不穏度
30(100を満点として)
ホラーなので不穏映画の中に入れましたが、スラッシャー系で不穏度低め。
基本情報
公開:2012年
監督:ドリュー・ゴダード
脚本:ドリュー・ゴダード
キャスト:クリステン・コノリー(デイナ・ポーク)クリス・ヘムズワース(カート・ヴォーン)アンナ・ハッチソン(ジュールズ・ローデン)フラン・クランツ(マーティ・ミカルスキ)ジェシー・ウィリアムズ(ホールデン・マクレア)
上映時間:95分
あらすじ
<以下、DVD紹介文より引用>
夏休みに山奥へとバカンスへ出かけた大学生5人。古ぼけた山小屋の地下で見つけた謎の日記を読んだ時、何者かが目覚め、一人、また一人と殺されていく。しかし、その裏に若者たちが「定番のシナリオ通り」死んでいくよう、すべてをコントロールしている謎の組織があった。その組織の目的は? 若者たちの運命は―? その先には、世界を揺るがす秘密が隠されていた…。
監督のドリュー・ゴダードは、脚本家として有名で「LOST」「クローバーフィールド」シリーズで脚本と製作総指揮に名を連ねています。この2つの作品を手がけたことからも分かる通り作風は「予測のナナメ上を行く展開」。
「LOST」も「クローバーフィールド」も大好きなワタシは、この作品とても面白かったです。ただ「想像もつかない」部分が面白かったわけではありません。ではどこが面白かったかと言うと…以下、ネタバレありなのでご注意を!
感想と解説
冒頭からネタバラシされているメタ構造
オープニングはどこかの研究所のような場所。白衣を着た人々が忙しそうに動き回り、これから何かの実験が始まるようです。続いてのシークエンスは女子大生の部屋。イケイケ陽キャ系の女の子と奥手な女の子2人の会話があり、これから男の子たちと「いとこが買った山奥の別荘」に遊びに出かけるようです。そしてその別荘で「定番通り」の恐ろしい目に遭うのですが…。
謎の研究所パートと若者たちがハメを外して浮かれた後ゾンビに襲われる恐怖パートのカットバックが続くうちに、研究所が若者パートの世界を支配していることがわかります。別荘へと繋がる一本道のトンネルをくぐった先は研究所が支配する世界だったのです。研究所が一体何をしているかといえば、「若者たちに山奥の別荘に行かせ、ハメを外させる。怪しい品が並ぶ地下室に降りさせて、うっかり『ゾンビを蘇らせる呪文』を言わせる。陽キャ男女がエッチなことをはじめるとゾンビに襲われる。処女は最後まで生き残るようにする。」という流れを作ること。「ホラー映画あるある」を現実化させる実験をしているのです。この映画がメタ構造であることをはじめからバラしています。
もしこの作品が00年代のものだったら、「ありがちホラー展開」パートを最初に描き、実はこれ、研究所がすべて操ってたものでした〜というネタバラシを後半に置いてオチとするでしょう。しかし同作は2012年の作品。しかも監督は「LOST」「クローバーフィールド」のクリエイター。「メタのさらに先を行く」展開を捻り出すべく、冒頭から構造バラしをしてるのです。
スクリームに代表されるメタホラー
さてホラー作品におけるメタものの歴史は古く、おそらく最初は96年の「スクリーム」ではないかと思われます(違ってたらすんません!)。ちなみに「スクリーム2」の試写会に行った際、「わあ〜面白かった〜」と思ってふと振り返ったらおすぎ先生が爆睡されていた…というつまらんことを覚えています。「スクリーム」はホラーマニアの脚本家が「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」に代表される「ホラー(スラッシャー)映画あるある」をこれでもかと盛り込み、登場人物たちも「次の展開はこうなるよね?」と「ホラー映画の登場人物であることを自覚」しています。「スラッシャー映画の様式美をパロった」ということが目新しい作品でした。
地下にいるのは誰なのか?
ホラー映画は低予算で創れるだけにアイデアが勝負。リアルな宣伝手法が評判を呼び、モキュメンタリーものとして大ヒットした「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」もそうですが、映画に新風を吹き込むアイデアの萌芽は常にホラー作品から生まれるように思います。おそらく「キャビン」も「新しいアイデアを!」と脳汁を絞れるだけ絞って創ったのでしょう。
お話に戻ると、実在の若者を使ってホラー作品を創っている謎の研究所のクライアントは「地下の方々」というこれまた謎の存在。ホラーパートが上手に「座りの良いラスト」を迎えないと地下の方々が怒りだし人類が滅亡するのだそうです。しかし「ホラー作品」といえども、登場人物はリアルな人間。最後まで生き残った二人は研究所の脚本通りには動かず大暴走。その果てにこれまでのホラー映画に出てきたキャラクターが全員集合するという大惨事が起こります(説明できないので観て下さい!)
さて、ここで考察したくなるのが「地下の方々」とは何なのか?ということ。観た方はもうピンと来ると思いますが、「面白くて怖くて、でも予定調和で分かりやすい作品を観せろ!というわがままな観客」、もしくは「そういった観客の欲望そのもの」でしょう。
また、同作のラストカットは大きな手が地下からズボっと出てくるシーン。これは「もうスラッシャー系ホラーは終わった、巨大モンスターものに後は譲る」という表明だとも考えられます。
なんにせよ、考えに考えたあげく、最終的に人類を滅亡させてしまった脚本&監督のドリュー・ゴダード氏の精神状態が心配になります。ギャグ漫画家が短命なように、根を詰めすぎると精神に悪い作風に思いますよ…(余計なお世話)!
というわけで「キャビン」、ホラー映画の歴史から作者の精神状態にまで思いを馳せるまさかの展開になったところが面白かったのでした〜。
CABIN、アマプラでは残念ながら現在観られないようです。(ワタシはネットフリックスで鑑賞)2024/3/10現在、プライム特典で観られるようになっていました!(吹替版)
2024/8/21現在、またしてもレンタル料がかかるようになっていました!
アマゾンプライムは30日間無料体験できます。ここから申し込みに飛べます〜。
アマプラでは「スクリーム」も観られます(レンタル料かかります)。とりあえず1997年の1を観てハマるかどうかです!