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【ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。】感想(ネタバレなし)/今すぐライブハウスに行きたくなる音楽映画

基本情報

公開年:2026年

監督:田口トモロヲ

脚本:宮藤官九郎

キャスト:峯田和伸(ユーイチ)若葉竜也(モモ)吉岡里帆(サチ)仲野太賀(未知ヲ)間宮祥太朗(DEEP)

上映時間:130分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

偶然ラジオから流れたセックス・ピストルズに衝き動かされたカメラマンのユーイチは、ロックミニコミ雑誌「ロッキンドール」に出会い、とあるライブハウスへと足を運ぶ。そこで出会ったボーカルのモモ率いるバンド「TOKAGE」のライブに衝撃を受け、無我夢中でシャッターを押した。そこは音楽もバンドも観客たちも何にも縛られない生のエネルギーに溢れた異空間だった。カメラマンとしてライブの撮影を依頼されたユーイチはモモたちと交流を重ねる。やがて彼らの音楽は瞬く間に若者たちを熱狂させ、日本のロック史を塗り替えていくのだが−。

評価

正直映画としては高い評価はつけかねますが、とても好きだし観てよかった!と思えた一本。このへんのカルチャーが好きな人たちが集まって作ったように見えるし、好きな人が観て高評価をつけ、興味のない人はそもそも観ないような映画です。

さすが田口トモロヲと言うべきか、ライブシーンがとても良い。同時に「言うてもこれ再現なんだよなあ、本当のライブじゃないんだよなあ」と思うと目撃できなかったという焦燥感のあまり、今すぐにでもライブハウスに行きたくなる。せめて今、この瞬間ここで生まれているパワーの目撃者になりたい、って。こう思わせてくれるのって、音楽モノとしては最高じゃないですか?!

では以下、まとまらないので雑多に思ったことをつらつらと書きます。ネタバレなし!

感想

・ワタシは脚本のクドカンと同世代。まさに彼が言っていたのと同じ「スターリン、ゼルダ、じゃがたらにはどうにか間に合ったけど、フリクション、リザード、Mr.カイト、ミラーズ、SーKENは写真でしか知らない」世代です。

そしてその写真のほぼ全てを撮っていたカメラマン地引雄一さんが原作者にして主役。演じるのは銀杏BOYZの峯田氏です。48歳で31歳の役。あまり違和感ないのが凄い。この人の持つ特有の青臭さ、いつまで持つんだろうと思っていましたが50手前にしてまだ健在。この人が出ていた令和ロマンくるまのチャンネルを見たのですが、未だに恋愛がうまくいかない、みたいなことを話していました。48歳ですよ?!いい歳して何言うとるねんと思いますが、そんな悩みが似合うんですよね。童貞としての佇まいが芸になっている。「童貞芸」。

役者としては表情を作りすぎでは?と思いましたが、その素人っぽさも逆に効いている感じ。

登場人物は名前こそ変えていますが、実在の人物とほぼ同一。皆良い役者陣の中、仲野太賀が出てくると特に期待感が高まってしまう。旬の人だからか、スクリーンがパッと華やかになります。まあ遠藤ミチロウという美味しい役柄もあるのでしょうが。

・1年ちょっとという短い期間を描いているのにも関わらず、フラッシュバックが多いのが気になりました。時間稼ぎに見えちゃったのよ。

あと若い世代の新しい音楽を題材にしているわりに疾走感がない。みんな落ち着いてるし。もうちょっとカメラぶん回して撮るシーンがあっても良かったのでは…?なんて思いました。

・「DIY」という言葉が何度か出てきます。パンクは音楽のDIYなんですよね。もともと貴族階級だけのものだった音楽が大衆化して浸透。しかしビジネスとして成立するにつれ、演者は技巧に走り、権威化していく。その状況を打破しようとしたのがパンクムーブメントなのです。音楽なんてプリミティブなものなんだから本来誰でもできるはず。大切なのは「表現したい」という衝動なのだ、と。

映像の世界ではホームビデオからYouTubeの流れで同じことが起きているし、文章表現ではまさにこういうブログがそう。

そう考えるとパンク精神は今のほうが浸透しているのかも、なんてことも思ったり。

・表現したいものがあり、たとえ手作りでもできる環境があるというのはとても贅沢で恵まれたことなんだなあ、と改めて。そして実行できる期間はそんなに長くないよ、とも。

・劇中の「TOKAGE」は「リザード」というバンド。エンディングに流れる「宣戦布告」は峯田&若葉によるカバー。いい曲だな〜と思ってApple Musicで原曲を聴いたんだけどキラキラしたシンセサイザーの音が80年代を先取りしてて、当時すごく新しかったんじゃないかと思った。「N.Yでもロンドンでもない東京の音」という台詞が何度か出てくるけど、なるほど、と音を聴いて納得。新しもの好きな感じとか弱っちいボーカルがとても良い。

・「その後」は描かかなくて良かったのか?

「売れる売れないは関係ない」。… 自分自身に誠実に生きて、その代償はなかったのだろうか…?劇中、「成り上がり」の永ちゃんを「ああなりたいわけじゃない」と否定する言葉が出てくるけど「誰しもに分かりやすい成功」を目指さなかった先の人生はどんなだったのか気になるし、描かなかったことにちょっとだけモヤる。作っている側は大人なんだからさ、自分を貫いたその先はどうなるか、伝えるべきじゃない?!

自分は中年になってからギターを始め、上達しないながらも楽しくバンドをやっています(ちなみに今練習してるのは透明少女な!)。その一方で、「やりたくないことはやらない」を貫き好き勝手に生きて、50代半ばの今行き詰まっているのも確か。だから彼らのような生き方を若い子に全力でお勧めは出来ないのです。

うーん…

レビューと称して映画の話をしたいのか音楽の話をしたいのか、はたまたこれは自分の話のような気もするし、結局最後までうまくまとまりませんでしたわ。

が、中年をこんな気持ちにさせるのがこの作品の良さなんでしょう。

ちょっとでも興味のある人はブッ刺さると思うのでぜひ!公式サイト貼っておきます〜。

happinet-phantom.com

新しいものが技巧化・権威化してくるとさらにそれを壊す若者が現れる。音楽に限らず文化ってその歴史の繰り返し。

昨年買ってぼちぼち拾い読みしているこちらの本にもそんなことが書いてあった。登場するバンドの曲を探して聴きながら読むと面白い。けど日本のパンクシーンについてはあまり触れられていないのよね。