基本情報
公開年:2025年
監督:李 相日
脚本:奥寺佐渡子
キャスト:吉沢亮(立花喜久雄/花井東一郎)横浜流星(大垣俊介/花井半弥)高畑充希(福田春江)寺島しのぶ(大垣幸子)渡辺謙(花井半二郎)田中泯(小野川万菊)
上映時間:174分
あらすじ
<以下、公式サイト【story】より引用>
後に国の宝となる男は、任侠の一門に生まれた。この世ならざる美しい顔をもつ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む。そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と出会う。
正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人。
ライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、多くの出会いと別れが、運命の歯車を大きく狂わせてゆく...。
誰も見たことのない禁断の「歌舞伎」の世界。
血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切り。
もがき苦しむ壮絶な人生の先にある“感涙”と“熱狂”。
何のために芸の世界にしがみつき、激動の時代を生きながら、世界でただ一人の存在“国宝”へと駆けあがるのか?
圧巻のクライマックスが、観る者全ての魂を震わせる―― 。
評価
とても良い映画だと思いました。皆さんが絶賛している通り、役者がとにかく素晴らしいです。特に子役と、人間国宝の女形「小野川万菊」役の田中泯の狂気。
あの分厚い緞帳の内側で何が起きているのかを知ると(もちろん同作はフィクションですが)歌舞伎鑑賞に行きたくなる。
「フラガール」「悪人」でお馴染みの李監督のソツのない演出、ハッとするほど美しい陰影を撮影したのは「アデル、ブルーは熱い色」でカンヌのパルム・ドールも獲得したソフィアン・エル・ファニ。
いやあ、非の打ちどころがない…ない…ん?ないんか?
巷では「大絶賛」されているので非常に言いにくいのですが、正直、絶賛はしてもいいけど「大絶賛」と言われると疑問だな、と思う所もありまして…。では、それがどこかも含めて以下ざっくり感想です〜。(ネタバレなし!)
感想
舞台は上方歌舞伎の世界。歌舞伎を題材にしながらも歌舞伎役者はほぼ出ておらず、そもそも制作が松竹ではなく東宝。なんとなく「歌舞伎界の誰か」がモデルになっているような役柄があり、松竹では逆に作れなかったのではないか…?なんて邪推してしまいました。
お話は「あらすじ」にあるように、同い年の血筋のある者とない者が切磋琢磨しながら芸を磨く長い年月の物語。血筋の者でない、つまり後ろ盾のない喜久雄(吉沢亮)が心を奪われるのが人間国宝・小野川(田中泯)が演じる「鷺娘」です。人間に恋をしてしまった鷺の精が苦しみのあまり最後は息絶える。この舞台を見て歌舞伎に目覚めた喜久雄もまた、鷺娘のように「道ならぬ想い」に苦しむことになる。芸事にはどんなに恋焦がれても一方通行であり、想いが成就することはないのです。喜久雄が神社に手を合わせ「悪魔と取引きをする」場面が印象的。まあ、それを子供に言うのは酷だよなあと思いましたが。
その「鷺娘」をはじめ、劇中劇として歌舞伎の演目が配されており、物語をもう一つ深いものにしています。押さえておきたいのは鷺娘と「曽根崎心中」。お初が縁の下に隠れた徳兵衛に「死ぬ覚悟があるのか」と問う場面は何度も繰り返される。言うまでもなく、恋と名誉のために死んだ2人と、芸のために死ぬ覚悟の役者たちの心情のオーバーラップです。ちなみにこの他の演目についてもあらすじは「国宝」公式サイトの「KEYWORLD」に載ってますんで、これから行かれる方は一読されるとよいかと。
んでですね…とても良い映画だと思うんですが、大絶賛!!とまでは言えないな、というのは顔のアップが多すぎる…ということ。身体の芝居が出来てないのを誤魔化そうとしているんじゃないか?と思っちゃうんですよ。それとカシャカシャとやたらカット割多いなあ…全体像をロングで見せてくれよ…と思うところもありましてね…。
とはいえ、これは「狙い」だと思います。同作は普段映画館に足を運ばない層が観に来て絶賛コメントを寄せてるような感じがするんすよね(データないけど)。上述したような演出は映画好きには「映画っぽくない」と見られますが、そうでない層には「見やすさ/面白さ」になります。
誰もが名前を知っている役者陣と、映画を見慣れていない層にもアピールする演出、さらには日本人なら皆うっすら興味のある「歌舞伎」の世界が舞台。良い企画で、それが狙い通りに当たったということでしょう。海外にもイイ感じに受け入れられそうだし。
先日見た無茶苦茶面白かったJホラー「ドールハウス」といい、この「国宝」といい、東宝、今、企業としてすごく良いよね。映画のほうは「絶賛」が精一杯だけど、東宝の現在地には「大絶賛」だよ!…と、最終的にはそんな感想になったのでした。ワタシは新宿バルト9で観たのですが、こういう作品で大きなハコにお客さんがいっぱい!っていうとこに感動したもんね。
「国宝」、大きなスクリーンで観たほうがいいと思います!公式サイト貼っておきます〜
こちらも面白かった!長澤まさみ主演「ドールハウス」レビュー貼っておきます〜。