基本情報
公開年:2024年
監督:滝本憲吾
脚本:足立紳 山口智之
キャスト:岡山天音(ツチヤタカユキ)仲野太賀(西寺)菅田将暉(ピンク)松本穂香(ミカコ)片岡礼子(おかん)
上映時間:117分
あらすじ
<公式サイトより引用>
大阪。何をするにも不器用で人間関係も不得意な16歳のツチヤタカユキの生きがいは、「レジェンド」になるためにテレビの大喜利番組にネタを投稿すること。狂ったように毎日ネタを考え続けて6年——。自作のネタ100本を携えて訪れたお笑い劇場で、その才能が認められ、念願叶って作家見習いになる。しかし、笑いだけを追求し、他者と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることに。
自暴自棄になりながらも笑いを諦め切れずに、ラジオ番組にネタを投稿する“ハガキ職人”として再起をかけると、次第に注目を集め、尊敬する芸人・西寺から声が掛かる。ツチヤは構成作家を目指し、上京を決意するが——。
評価
ツラい…あまりにツラくて途中で一時停止してしまいましたよ。「つまらない」という理由で途中離脱することはありますが、「観ていてあまりにツラい」という理由で離脱しかけたのは初めて。そういう意味では特異な映画と言えましょう。だって主人公、お笑いの世界にいるのに全然笑わないどころかずっと辛そうな顔してるんですもの。こっちまでキツくなりますって。
でも気を取り直して最後まで観ると胸に響くものがあるというか。生きていくとはこういうことだな、と思ったりします。
ツチヤのキャラクターをどう捉えるかによって評価は分かれそうです。同じような状況で苦しんでいる若者にはお勧めですが、この手の部下を持ったことがある人はきっつ〜!!ってなるんじゃないかと。
では以下、ざっくり感想です〜。
感想
青春ものといえば昔はスポーツかバンドが定番でしたが、今は色々あって楽しいですね。モー娘。オタクとしての青春を描いた「あの頃。」なんかはいつかレビュー書こうと思っています。
さて、今作の青春は「お笑い」。舞台に立つ方ではなくネタを書く裏方のほう。原作はツチヤタカユキ氏。同作は氏の自伝的小説で、映画の中に出てくるお笑いコンビ「ベーコンズ」は、オードリーのこと。オードリーのオールナイトニッポンのハガキ職人としてファンの間では有名で、描かれるストーリーはかなり実話に近いらしい。
当時のオールナイトニッポンを文字起こししたサイトを読みましたが、若林氏(映画では仲野太賀)が語るツチヤのポンコツエピソードは実に面白いし愛すべき人物に思えます。
でもこれ、第三者が語っているからなんですよね。映画では語り手を挟まず、ダイレクトにツチヤに迫っています。こうなるとキツい。人間関係不得意なのは仕方ないとしても挨拶くらいはせいよ、とイライラ。あと、お笑いなら周囲の人を楽しくさせろや、とかね。異様なプライドを捨てないところもかなり厳しい。
映画では、外側から見た「不器用な天才」ではなく、こういった特性の人間だけが感じるヒリヒリ感を見せたかったのでしょう。一切笑わないツチヤの顔アップが多いことからも分かります。
ハガキ職人のツチヤは憧れの芸人寺西に呼ばれて上京、構成作家見習いになるのですが周囲に馴染めず大阪に逃げ帰ります。その時寺西が言うんです。「お前はここじゃないと生きられないぞ!」と。
確かにテレビやラジオのメディア業界はツチヤのような社会不適合者が生きられる唯一の場所だったように思います。似たような人、何人か顔浮かぶもの。でもそれは業界に余裕があった頃の話。お金がなくなると「変だけどおもろい」ヤツを雇う余裕はなくなるのです。こういう人、今はYouTuberとかIT関連のスタートアップ企業なんかにいるんだろうか?!2024年公開のこの作品がノスタルジーを持って語られるようになるのも間近なんだろうなあ。
さて、帰郷したツチヤは道頓堀に飛び込んで「一度死に」、再びペンを取ります。と言ってもこれまでと同じようにネタを書くだけなんですが。この映画、主人公が成長しないのが良いです。「おもろいことを考えたい」という気持ちがブレないので周囲の風景だけ変わって、また元に戻るだけ。そういう意味では青春映画とは言えないのかも知れません。
様々なアルバイトをする中で出来た友人「ピンク」を演じる菅田将暉が光っています。なんてこともない役ですが、さすがの存在感。こういう友人がいるならツチヤの人生だって悪くないじゃん、と思える。あと、オカンにちゃんと愛されてるのも良かったよね。
映画としては脇にこういった面白げな人がたくさんいるのに、主人公に寄りすぎちゃっててもったいないなあ、とは思いました。
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こちらはツチヤ氏の原作本。映画の中のツチヤはとても自分を客観視できるようには見えなかったので、苦労しながら書いたんだろうなあと勝手に想像。レビューは星4つ半。最後は泣きながら読んだ、という声があります。
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