不穏度
50(100を満点として)
宇宙版地獄の黙示録
基本情報
監督・脚本・製作:ジェームズ・グレイ
公開年:2019年
キャスト:ブラッド・ピット, トミー・リー・ジョーンズ, ルース・ネッガ, リヴ・タイラー, ドナルド・サザーランド
上映時間:123分
あらすじ
<以下「アド・アストラ」公式サイトより引用>
宇宙に消えた父の<謎>を解かなければ、人類は滅びる―― 。ブラッド・ピット主演で贈る衝撃のスペース・アクション超大作! 近い未来。ロイは地球外知的生命体の探求に人生を捧げた父を見て育ち、自身も同じ道を選ぶ。しかし、その父は探索に旅立ってから16年後、地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となってしまう。その後、エリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実がもたらされる。さらに、父が太陽系を滅ぼしかねない通称“リマ計画”に関わっているという。父の謎を追いかけて、ロイも宇宙へと旅立つが…。
基本的に「面白かった!」「良い作品だと思う!」という映画を取り上げていますが、正直言ってこの作品「アド・アストラ」はあまりおすすめできません。なぜかと言えば実に珍妙な作品だからです。良い作品か?と聞かれれば「う〜ん‥そうでもない」。面白いかと聞かれれば「面白くはない。けど面白くなくはない。面白くなくなくなくない。」困った。しかしもっと困ったことには一昨日の夜Netflixで見たのですが、あれやこれやと考えてしまい丸2日この映画のことが頭から離れないんですよ!ここで書くべき「衝撃的な映画」と言ってもいいのではないだろうか…ってなことでどうにもひっかかる珍妙な部分をネタバレありありで書いてみます。
5つの珍妙な点
キャスティング、高齢すぎません?
主人公のプラピ、おそらく設定は45歳くらいなんだろうけどどう見てもOver50歳に見える。お父さんのトミー・リー・ジョーンズは「16年前の映像」ってのがもうOver70に見える。設定が今から100年後の世界なので、今イメージする、「宇宙って健康な若い人しか行けない過酷な場所」ではもはやないと考えて無理矢理納得。
良すぎる!月でのカーチェイス
この時代、月はかつての北アメリカ大陸の西部と同じ。無法者が我先に土地を奪おうとする危険な場所です。ここを通過するのが地球から月、火星を経て海王星に向かう旅をするブラピの最初の試練となります。軍が移動に護衛をつけてくれますが賊に襲われ、カーチェイス。このシーン、カーチェイスなのに静謐ですごく良いんですよ。それで最後、クレーターのようなところに落っこちて、さてどうなる?!みたいなところであっさり次に行くんですよね。良い感じなのでここはもう少し見たかったなあ。月の裏側に入る時も、まるで地表に線を引いたように突然暗闇がはじまっていて、その暗さも怖くてすごくよかったのになあ。
恐怖の宇宙猿の意味は?
月を経由してお次は火星に向かうのですが、プラピが乗客となった宇宙船「ケフェウス」は救護信号を拾ったためノルウェーの船を助けに行きます。そこに何がいたかと言うと実験用の猿(ゴリラ??)。猿が暴れて乗員全員を殺害していたのです。この猿が宇宙で何かしら変質した猿なのかよく分かりませんが、猿を出すってのはアレですよね、2001年宇宙の旅のオマージュってことですよね。あの時の猿がここに連れてこられたのか、はたまた人間も宇宙の知的生命体からしたら猿だよね、ってことなのか?凶暴な猿、唐突に出てきて唐突に退場。な、なんなん…??という気持ちに。
船長ダメすぎ問題
肝心な時にパニクってブラピに助けてもらうケフェウスの船長。その後もやらかして自分含め全員死亡させてしまいます(これはブラピも悪いけど)。ダメすぎやしませんか?ここでも現代だと「宇宙って優秀な人しか行けない」と思うけど、100年後は凡人でも行ける世界なんだな、と無理矢理納得。
地獄の黙示録…なのか?!
実は吹き替えで見たのですが、セリフの中に「闇の奥がどうの」「お父さんは闇の奥になんちゃらかんちゃら」と2〜3回「闇の奥」というワードが出てきました。これまんま「地獄の黙示録」の原作、コンラッドの「闇の奥」のことかと。
宇宙版地獄の黙示録を目指したんだなということは分かります。となると最後に出てくるブラピのお父さんがカーツ大佐ってことになりますが、それにしては狂人っぽさにいまいち欠ける。30年間海王星付近で地球外生命体を探していたそうだが積み上げたものが見えない。マッドサイエンティストっぽさもない。いっそ宇宙船内を「俺の楽園」みたいにしてたら分かりやすかったのでは…?あと、そもそものサージ電流の話?なんだかわからなかったけどもういいや。
などと悪口めいたことを書きましたが、月、火星、そして木星を通り過ぎる様子や、海王星の輪っかなど宇宙の描写はとても凄いし、前述したように月でのカーチェイスなんてとても良くて、だから評価に困ってしまいます。倍速で映画を見るような人には勧めないけど、変テコな映画も見たいんじゃ!!という映画ファンの方にはおすすめです。
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