでやはり全貌は見えない。そして最後安全だと思ったアメリカにたどり着いたところで初めて近くでモンスターの全貌を見て、そして何かを悟るのです。ロードムービーの形を借りながら主人公の目線で徐々に怪物の姿をみせていく…おそらく古典的な方法であり決して新しくはありません。主人公の男女の「望まない相手と婚約が決まっている新聞社だか雑誌社だかの社長令嬢」と「その令嬢をアメリカまで送り届けることになってしまったカメラマン(令嬢のお父さまの会社に写真を売ろうとしている)」という組み合わせもまた、「或る夜の出来事」から始まりローマの休日まで受け継がれる古典的モチーフ。しかしなぜか作品全体になんともいえないフレッシュさがあるんですよね。若い映画人が古い方法を使うことで逆に生まれた新鮮さ、とでも言いましょうか…。旅の途中の何気ない会話で2人の気持ちが近づいたり離れたりするのにきゅんとしたりしてね。
そしてもう一つのこの作品の魅力は、隠されたメッセージ性にあります。
「トランプの壁」公約発表の6年前!予言的な作品
設定は「メキシコの半分が地球外生命体に占領され『危険地区』となっている時代」。アメリカは自国にモンスターを入れまいとメキシコとの国境に巨大な壁を築いています。トランプ元大統領が「メキシコ国境に壁を作る」と公約にぶち上げたのは2016年の大統領選挙の時。その前からアメリカではこの手の議論があったのかも知れませんが同作は2010年に作られています。ちょっと驚きです。
そして2人は旅をしながらモンスターの生態を学んでいきます。それは「攻撃しなけれれば襲ってこない」こと、「森で生まれ河を下って大きくなり、また森に戻って産卵(?!)すること」。最後に2人は2体のモンスターの交尾らしき愛の行為を見て感動してしまうのです。モンスターは地球上の他の生命体と何ら変わりはなく、見た目が気持ちワルイからといって攻撃すべき相手ではない…台詞にこそなっていませんが強いメッセージ性を感じます。これもその後のトランプ政権による分断社会を予言しているようですね。
ちなみに、難民エイリアンをヨハネスブルグに出現させて差別問題をメタファーとして描いたSF「第九地区」も公開は2009年。このあたりから世界の分断は加速していたのでしょうか…?こういった「今だから気づく答え合わせ」のようなものに気づかせてくれるのも映画の面白さです。
考察!最後のキスの意味
ラスト、アメリカに戻った2人は人気のないガソリンスタンドでモンスターの交尾らしき行為を目撃した後、キスをします。おそらく「意味がわからない」と言われている部分はここでしょう。以下ワタシの勝手な解釈なのですが…
社会で仔細なことに忙殺されて生きている人間は時として他の生き物の「ただ生きていく」という行為に触れて感動することがあります。ペットが癒しと言われるのもそうですよね。ご飯食べて排泄して眠ってちょっと遊んで、(できる個体は)子孫を残す日々。ただ生きることのなんと美しいことか!2人もそんな気分になったのでしょう。惹かれあいながらも様々なしがらみで触れ合うことのできなかった2人ですが最後、モンスターの生き方をみて「目の前の相手が欲しい」という本能に素直になるのです。…ってことだと思いましたよ。
モンスター(地球外生命体)の造形はちょっと残念!
んでですね、肝心のモンスターの造形。タコです。まんまタコ。H.G.ウェルズの呪いはまだ生きていたんですね〜!ってか欧米人どんだけタコが怖いんだよ!
とはいえ国立科学博物館のサイトによればタコ型は火星人として根拠があるらしく‥
・19世紀火星には人工的な運河があると思われていた
・作ったとしたら火星人だが運河の設計ができるほど頭が良い
・火星の重力は小さいので手足は細い
・頭が大きくひょろっとした手足の「タコ」になった
根拠があるなら仕方ないですが、ギャレス監督は「GODZILLA ゴジラ」(2014)の怪獣「ムートー」がとても良かっただけにそこはもうちょっと独創的なエイリアンだと良かったなあ〜と残念でした。
「モンスターズ/地球外生命体」はプライム会員特典で観られます!ワタシは吹き替えで見たよ〜!
アマゾンプライムは30日間無料体験できます。ここから申し込みに飛べます〜。
「ムートー」がどんな造形かはぜひ下の「GODZILLA ゴジラ」(2014)を観て下さい!映像もかなりカッコいいです。
モンスター・ヴァースシリーズは上記の一作目「GODZILLA ゴジラ」二作目「キングコング:髑髏島の巨神」(2017年)、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019)「ゴジラvsコング」(2021年)と続きます。下レビューは「ゴジラvsコング」(2021年)のもの。監督はギャレスではありません。アメリカのレジェンダリーという会社が制作しているので「レジェゴジ」などと呼ばれています。
「ゴジラvsコング」のレビューもどうぞ!