映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【アメリカン・フィクション】感想(ネタバレなし)/「感動ポルノ」を笑え!メタフィクションコメディ!

 

基本情報

公開年:配信のみ。(2024/3/5現在アマプラで独占配信中!)

監督&脚本:コード・ジェファーソン

キャスト:ジェフリー・ライト(セロニアス・「モンク」・エリソン )トレーシー・エリス・ロス(リサ)エリカ・アレクサンダー(コラライン)マイラ・ルクレシア・テイラー(ロレイン)

上映時間:118分

あらすじ

<以下アマプラの紹介文より引用>

侮辱的な表現に頼る“黒人のエンタメ”から利益を得ている世間の風潮にうんざりし、不満を覚えていた小説家が、自分で奇抜な“黒人の本”を書いたことで、自身が軽蔑している偽善の核心に迫ることになる。

(↑いちおうアマプラからそのまま引用したけど雑すぎな紹介文だと思うぞ…)

TBSラジオ「こねくと!」のお馴染み町山智浩さんコーナーで紹介されていて興味を抱き観てみました。うわあ〜面白かった!何度か声出して笑っちゃう場面もありました。コメディです。日本では劇場公開しないのでアマプラ鑑賞。では興奮冷めやらぬうちにざざざっと感想です〜。(ネタバレなし!)

感想

アカデミー作品賞候補でありながら日本では劇場公開なしの配信のみ。まあ、それもわかります。「現在のアメリカの黒人」の話なんで、日本人にはようわからん部分もあるんですよね。町山さんの解説にとても助けられましたんで公式ポットキャスト貼っておきますね!(ネタバレはしていないのでこれから鑑賞の方もどうぞ!)

www.youtube.com

ざっくり内容を説明すると、真面目に文学を追求しているインテリな売れない黒人の小説家(大学教授)が、お金のために正体を隠し「貧しく学もなく、麻薬と犯罪の中で刹那的に生きるラップ好きな黒人」というステレオタイプな黒人に扮して「オレの自叙伝」的な小説を書いてみたら大ヒットしちゃって大慌て…というお話。

ここから浮かび上がってくるものは「世間がこうであって欲しいと望む黒人の姿」と「現実は違う」というギャップ。上の町山さんの解説にもありますが、アメリカの黒人の貧困率はわずか17.1%だそうで、全然低い。それなのになぜ未だに「黒人は貧しい」と思われているかといえば、一つは成功した黒人が「ステレオタイプの黒人を演じているから」。なぜそう演じているかといえば白人が「黒人は『気の毒な存在』であって欲しい」と望んでいるからです(たぶん)。なんと見事な需要と供給の一致!!

日本にも同じ構造はないでしょうか?考えていたら一つ思いつきました。「24時間テレビ」です。登場するのは視聴者が理想とする「がんばっている障害者」。観ている人たちは「可哀想な人ががんばっている姿に感動できる。さらに健常者である自分の幸せを思い出させてくれたそのお礼に寄付もしますよ」という心優しい気持ちになれます。需要と供給が一致しましたね。

人はには皆「その属性で求められる人物像」があります。「大阪人だから面白い」とか「おばさんだから図々しい」とかね。「あ、今こういう感じを求められてるな」と感じた時にそれに乗っかりウケた時ってなんとも言えない快感があります。

思い出して見ると、ワタシも30歳前後の時「結婚したいのにできないキャラ」を演じて自虐ギャグをかましており、ウケると無償に気持ちよかったですよ。「この年齢の女はみな『結婚願望がある』と思われている。よし、そのセンでやってみよう!やった!ウケたぞ!」みたいな。いや、本当は結婚したいなんて気持ち当時サラサラなかったんですけどね。

だから主人公のモンクがステレオタイプの黒人と本当の自分とのギャップに苦しむ姿は自分にはない「誠実さ」を感じます。同じくゲイであることを隠さない兄にも。どんなに快感を得られようと、お金を得られようと捨てちゃなんねえものがあるんでないの?…そんな問いかけをされたような2時間でした。

とはいえ、コメディなので重たいもんではありません。最後どう決着つけんのかな?と思っていたらまさかのメタメタのメタな展開になり、ここでも笑わせていただきました。

それと、観たみなさんつぶやいていましたが、アマプラの字幕が事故レベルにひどいです。なぜか語尾にみんな「?」マークがついています。吹替で観られることをお勧めします!(映画が始まると右上に出てくる「字幕と吹替」から選べます!)

人生変わった度

★★

人にその「役割」を勝手に期待することもあるよね。反省。