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【グエムル-漢江の怪物】ネタバレ感想と考察/グエちゃんをあえて可愛くした理由とは?!

 

不穏度

10(100を満点として)

キモ可愛いグエちゃんが大暴れ!

基本情報

公開年:2006年

監督:ポン・ジュノ

脚本:ポン・ジュノ

キャスト:ソン・ガンホ(パク・カンドゥ)ピョン・ヒボン(パク・ヒボン)パク・ヘイル(パク・ナミル)ペ・ドゥナ(パク・ナムジュ)コ・アソン(パク・ヒョンソ)

上映時間:120分

あらすじ

<以下公式サイトより引用>

ソウルの中心を南北に分けて流れる雄大な河、漢江(ハンガン)。休日を、河岸でくつろいで過ごす人々が集まっていたある日、突然正体不明の巨大怪物<グエムル>が現れた!河川敷の売店で店番をしていたカンドゥの目の前で、次々と人が襲われていく。気付いた時には遅かった!カンドゥの愛娘、中学生のヒョンソがグエムルにさらわれたのだ!さらに、カンドゥの父ヒボン、弟ナミル、妹ナムジュのパク一家4人は、グエムルが保有するウィルスに感染していると疑われ政府に隔離されてしまう。しかし、カンドゥは携帯電話にヒョンソからの着信を受け、家族と共に病院を脱出、漢江へと向かう。果たして彼らはヒョンソを救えるのか?そしてグエムルを倒すことはできるのか!?

評価

「殺人の追憶」でハマったポン・ジュノ監督の作品ということで、公開当時観に行ったんですよ。前売りを買えばグエムルのフィギュアをもらえると後で知って、悔しかったな〜。当時も面白く観た記憶がありますが、今回改めてアマプラで吹替版で観たんですよ。そしたらですね、記憶以上にコメディ要素が強く、ずっと笑いが止まりませんでした!

怪物が主役なんで「不穏映画」の中に入れましたが、不穏要素少ないです。怪物自体もキモチワルイけどカワイイ。では以下、公開から18年後に再び鑑賞しての感想です〜(注!ネタバレありです!)

感想

Googleで「グエムル」と叩くとはじめに出てくるサジェストキーワードが「ひどい」なんすよ。どうやら一部の鑑賞者にはB級作品とされているようです。おそらく怪物=グエムルの造形がいただけないのでしょう。ワタシも初めて全貌を観た時「うなぎいぬ」を連想してしまいましたわ。あんまり凶暴に見えないんですよね。小さいし。でもこの造形もまた意味のあるものでして。

お話の骨子は「ゴジラ」に似ています。ソウル市民の大切な河、漢江(ハンガン)に在韓米軍が有害物質を流す。その影響で異形の生き物が水中で人知れず育ちます。その生き物、グエムルがある日、市民を襲いに上陸。最後に市民(主人公たち一家)がグエムルを退治して終わり。

視点は漢江の川べりで売店を営む一家。一家といってもその構成は変則的で、ジイさんと3人の子供(息子2、娘1)と、その息子の中学生の娘の5人。「殺人の追憶」で刑事役だった韓国の名優ソン・ガンホと、その刑事に追い詰められる美少年だったパク・ヘイルがまさかの兄弟役。妹役のぺ・ドゥナも「ほえる犬は噛まない」でポン・ジュノ監督ファンにはお馴染みです。

この一家、とくにソン・ガンホが本当にしょうもない。店番中に居眠りし、お客に出す炙りスルメのゲソを一本がめる。奥さんに逃げられシングルファーザーとして娘を育てているものの、娘のほうがよほどしっかりしています。

こういう描写をかなりコメディタッチで描き、あはは…と笑ったと思ったら突然の悲劇。娘がグエムルにさらわれるんです。(このパニックシーンはとても良き!)亡くなったと悲しんでいたら電話が来る。娘はまだグエムルの巣で生きていたのです。ここから、一家を「グエムルが持つ未知のウイルスに感染しているはず」と監視下におこうとする当局と、それを掻い潜って娘を助けに行こうとする一家との攻防戦が始まる。と、書くとシリアスなようですが、一家は皆ポンコツなのでやることなすこと笑えるんです。

考察・なぜコメディなのか?

さて、「ゴジラ」が(当時観た人からしたら)恐怖映画だったのに対し、コメディと言ってもいいくらい笑える本作。「どうしてここまでコメディに寄せたのか?」と考え込んでしまいます。テーマ自体はとてもシリアス。モデルとなったのは2000年に在韓米軍が大量のホルムアルデヒドを漢江に流出させたという実際の事件。日本とは事情は異なるでしょうが、米軍基地に対して良い思いを持っていない人はかの国にも多いことでしょう。しかし監督はこの作品を社会風刺映画と捉えられたくなかったのではないでしょうか。

ここでもう一度グエムルの造形に話を戻します。最後は退治されるのですが、火炙りになるその姿に観ている方は決して「やった!怪物を倒した!」とはなりません。キモいけど可愛いあの造形ですから「なんか可哀想…」という気になるのです。米軍憎しと言えど、そこにいるのは人間です。あのキモ可愛い形の中に、一方的に善悪を決めつけることへの抵抗が込められているような気がします。

このあたりにポン・ジュノ監督の懐の深さを感じるのですよね。あまりに分かりやすく格差を描いた「パラサイト」よりも怪獣映画のこっちのほうが作品としては深いんじゃないかな〜なんて思います。

そして来年は「ミッキー17」が公開とのこと。しかもワタシの好きな制作会社「プランB」が噛んでいるらしいのでこちらも楽しみ!トレーラー観るとなかなかにエグそうな内容です。(下に貼っておきますね〜)

「グエムル-漢江の怪物」はアマプラで観られます。

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www.youtube.com