映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【汚れた血】デヴィッド・ボウイで走るシーンが忘れられない!80年代の傑作

基本情報

公開年:1988年

監督:レオス・カラックス

キャスト:アレックス(ドニ・ラヴァン) アンナ(ジュリエット・ビノシュ) リーズ(ジュリー・デルピー) マルク(ミシェル・ピッコリ)

上映時間:125分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

あと数年で21世紀を迎えようというパリ。彗星が接近しているため、夜でもおそろしく暑い。そして人々は愛のないセックスによって感染する新しい病気「STBO」の蔓延におそれおののいていた。

天涯孤独となったアレックス(ドニ・ラヴァン)は、どこか別の場所で、新しい人生を送りたいと思っている。ガールフレンドのリーズ(ジュリー・デルビー)と過ごす、愛のひとときも彼には無意味で、ただここから抜け出せればよかった。

中年の男マルク(ミシェル・ピコリ)と美少女アンナ(ジュリエット・ビノシュ)に誘われアレックスは脱出のための金欲しさに、犯罪に手を貸す。マルクは亡き父の友人で、アンナはマルクの情婦。いつしか、アレックスはアンナを愛するようになるのだが…。

感動し過ぎて2度と観たくない

この世には感動しすぎてもう2度と観たくないという映画が存在します。(ワタシだけ?!)もう一度今観たら冷静に分析する自分が出てきそうで観られない。10代〜20代前半に観た中にそんな映画が何本かあります。「汚れた血」もその一つ。今は無き渋谷シネマライズに一人で出かけ、あまりの衝撃に呆然とし、どうやって帰ったか覚えていないのです。陰影の中に浮かぶビノシュの青いガウンや赤いカーディガン、デビッド・ボウイの「モダン・ラブ」が流れる疾走シーン、蜘蛛の巣のようなパラシュート、そしてコマ落としのラストシーン。どのショットも美しく35年経った今も鮮やかに脳裏に浮かびます。

…なんて言っといて何ですけど、なにしろ四半世紀以上前に観て以来一度も観ていないので細部がうろ覚えなんすわ。

そんなわけで今回はインタビューをほとんど受けず映画ファンの間では神格化されているカラックス監督について、発掘したパンフレットや検索した記事から見つけた秘話を少々。

レオス・カラックス秘話

「新たなヌーヴェル・バーグ」くくりを拒否

同時期に「ディーバ」(ジャン=ジャック・ベネックス)、「サブウェイ」(リュック・ベッソン)が登場したことで「新たなヌーヴェル・バーグの一員」とされたカラックスですが、パンフレットの中にこんな言葉が載っていました。「ヌーヴェル・バーグは一つの運動体で仲間意識で結ばれていました。でも自分には横の繋がりを持てる同世代の監督はいません。良い映画を撮ることにしか興味がないんです。」

まあ、平たくいえば「群れるつもりねえんで一括りにすんな」ということでしょうか。実際ベネックスは15歳も年上だし、ベッソンとは2歳差ですがその後の彼の作品を見ると…まあ、うん、方向性違いますわな。ベッソンとの違いを当時すでに勘づいていたとしたらなかなかやりますね…。

製作費を恋人ジュリエットに稼いでもらった!?

そしてもう一つ、面白い記事を見つけました。ユーロスペース代表の堀越謙三さんが日経新聞のインタビューに答えたもの。ユーロスペースは上映にとどまらず配給や製作も手掛け、カラックスやイランのアッバス・キアロスタミら世界の鬼才も黒子として支えてきたのだとか。(知らなかった!!)

堀越さん、「親子みたいな関係」と言うカラックスのことを「わがままな監督です」とズバリ。「汚れた血」も製作費が1億円近くオーバーしたとパンフレットにもあり、それが「売り」にもなっていましたが、次作の「ポンヌフの恋人」はさらに製作費が嵩んで撮影は何度も中断。恋人だったジュリエット・ビノシュと暮らしていたけど「彼女は他の映画に出させない」というので稼ぐ手段がない。カラックスが堀越さんに「日本でCMの仕事はないか」と頼んだ結果、化粧品のCMにビノシュが出演することになったのだとか。

(あまり記憶にないけどどうやらイオナのこれらしい)

www.youtube.com

書いてて思いましたがこれらのエピソード、35年前だからカッコ良かったのであって今の感覚だとちょっと古く感じません?!改めて彼は当時の「時代の空気」をうまく纏う才能のあった人だったんだなと。

さて、ワタシはこのあと続けて「ボーイ・ミーツ・ガール」「ポンヌフの恋人」を観ていたく感動し、次回作を今か今かと待ち続けたましたが一向に届かず、ポンヌフから8年後ようやく「ポーラX」が公開するという頃にはすでに興味を失っていました。

なんというかワタシの中の「カラックスの季節」が過ぎてしまったような気がするんです。その後の作品は観ていませんが完璧主義の監督が長い年月をかけて撮っているのですからきっとどれも良い作品でしょう。またいつかカラックスの季節の風が吹いたら観たいし、きっとそれを待っていてくれる作品群だと期待しています。(勝手でごめんね〜)

人生変わった度

★★★★★★★★★★

「美しさ」とは暴力的なまでの衝撃

Amazonプライムビデオでは現在配信していないようです。他、観られるところは…すまぬ自力で探してくだされ…(あとポンヌフの恋人も字幕版吹き替え版共になし)

 

いつか観る予定のカラックス作品

TOKYO!