不穏度
55(100を満点として)
阿鼻叫喚とはこれのこと。
基本情報
公開年:2025年
監督&脚本:コラリー・ファルジャ
キャスト:デミ・ムーア (エリザベス・スパークル)マーガレット・クアリー(スー)
デニス・クエイド(ハーヴェイ)
上映時間:142分
あらすじ
<以下公式サイトより引用>
元トップ人気女優エリザベスは、50歳を超え、容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。
接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”。抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。
一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。
評価
ぐへえ〜!ヤバいものを観てしまった!!!
いえね、観る前は「女性は男性社会からいつまでも若さと美しさを強要させられます。そういった現代社会の病理を鋭く描いていますね〜」みたいな感想が出るんちゃうかなと思ってたんですよ。
ところがところがそんなお上品なもんではなくてですね、いやもちろんそういう側面もあるんですけど、ぐへっ!グロ!きもちわるっ!でも笑える!なんだこれ!とくに圧巻のクライマックス、なななんじゃこれ〜!!
…っていう、つまり強烈でとても面白かった!!ってことなんですわ。ちょっと何言ってるか分からないと思いますが、まあとにかく過激で鮮烈でグッタリ疲れる超面白いホラー&コメディです!
では以下、どの辺が面白かったか感想です〜(ネタバレなし!)
感想
冒頭は2つの目玉焼きを真上からとらえたシーン。続いてデミ・ムーア 演じる往年の美人女優エリザベス・スパークルのハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム(ハリウッドの通りにある、星型に名前が刻まれた歩道のモニュメント。よくテレビなんかに出てくるアレです)をこれまた真上からとらえた長いシークエンス。もうこの2つだけで「信頼に足る映画」だと分かります。エリザベスのこれまで、そしてここから描かれる「これから」が全て象徴されているのですから。
その後彼女が謎の再生医療「サブスタンス」に手を出すまでの展開も荒唐無稽なのにどんどん引き込まれていく。セリフは少ないけれど映像を見ているだけで彼女の心情まで分かります。いや〜、面白い!
特にいいな〜と思ったのが、エアロビの番組に出演しているエリザベスが降板させられることを知ってしまうシーン。女性トイレが清掃中だったので男性トイレに入る彼女。後から番組プロデューサー(男性)が入ってきて「あんなオバさんだから視聴率が取れないんだよ!若い女に差しかえろ!」と電話越しに怒鳴っているのを個室で聞いてしまう。これ、直接聞かなかったら、怪しげな再生医療に手を出すほど傷つくこともなかったはずですよね。テイよく降ろされるんだなと気づきつつも「長い間ありがとね〜」「こちらこそお世話になりました〜」で済んでいたのです。
でもこの決定的な言葉を聞いてしまったのは彼女がオバちゃんだからなんですよ。若い女性なら、女性トイレが清掃中だったからって男性トイレには入りません。オバちゃんだから平気で男性トイレに入る。オバちゃんならではの行動をしているのにオバちゃんと言われて傷つくこの自己矛盾、この後もずっとエリザベスにまとわりつきます。
さて、監督のコラリー・ファルジャは1976年生まれのフランス人女性。2025年現在48歳、エリザベスよりも少し年下って感じでしょうか。
さすがは女性監督だな〜と一番感心したのはお尻への執念。デミ・ムーアがオールヌードを披露しているのですが、このシーンのために頑張って「年相応感」を出してきたなという見事な弛み具合でした。とくにお尻の垂れ方は衝撃的!同じ初老女性として言いますけど、お尻ってびっくりするほど垂れるんですよ、ええ。おっぱいが垂れるのは知ってましたよ?でもお尻がこんなに垂れるなんて聞いてないよ!って思うわけです。何しろ自分では見えませんから。たまに鏡で覗き込んでがっかりしたり、同世代の友人の後ろ姿を見てびっくりしたりするわけです。
映画ではデミの垂れたお尻を見せておいて、その後スー(若返ったデミの分身)のプリケツを写す。執拗にアップで写るスーのプリケツ。これ「自分のケツが垂れてることを発見した時の絶望感」を知っている、女性ならではの目線ではないでしょうか。だってさ、男性監督だったらおっぱいにズームしてたんじゃない?なんて思うのですがどうでしょう?
…という感じでケツもおっぱいもたくさん出てくる同作はR15+。あと、たくさん出てくるといえば名作映画へのオマージュ。「2001年宇宙の旅」っぽい構図が出てくるな〜と思ったら最後に答え合わせがあります。他、「シャイニング」「キャリー」「遊星からの物体X」…ワタシが知らないだけで他にもたくさんありそう。映画好きな方はこれだけでも楽しめると思います。
と、とりとめもなく書きましたが、まあとにかく事前情報はあまり入れないで見たほうが良いと思いますんで、ネットにネタバレが溢れる前に劇場へどうぞ!衝撃的な展開と映像に楽しんだり呆れたり怒ったり悲しんだりできるジェットコースターな142分です!
トレーラー貼っておきますね〜!