映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【お嬢さん】ネタバレ感想と考察的なもの/R18+の過激描写の意味とは?!


お嬢さん <スペシャル・エクステンデッド版&劇場公開版>2枚組 [Blu-ray]

※すみません当初「R15+」としてアップして「体感としてはR18+だわ〜」などと書きましたが、本当にR18+でした。間違えました!謹んでお詫びの上訂正いたします。

基本情報

公開年:2017年

監督:パク・ヌチャク(他監督作品 オールドボーイ 別れる決心) 

キャスト:キム・ミニ(和泉秀子/お嬢様) キム・テリ(ナム・スッキ/珠子) ハ・ジョンウ(藤原伯爵)チョ・ジヌン(上月教明)

上映時間:145分

あらすじ

<以下、DVD紹介文より引用>

舞台は1939年の朝鮮半島。

支配的な叔父と、膨大な蔵書に囲まれた豪邸から一歩も出ずに暮らす令嬢・秀子(キム・ミニ)のもとへ、新しいメイドの珠子こと孤児の少女スッキ(キム・テリ)がやってくる。実はスラム街で詐欺グループに育てられたスッキは、秀子の莫大な財産を狙う"伯爵"(ハ・ジョンウ)の手先だった。伯爵はスッキの力を借りて秀子を誘惑し、日本で結婚した後、彼女をある場所に隔離し財産を奪う計画を企てていた。だがスッキは美しく孤独な秀子に惹かれ、その計画は少しずつ狂い始めていく・・・。

感想と考察的なこと

ラストまでのあらすじ

意図せずここのところ官能的な作品の紹介が続いていますが2017年公開の韓国映画「お嬢さん」もがっつりR18指定でございます。評判になっていたのは知っていましたが内容はほぼ知らずなぜかホラーだと思っていたので、バキバキの濡れ場に「あわわわわ」と慌てて音量を下げてしまいました。しかしこの作品、その「女性同士の激しい濡れ場」が作品テーマ的に大きな意味を持っているように思うのです。そのへんをちょっと書こうかなと。以下、がっつりネタバレしています!

映画は一部、二部、三部に分かれています。

一部は侍女のスッキ(珠子という日本人だと身分を偽っている詐欺師集団の一人)目線。お嬢さんの財産を狙う「藤原伯爵」の手先ですが、お嬢さんに惚れてしまい心が揺らぎます。

二部はお嬢さんの秀子目線。一部ではスッキと伯爵の2人に騙されていましたが、実は当初から秀子は伯爵と組んでいて、スッキを騙していたんですよ…とここで明かされます。そして秀子もやはりスッキに心を寄せてしまう。

三部は「その後」です。結局惚れ合った二人の女はお金を持って逃げることに成功します。気の毒なのが伯爵で、彼も秀子に惚れていたので裏切られた上自死することになります。

「このミス」1位を獲得したサラ・ウォーターズの小説『荊の城』を大幅に脚色したとのこと、ミステリーとして面白く145分の長さもあっという間でした。さて問題はなぜこのストーリーに「女性同士のかなり濃ゆい濡れ場」が意味を持つのかというところです。

搾取された者の復讐劇

お嬢さま=秀子は希少本コレクターの大富豪の叔父に育てられ、いずれその叔父と結婚しなくてはならない運命です。この叔父(上月教明)がコレクションしている本というのが春画付きの官能小説。ん〜いや、かなり直接的な表現が出てくるので官能小説というよりまんま「エロ本」です。そのエロい本を美しい女(秀子)に朗読させ、変態紳士たちに聞かせるというサロンを夜な夜な開催しています。秀子は書いてあることの意味すらわからない子供のころから厳しく「官能朗読家」として躾けられます。彼女は屋敷に閉じ込められ、性的に搾取され虐待されてきたのです。先代としてこの役をやらされた美しい叔母は庭の桜の木にロープをかけて亡くなっています。性の知識で頭はいっぱい。でも相手はいない。婚約者は年老いたエロ本マニアの叔父というなかなかの地獄っぷりです。(ちなみにこの叔父は女性の身体に触れることには興味はないようです)

そんな彼女が出会ったのがまた別の意味で搾取され続けて育った貧しい娘スッキ。秀子がされてきた虐待を知ったスッキは怒り「秘密の朗読サロン」の高価な春画本をビリビリにして部屋中を破壊します。秀子はそのスッキを「私を破壊しにきた救世主」と表現するのです。

そして搾取され続けた2人の女の復讐は「やられたらやりかえす」とばかりに男を搾取し返すのではなく、自分の快楽を開放するほうにいきました。同性相手の激しいセックスシーンは、搾取されたことすら糧にする秀子のしなやかな強さを表現するために必要だったのだと思います。何度かある官能的なシーンですが、最後の濡れ場にはこのテーマを象徴するようなものが出てきます。それが何なのかぜひ確かめて見てください。(ただし18歳以上に限る!)

現実には性的に搾取された子供は自身を傷つける方向に向かうことが多いことでしょう。秀子も自殺未遂をしますがスッキに涙ながらに止められます。彼女のようなパートナーを得られてお嬢さん本当に良かったね…。

最後、秀子に惚れてしまった伯爵の意地の通し方も女性の戦い方とは違う「男のプライド」を感じさせて良かったです。

あとパク・ヌチャク監督、伊藤計劃の「虐殺器官」をハリウッドで撮るとかいう話があったらしいのですが、進んでるのかしら?「オールドボーイ」のバイオレンスシーンがサイコーにカッコ良かったんでぜひお願いします!

人生変わった度

★★★

やられたらやり返すだけが復讐じゃない

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↑今気づきましたが、ポスターにもなっているこちらのビジュアル、男どもに頭や首根っこを押さえられながらもしっかりと手を握り合う2人の女…ってネタバレしとるやんけ。

 

↓原作では舞台は19世紀ロンドンらしいですぜ

「ベネデッタ」も女性同士の過激なラブシーンが意味深い一本です。こちらのレビューもどうぞ。(こっちもR18+です!)

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