基本情報
公開年:2021年
監督:岨手由貴子
キャスト:門脇麦(榛原華子) 水原希子(時岡美紀)高良健吾(青木幸一郎)石橋静河(相良逸子) 山下リオ(平田里英)
上映時間:124分
あらすじ
<以下、公式サイトより引用>
東京に生まれ、箱入り娘として何不自由なく成長し、「結婚=幸せ」と信じて疑わない華子。20代後半になり、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。あらゆる手立てを使い、お相手探しに奔走した結果、ハンサムで良家の生まれである弁護士・幸一郎と出会う。幸一郎との結婚が決まり、順風満帆に思えたのだが…。一方、東京で働く美紀は富山生まれ。猛勉強の末に名門大学に入学し上京したが、学費が続かず、夜の世界で働くも中退。仕事にやりがいを感じているわけでもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。幸一郎との大学の同期生であったことで、同じ東京で暮らしながら、別世界に生きる華子と出会うことになる。2人の人生が交錯した時、それぞれに思いもよらない世界が拓けていく―。
感想と考察
格差とハイヤーと自転車と
3月は観たい映画もたくさんあるし、ここに書きたい映画もまだまだたくさんあるのですが、労働に忙しくなかなか時間が取れません。くそう。働かないと食べていけないのは社会の格差のせいだわ…。ああ、この下流から抜け出したい…。
というわけで日本の見えざる格差を描いた「あのこは貴族」です。
「ジョーカー」、2020年のアカデミー賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」、そして現在公開中の「逆転のトライアングル」もそうらしいですが、ここんとこ格差をテーマにした映画が流行ってますね。って「流行ってる」とかいう軽い言い方していいのかわかりませんが。
理由はいくつかあると思いますが、映画の持つカウンターカルチャー的な側面というか、問題だらけの格差社会に一言物申したいという映画人が多いということが一つ。
それから実はこれが大きんじゃないかと思うんですが、格差って映像として描きやすいんですよね。「画になる」。
まず階級の上下は住んでいる地区の環境、服装、就いている仕事などで言葉で説明せずとも映像だけで簡単に表現することができます。その上「象徴的な画」も作り易い。「パラサイト」では階段が格差の象徴として使われていました。貧乏一家が住んでいるのは階段を降りた半地下。豪雨の中、崖のコンクリにへばりつくように続く長い階段を延々と降りて自宅に逃げるシーンは実に象徴的でした。対する金持ち一家は坂を登った丘の上にありましたね。下に住む貧民が豪雨の水害で苦しむ中、上流の金持ちはパーティーです。
では「あのこは貴族」で使われた格差の象徴は何か?移動手段です。
東京に代々続くお金持ちの家に生まれた華子(門脇麦)は常に車の後部座席に座っています。運転手さんは品がよさそうです。ハイヤーですね。
一方、富山の田舎から出てきて学費のためにキャバクラでバイトをしていた美紀(水原希子)は、、あれ?前半はなんだっけ?電車に乗ってるシーンありましたっけ??(すみません、うろおぼえ)。まあともかく、車ではない。
苦労人の美紀はやがて起業という夢を持ち、生き生きと輝き始めます。ここらあたりから都内の移動に自転車を使い始めます。
中盤以降にある、2人が偶然再会する場面が面白い。
いつものように車の後部座席に座っている華子。その車が美紀の自転車を追い抜きます。美紀に気づいた華子はハイヤーから降ります。そのまま美紀の家におじゃま。たわいない話をしたあと、華子はどうやって帰ったか?
なんと徒歩ですよ、徒歩。
は、華ちゃんが歩いた〜!!(「クララが立った〜」くらいのテンションでお願いします)
偶然おきた美紀との再会が華子の人生を大きく変えたのがわかります。ここから華子は文字通り、自分自身の人生を歩みはじめます。
そんでお義母さまに平手打ちされたりといろいろあった末、ラスト、華子は友人を乗せて自分で車を運転しています。
は、華ちゃんが自分で運転してる〜!!
そう、この作品は格差を描きつつも悲劇的な結果ににせず皮肉なコメディにもせず、生まれた場所からの制約を乗り越えていく女性たちを描いています。華子と美紀の関係はもちろん、それぞれの友人との関係もとても良く爽やかな感動に包まれます。
この他にも舞台となった慶應のこと、田舎のリアルなど書きたいことはたくさんあるのですが、、おかしいな、、確かパソコンの前に座ったのは仕事するためだったな…。下層階級の人間はまた労働に戻りますね、ちゃお。
「あのこは貴族」はAmazonプライムビデオで観られます〜
原作、ワタシは未読ですが良いらしいです。映画では悪いヤツというより可哀想な男、幸一郎ですが、原作ではかなり嫌な男だとか。