
基本情報
公開年:2025年
監督&脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
キャスト:レオナルド・ディカプリオ(ボブ)ショーン・ペン(ロック・ジョー)ベニチオ・デル・トロ(センセイ)タヤナ・テイラー(ペルフィディア)チェイス・インフィニティ(ウィラ)
上映時間:162分
あらすじ
<公式サイトより引用>
かつては世を騒がせた冴えない革命家のボブ(ディカプリオ)はとある理由から大切なひとり娘の命を狙われ、次から次へと迫る刺客たちとの戦いに身を投じていく。
無慈悲な軍人“ロックジョー”(ペン)が異常な執着で娘を狙う本当の目的とは?
空手道場の“センセイ”(デル・トロ)はボブの味方なのか?
地の果てまで追いかけられる、ボブと娘の運命とは?!
評価
すんごい良かったです!大して本数を観ていないワタシが言うのも何ですが、配信も含めて今年観た映画の中で一番良かったです。同じポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督作品「マグノリア」を観た時の、胸の奥をギューっと掴まれるようなあの感動を思い出しました。PTA最高傑作の呼び名も伊達ではないと思います。
涙が出るというのも違うどうにも抑えきれない感情がエンドロールが始まった瞬間湧き上がってきて思わず両手で顔を覆ってしまったのですが、一つ空席を挟んだ隣の席の方もまったく同じ動作をしていました。
162分という長さにも関わらず、退屈どころが一切ないというのも凄い。
言葉でうまく説明できる自信はありませんが、どこにそんなに胸を打たれたのか、以下ネタバレなるべく避けての感想です〜。
感想
始まりは1980年代(確か84年だったように思います)。パット(ディカプリオ)とペルフィディア(タヤナ・テイラー)ら革命グループ「フレンチ75」は移民収容所から移民を救出する活動をしています。パットは爆弾担当。色気たっぷりにライフルを振り回すペルフィディアと恋に落ち、まさに「恋と革命」の日々を過ごします。しかしある時しくじったペルフィディアが逮捕され仲間を売ったことから全員が10年以上にわたる潜伏生活を強いられることになる。
パットは「ボブ」と名前を変え、ペルフィディアが残していった娘ウィラを育てます。
PTA作品がいつもそうなのかは分かりませんが、この映画、場面転換時のカット冒頭が常に素晴らしいのです。それまでと雰囲気の異なる音楽がカットの頭と同時に始まり、リズム感を変えることで時間と場所のワープを体感させてくれるのも良い。
80年代時代のラストシーンはカゴに入った赤ちゃんを助手席に乗せたディカプリオが、すんでのところで追手を交わして逃げるというもの。不安げなディカプリオの顔と、暗がりの中で透き通った目をぱっちりと開けた赤ちゃんの無垢な顔が映ります。
そして次のカット。「16年後」のテロップが入り、成長した娘ウィラのバストショットが映される。利発そうな瞳は赤ちゃんの時と同じ。流れるのはメロウだけどやりすぎない音楽です。
もうこれだけで泣きそうになるんですよ。この数カットだけで「男手ひとつで苦労しながら、でも立派に娘を育てたんだな。」って思わせるんです。よく映画は時間の芸術と言いますが、繋ぎ方一つで映っていない時間を想像させることも出来るんですよね。
さて、その後はディカプリオとウィラの生活ぶりが描かれ、怒涛の逃走劇が始まります。父娘はダメな親父としっかりものの娘というコンビ。昼間からビールとマリファナを嗜むディカプリオに革命の闘士だった頃の面影はまったくありません。
彼らを追ってくるのが警部のショーン・ペン。歳をとりすぎな気もしますが、狂気が歩いているようなヒリヒリ感を出せるのはこの人しかいませんわな。
なんやかんやあって最後のほうのカーチェイスも面白い。カーチェイスと言っても3台の車が高低差のある荒野の一本道を疾走しているだけなんですが。低い位置にカメラを置いたアングルはジェットコースター気分で楽しめます。撮り尽くされたと思われるカーチェイスシーンもカメラの置き場所を変えればこんなに新しくて面白いんだー!とこんなところでもちょっと感動。
そして最後。80年代に過激派フレンチ75がやった行為は決して褒められたものではありませんが、動機は「世界を良くしたい」という真っ直ぐな気持ちでした。その美しき魂が次の世代に引き継がれたことがわかり、ハッとさせられたところで終わります。
同作はコメディであり、アクションものであり、親子愛や移民問題をテーマにしたジャンルレスな作品ですが、その全てを包む大きな存在を最後の最後に感じるんですよね。この瞬間に胸の奥を締め付けられるような感動を覚えるのです。なんだろう、映画の魔法としか言いようがありません。思い出すだけで胸がいっぱいになりますよ…。
どんな話か分かりにくいし、タイトルは和訳されてないしで躊躇している方も多いと思いますが、ぜひ映画館の暗がりに身を沈めてこの映画を体験して欲しいです。ディカプリオをはじめ、役者たちもみんなとても良いし。
ちなみに「ワン・バトル・アフター・アナザー」とは「バトルに継ぐバトル」みたいな意味だそう。より良い世界を作るための闘争は終わらないというわけですね。
公式サイト貼っておきますね!
PTA作品「リコリス・ピザ」レビュー。こじんまりとしたとても可愛い映画です。こちらも役者さんみんな素晴らしい!主役のアラナ・ハイムは今作にも出ています。
もう一度観てレビュー書きたいなと思っている「マグノリア」。「大きなものに包まれる」感じが今作と似ています。どこかスピリチュアルっぽいんですよね。この感じはどうにも言語化しずらいです。映画なんだから当たり前ですが。ものすごく感動します。
