
不穏度
80(100を満点として)
だってあの顔ですよ?!
基本情報
公開年:2026年
監督&脚本:関友太郎 平瀬健太朗
キャスト:香川照之(ある男)中村アン(堂本翠)竹原ピストル(飯田剛)中島セナ(北川祐里)松田龍平(倉本慎一郎)
上映時間:128分
あらすじ
<以下、公式サイトより引用>
誰もが、自分には関係ないと思っていた。
家族や進路に悩む女子高生、ある過去を抱えた運送業の男、冴えないショッピングモールの清掃員と理容師、負債を抱えた旅館の支配人、平凡な主婦。
ある日、彼らのささやかな日常が、なんの前触れもなく不可解な〝災い〟に襲われる。警察にはすべて自殺や事故として処理されるが、何かがおかしい。刑事の堂本だけが妙な気配を感じ取り、災いの真相に迫っていく。一方でその災いの周辺には、いつもある「男」が紛れ込んでいた―。
評価
実に好みの一本でした。全ての不穏映画マニアは今すぐ観るべし!まあ、向き不向きはあると思います。ミステリー風を装っておいて何も解決せずに終わるんで「なんじゃこりゃ?」と思う方もいるでしょう。が、映画の世界観は不穏であるほど良い、という方はぜひどうぞ。
では以下感想です。ネタバレほぼなしです!
感想
“貌“で語る男
原案は「手法がテーマを担う」を標榜する「5月」という監督集団。「宮松と山下」がとても面白かったので観てみようという気になったのです。
※「宮松と山下」レビューはこちら。「5月」がどんな集団かも書いています。
劇場まで来て初めてタイトルに「劇場版」と付いているのを知りました。「災」はWOWOWで放映された全6話のドラマで、それを再構築したのが今作だそうです。
主演は香川照之。「ザ・香川照之七変化ショー」です。
日本のどこかで誰かが死ぬというエピソードがいくつも積み重なり、どの「災い」の近くにも香川照之演じる「ある男」がいるという設定なのですが…
スクリーンに映し出された彼の顔を観て息を呑みましたよ!「舞台役者の顔になっている」!!と。
香川氏は2022年、銀座ホステスへ性加害報道で活動制限となりました。(報道直後に謝罪のコメントを発表しています)その後は、それまでのドラマ・バラエティ出演はなくなり、主に歌舞伎の舞台で活動。それで顔つきが変わったのですね。舞台役者らしくギュッと引き締まって目を惹く感じに加え、以前あった傲慢さが薄れたような気がします。
「5月」との付き合いは「宮松と山下」から。WOWOWとはいえドラマでの起用は厳しい意見もあったと思いますが、それを乗り越えてまで一緒にやりたかったのでしょう。
5月の言う「手法がテーマを担う」とは、インタビューを読むと「面白い/作ってみたい映像がまずあり、それを手がかりにテーマを探していく」ということのようです。
今回浮かんだ映像がまずあったとすれば、七変化する香川氏の「顔」そのものだったんじゃないかな、と。
最も不可解なエピソードで出てくる、香川氏の顔を正面から捉えたカットが怖い。非の打ちどころのない「生徒思いの優しい塾講師」が、生徒の悩みを聞いて、真顔のあとニッコリ笑うのです。その顔が怖いのなんのって。いや、ただの真顔なのにね。あー、この顔を撮りたくてこういうお話を考えたのかな、なんて思いました。
「人は理由もなく死なないので」
この映画が好きか嫌いかは、中村アン扮する刑事が言うこのセリフ「人は理由もなく死なないので」をどう受け止めるかにかかっています。
オープニングエピソードの舞台は港町。食器棚がカタカタするレベルの地震があります。安達祐実が食堂の女将さん。パートさんたちとの会話の中で、旦那が蒸発して帰ってこないということが分かる。その彼女が海に浮かぶ。事故死です。
数々の「日常の中の死」が出てくる作品ですが、冒頭に「地震と海での死」を入れてきたことが非常に意図的です。災いは全ての人の隣に潜み、そこに理由はないのです。
それでも点と点があれば線で結ぼうとするのが人間です。堂本刑事(中村アン)はその線を辿ろうとする。もしかしたら対峙する相手は人間ではなく「運命」という恐ろしいものかも知れないのに…。災という得体の知れないモノに立ち向かう凛々しい彼女の存在が作品を引き締めています。中村さん素晴らしいです。
さて、劇中の死は全て事故か自殺とされています。
「人は理由もなく死なないので」という台詞は、同僚の死を自殺と断定されたことに意義を唱えた堂本刑事が言うもの。皆さんはどう思います?
ワタシは、理由のない死はあると思います。それは劇中同列に語られる事故死と同じです。理由を欲しがるのは残された人のほうなのではないでしょうか。
堂本刑事は、理不尽な死を受け入れられない遺族たちと向き合い続けた結果、「その死には理由があるはず」と考えた。そして連続殺人を疑う。(ネタバレ回避のため書きませんが根拠はあります)
香川照之は果たして連続殺人犯なのか?それとも「災いの暗喩」に過ぎないのか?
それにしても特徴的なのは、死体が皆、目を開けていること。リアルです。どうやって撮ったんでしょうか?CGかな?
名前をつけられ、生活ぶりを垣間見せてくれた登場人物が次々と目を開けたまま死んでいく。これ、かなり悪趣味です。気持ちが弱っている時に観るのは厳しいかも…。でもそんなこちらの状況に関係なく、突然やってくるもの、それが「災」なんでしょうね…。
公式サイト貼っておきます〜。
「5月」メンバーの一人で同作監督でもある平瀬健太朗氏が脚本をつとめた「8番出口」。大ヒットゲームを鮮やかに脚色!大変面白かったです。レビュー貼っておきますね!