基本情報
公開年:2025年
監督:吉村愛
脚本:金春智子
キャスト:沢城みゆき(オスカル)平野愛(マリー・アントワネット)豊永利行(アンドレ)加藤和樹(フェルゼン)
上映時間:113分
あらすじ
<以下公式サイトより引用>
将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット。オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ。容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。
彼らは栄華を誇る18世紀後半のフランス・ベルサイユで出会い、時代に翻弄されながらも、それぞれの運命を美しく生きる。
評価
2025年初頭に話題になっていた作品が早くもNetflixに入っていました。はじめ「エラくベタなもんを見始めてしまったな…」と思いましたが、うまく世界に入り込めれば楽しく、満足度の高い一本でした。(逆にザ・少女漫画の世界観に入れないとキツいかも…)声優さんが皆いいです。特に沢城みゆきさんのオスカル!ピッタリです!!
とはいえ、アニメ作品を取り上げる際に毎回書いてますけど、アニメ文化をあまり知らなくてですね…「なんか妙なんだけど、こういうもんなの?!」という箇所もいくつか。そのへん含めて、以下感想です〜。
感想
「ベルばら」、連載時にリアルタイムで読んではいませんが、当然のように女子はみんなストーリーを知っていて、世界史の授業でフランス革命が近づくとソワソワしだす…ワタシはそんな世代です。「なんとなく知っている」だけだったお話も、後に原作漫画を読み、激動の歴史の中に生きた人物たちの鮮やかな描写に「こんなスゴイ話を当時25歳くらいの人が描いたのかあ〜」と大変感動しました。
にしても文庫本5巻分の壮大なお話、どうやって2時間にまとめるんだろう?と思っていたら、すごく上手く脚色されていました。原作を知らない方も楽しめると思います。
まず登場人物を4人、つまりオスカルとアントワネット、アンドレ、フェルゼンに絞る。オープニングでこの4人の話ですよ、としっかり明示しているんです。
ちなみに原作は1755年から始まります。オスカル、アントワネット、フェルゼンが生まれた年。後に運命的な出会いをする3人が同じ年にヨーロッパの各国で生まれた、という劇的なオープニングです。アンドレがいませんが、実は彼が存在感を出してくるのは後半のほうなんですよね。前半はあくまでオスカルの「お付きの人」って感じ。
しかし映画版では後にオスカルの恋人となるアンドレも入れカルテットにすることで、原作に出てくる様々な他のエピソードをバッサリ落としても違和感のない作りになっています。
それからミュージカルみたいに歌が多く、歌詞の中でバババッとお話を進めたりもしている。このへんの処理も上手だなあと思いました。また声優さんたちが歌う歌がみんないいんですよね〜。ベタな感じからして宝塚版の歌なのかな?と思いましたがどうやらオリジナルみたいです。
それとおそらく今回の劇場版アニメのコンセプトだと思うのですが、絵柄と世界観が原作にガッツリ忠実です。昔の少女漫画ならではの二次元的な感じまでおんなじ。
話は飛びますが、先日NHKで放映していた「漫勉」。浦沢直樹氏が漫画家をゲストに読んで創作の秘密に迫る番組ですが、大友克洋先生が出ていた回がありまして。その時「大友さんは人物の正面顔を描いている。それは漫画表現としては画期的だった」みたいな話をしていたんです。正面顔を可能にしたのは実写的な鼻の描き方。それまでの作品の多くは鼻を「く」の形に描いている。ってことは真正面顔じゃないんですよね。常に斜め顔。
ベルばらも確かにその通りで、みんな鼻は「く」の形。今作のアニメ版でも「く」です。それから少女漫画の象徴とも言える、目の中の星。星だけじゃなくなんか白い球みたいなのがいくつもある。これも原作そのまま。さらに目を伏せた時、バッサバサのまつ毛を通してその白い球が見える。目力強すぎる!ここまでの表現は原作にもなかったように思います。
あと、顔が常に斜めなので原作には時々「身体と顔で向きが違う」みたいなカットがあったのですが、そんな違和感あるカットもそのまんまアニメ化していて、びっくりしました。それも込みで「原作の味」を生かしたかったのでしょう。それとも漫画原作のあるアニメってっこういうものなんでしょうか?!
さて、最後に。
当時「ベルばら」が大ヒットした理由は、女性たちがオスカルに自身を重ねたためでもあります。「男ならよかったのに」と男として育てられ、それなのに適齢期になると突然「結婚して子供を産め」と言われる。このダブルスタンダードは、多くの女性が直面していた、生きづらさの元凶でした。今の女の子たちはこの物語を読んでどう感じるのでしょうか?「面白いけど(そこの部分は)よくわかんない」ってなってるといいよね。
「ベルサイユのばら」はNetflixで観られます。アマプラにはまだ入っていないです(2025/5/4現在)
公式サイト貼っておきますね〜。
原作はこちら。一度は読んでおきたい、日本の少女漫画の金字塔です!