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【侍タイムスリッパー】評価と感想/時代劇の面白さを再確認!口コミで人気の自主映画

基本情報

公開年:2024年

監督&脚本:安田淳一(その他、撮影・照明・演出も)

キャスト:山口馬木也(高坂新左衛門役)冨家ノリマサ(風見恭一郎役)沙倉ゆうの(山本優子)峰 蘭太郎(殺陣師関本役)

上映時間:131分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

時は幕末、京の夜。会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。

やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ少しずつ元気を取り戻していく。

やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。

評価

面白かった!!です!

自主映画「侍タイムスリッパー」は上映館1館から口コミで話題が広がり、上映館を増やしている時代劇。第二の「カメラを止めるな!」になるのでは?!と言われています。

お話に大きなひねりはありませんが、安心して観ていられる役者の力と、笑いどころも多いコメディながら息を呑むような迫力の殺陣もあり、映画の面白さ、そして時代劇の面白さを再確認できる作品でした。

監督は幼稚園の発表会からブライダルまで依頼があれば何でも撮るビデオ撮影業をしている、ワタシと同世代の方。映画完成時の銀行預金額が7000円だったというエピソードには涙。素直に応援したい一本です。では以下、感想です〜(ネタバレなし!)

感想

気分良く映画館を後にした帰り道、前方にやはり「侍タイ」を観たと思われるカップルが歩いていました。彼氏の方は大満足したらしく上機嫌に「あそこ面白かったね〜」「すごく少ない予算で作ったらしいよ?」などど興奮気味に喋っていましたが、一方の彼女は始終無言…。たまたま機嫌が悪かったのか、ハマらなかったのか…。

確かにこの作品、「誰が観ても60点以上の出来」で、ゼロ点をつける人はいないだろうけど、逆に200点をつける人もいなさそう。刺激を求めて映画館に足を運んだ人は無言になるのかも知れません。

でもですね、この塩梅が昔テレビで放映していた時代劇そのものを思い出させるんですよ。45分で1話完結、わかりやすい起承転結、勧善懲悪。観れば絶対面白い。少なくともつまんなくはない。たとえ次の日にはまるっと忘れたとしても。

町中華の、ごく普通なんだけど毎日食べられる餃子みたいなもんです。「そうそう、こういうのがいいんだよ」ってやつです。(「侍タイムスリッパー」は映画ですが、劇中劇にテレビ時代劇が出てきます。)

そしてこの作品、自主映画だしコメディなのに時代劇シーンが安っぽくない。

そりゃそうです。自主映画で時代劇を撮るという無謀なチャレンジに「脚本が面白いから」という理由で東映映画撮影所(太秦映画村ですな)が協力。劇中「斬られ役の師匠」を演じる峰蘭太郎さんは「殺陣技術集団・東映剣会」の役員・会長を歴任された本物中の本物。

加えて役者さん皆「よく揃えたな〜」ってくらいの「時代劇顔」の面々が揃っています。主演の山口馬木也さんは散切り頭よりちょんまげの方が似合う。ついでにこの方、コメディのセンスも抜群で、ごく普通のセリフを「間」によって笑いに変えています。

さらにカメラを据えた一対一の最後の対決は見応えたっぷり。映画の格を一段上げています。

ストーリーも細部に笑いを散りばめつつ、泣ける要素、誰もが共感できる要素がちゃんと入っている。

…と、ここまで書いてみたものの、なんだかこの作品長々語るものでもないな。そのうち観たこと自体を忘れそうな気もするし。でも、それでも良い作品ってあるのです。いや、それだから良い映画だと思える作品なのですよ!!今日もバタバタと斬られ役が倒れ、視聴者はよそ見しながらなんとなくそんなシーンを消費し、それでもちゃんとみんなご飯が食べられる、、そんな世界がいいよね(もう無理か…)。

ぜひ劇場でどうぞ!公式サイト貼っておきます〜。

www.samutai.net