映画ごときで人生は変わらない 

不穏映画が大好物のアラフィフ女 不穏度を数値化しています 感想と考察が入り混じる映画レビュー すべて個人の感想です

【わたしは最悪。】感想(ネタバレあり)/主役なのに気付かないイタイ女の物語

 

わたしは最悪。 [Blu-ray]

わたしは最悪。 [Blu-ray]

  • レナーテ・レインスヴェ
Amazon

基本情報

公開年:2022年

監督:ヨアキム・トリアー

脚本:エスキル・フォクト ヨアキム・トリアー

キャスト:レナーテ・レインスヴェ(ユリア)アンデルシュ・ダニエルセン・リー(アクセル)ハーバート・ノードラム(アイヴィン)

上映時間:128分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

学生時代は成績優秀で、アート系の才能や文才もあるのに、「これしかない!」という決定的な道が見つからず、いまだ人生の脇役のような気分のユリヤ。そんな彼女にグラフィックノベル作家として成功した年上の恋人アクセルは、妻や母といったポジションをすすめてくる。ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィンに出会う。新たな恋の勢いに乗って、ユリヤは今度こそ自分の人生の主役の座をつかもうとするのだが──。

評価

正直、エンドロールが流れている間は「なんかよく分からんかったな…」程度でしたが、後からじわじわとこみ上げるものがあり、今ネット上のレビューを読み漁っています。

簡単に言えば「考えさせられる映画」かつ「人の感想を知りたくなる映画」です。つまりは良い映画ということ。

映像作品として面白く観るところが多いと思いますが、それ以上に観る人の性別や年齢、これまでの生き方によってだいぶ捉え方が異なるってところが面白い作品なのかと。

では以下、感想です〜。(ネタバレあり!)

感想

冒頭、ナレーションで「この映画は序章と最終章、それ以外の12の章からなる」と提示されます。つまりは全14章。かなり細かく区切られています。

続いてユリヤの怒涛の20代ダイジェスト。成績が良いので医学部に行ったが興味が持てず、心理学に鞍替え。心理学の教授と寝るもすぐに飽きて「写真家になる」と言い出す。アート系の仲間とつるむようになり、その中の一人コミック作家のアクセルと恋仲になります。

まさに「自分探しの旅の途中」。

20代を通過した人なら「痛てててて…」と過去の古傷を抉られることでしょう。

ユリヤの不幸は、中途半端に頭が良く、何をやっても上の下あたりにはいけること。この後出てきますが、思いつきで文章を書いてネットに挙げればバズらせることは出来る。じゃあ、コラムニストになりたいかと言えばそうでもない。けれどただの書店員で終わりたくもない。

何者かになりたいのになれない。ああイライラする。

あげくの果てに彼氏に当たる。ついでに浮気をする。その勢いで男を乗り換えたりしていたら30歳になってしまった…。

さらに悪いことにユリヤは美人です。手に入れたい男は手に入る。果たしてそこまで相手を切望しているのか?という自覚もないままに。

まさに「勝者の地獄」です。

それと、少し前ならこういった「社会的に成功したい、しなくては」という焦燥感って男性のものでしたが、今は女性も同じ板に立つようになりました。ユリヤも有名アーティストの「若く美しい恋人」でいるだけでは飽き足らないのです。男女平等に同じ悩みを持つようになりましたが、それでも「出産」は女だけのもの。映画の中には何度も「子供を作るかどうか?」という局面が出てきて、彼女を悩ませます。

公開当時、この作品が話題を呼んだのはそのあたりのリアルさですよね。自分探しの悩みは男女ともにあれど、女の場合もう一つ乗っかってくる。彼女は果たしてどんな選択をするのか?というのが後半の興味のひっぱりどころです。

前半、40代中ばのアクセルと同棲していたユリヤですが「子供が欲しい」という彼の要求にノーを突きつけ、後半は年齢の近いアイヴィンと同棲。しかし終盤意図せぬ妊娠が発覚。どうしよう…と思っていたところ、元彼のアクセルが癌で余命いくばくもないことを知る。アクセルを見舞い、話をするうちにユリヤの心は揺らいでいく。

しかし彼女は流産(そもそも妊娠してなかったのかな?よくわかりませんが)。

最終章では別れたアイヴィンが別の女性と子供を持った姿を見て微笑むユリヤ、カメラマンとして仕事をするユリヤの様子が描かれます。ようやく自分探しの旅を終えたってことでしょうか?

ユリヤが恋するアイヴィンに会いに行くシークエンスが美しい。2人以外の世界が全て止まって見えるのです。恋する人間の心理をまんま映像化したもの。

「自分は人生の脇役みたい」と言うユリヤも、この時だけは主役です。って言うかこのシーンを観ると、主役か脇役かなんて自分の主観に過ぎないじゃん、と思いますよ。それを気づかせてくれる演出であり、逆に気づかない彼女を笑う意地悪なシーンにも見えます。

それと、アクセルが若くして死ぬのはなんか微妙。ユリヤに気付きを得させるために物語上殺された感じが強いんですよ。

よく考えるとすごいブラックな作品にも見えるのが面白いんです。

ユリヤ、あんたは人生でもこの映画の中でもずっと主役やん、それに気づいてないの自分だけやん、って。そう、ユリヤはイタイんですよ。頭いいのに自分のことはわかっていない。彼女が選ぶ道がカメラマンというのも象徴的。見るのが仕事なのに自分のことは見えていない。ま、ワタシもアナタもみんなそうなんだろうけどね。

では、最後に子なしの中年女としてユリヤの未来を占ってみると…?

若さと美しさを失くした頃、一度後悔はするでしょう。でも大したことじゃありません。大事なのは「自分で選択した」という事実。他責の念がないあなたはきっとそれなりに楽しい人生を送っていると思いますよ!彼女の何年後かの姿、見たいです!

「わたしは最悪。」は今すぐ観たい方はアマプラで。R15+です。エッチなシーンがたくさんあるのでご家族での鑑賞はお勧めしません!

わたしは最悪。(字幕版)

わたしは最悪。(字幕版)

  • レナーテ・レインスヴェ
Amazon

アマゾンプライムは30日間無料体験できます。初めての方はこちらからお申し込みを!