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【ロスト・キング 500年越しの運命】感想(ネタバレあり)!/実話だけど実話じゃない?!アナタの前にリチャード3世は現れるのか?!

 

基本情報

公開年:2022年

監督:スティーヴン・フリアーズ

脚本:スティーヴ・クーガン ジェフ・ポープ

キャスト:サリー・ホーキンス(フィリッパ・ラングレー)スティーヴ・クーガン(ジョン・ラングレー)ハリー・ロイド(リチャード3世)

上映時間:108分

あらすじ

<以下アマプラの映画紹介文から引用>

フィリッパ・ラングレーは職場で上司に理不尽な評価を受けるも、別居中の夫からは生活費の為に仕事を続けるよう促され、苦悩の日々を過ごしていた。ある日、息子の付き添いでシェイクスピアの「リチャード三世」を観劇したことで、彼女の人生は一変。悪名高き王・リチャード三世も自分と同じように不当な扱いを受けてきたのではないかと疑問を抱いたフィリッパは、彼の真の姿を探し求め、歴史研究に没頭していく――

評価

面白かった!イギリスの歴史には暗いけれど、テンポが良くて楽しめたし、主人公が中年女性(それでもワタシからしたらだいぶ若いけど)ってことで、人生について色々考えてしまいましたわい。では以下、ざっくり感想です〜(ちょっとネタバレしています!)

感想

テンポが良くて分かりやすい実話モノ

「一人の主婦が『失われた王』と呼ばれるリチャード3世の墓を発掘した」…こんな実話があったとは知らず、「へえ〜」と思いました。そういえば公開当時、「推し活」の文脈で宣伝されていたような。

まず映像作品としての感想を言えば、「テンポが良くて面白い」です。冒頭、主人公フィリッパのどん底生活が明かされるのですが、期待していた昇進が叶わずがっかり、それはどうやら彼女の難病のせいでもあることが説明されます。家に帰ると夫と思われる人が「マッチングアプリの女性と会ってくるね〜」と出かけてしまう。これで現代の話であること、家にいた男性は夫ではないらしい、ということがわかる。(のちに別居中の夫ということが判明します)。さらに「ご飯よ〜」と呼んでも2人の息子はゲームに夢中。反抗期です。ここまでの情報をダダダっと無理なく入れてきて、フィリッパが「同情すべき女性」となるのです。

その後、シェイクスピア劇に感銘を受けた彼女の前にリチャード3世が現れる演出(彼女自身も「幻覚」と分かっています)もわかりやすいし、ダレがちな中盤も「リチャード3世に沼っていることを家族に隠しおおせるか否か?!」なドキドキ演出で乗り切り、ついに墓を発見のクライマックスへ。見つけるものが金銀財宝あふれる宮殿とかじゃなくて墓なんで地味なのは仕方ありませんが、一気に見入ってしまうものがありました。そういやイギリス映画観るの久しぶりだけど、なんつーか、作りにソツがないよね。

ついでに言えば思いっきり悪役に描かれていたレスター大学は実在の大学で、実際にリチャード3世の墓の発掘に関わっています。訴訟とかされないんかな…と思いますが、制作はBBC。キッチリ裏取りと対策をした上での描き方なのでしょう(たぶん)。

ワタシの前にもリチャード3世は現れるのか?!

…と、映画としてとても素直に観られたということもあってか、内容についてなんだか色々考えてしまいました。「人生に突然訪れるかも知れない『情熱の嵐』について」です。

「エア」という同じ実話モノ映画を思い出したのですが、あちらはナイキの窓際分野であるバスケシューズ開発部門の男性ソニーが、まだスターになる前のマイケル・ジョーダンを見つけ、凄まじい情熱を持って彼との契約を勝ち取る話でした。この大仕事を終えるまで、憑かれたように仕事をし、ジョーダンを前に「予言」のような言霊を吐いてみせる。(下にレビュー貼っておきます)

なんだか今作のフィリッパと似ています。付き合いでシェイクスピア劇の「リチャード3世」を観て彼に魅了されてしまう。「生まれつきの障害のせいで醜く残酷な王とされているが本当にそうだろうか?」と。難病を持つ自分と重ねてしまうのです。

そこからすごい行動力で「リチャード3世協会」に入り、図書館をめぐって資料を集め、ZOOMで専門家らに話を聞く。それを仕事と主婦業の合間にこなすのです。(仕事は途中で辞めてしまうのですが。)

ここでワタシは思ってしまいました。「いやこれ、シロウトじゃないだろう…」と。

実際のフィリッパ・ラングレー氏については「会社員」と紹介している記事が多かったのですが、wikiには「執筆中の脚本に関する歴史取材のためレスターを訪れていた」とありました。だよなあ。たとえ会社員だったとしてもリサーチに長けており、それなりの役職についていた人物なのではないか、と思われます。その後、大学と渡り合ったり、資金集めに奔走する動きも「一介の主婦」とは思えないもの。

「一主婦が世紀の大発見をした」という振り幅の大きな話にするために、だいぶ脚色されているように思います。いわゆる「実話モノ」って、キモの部分は実話じゃなかったりするわけです。「エア」のレビューにも書きましたけど、「事実は小説より奇なり」で、2時間の映画に出来るほどの事例って、そうは沢山ないからさ。

まあ、それはいいんですけど、ここで気をつけたいのはこの脚色に騙されて「ワタシの前にもいつかリチャード3世が現れて突然大きな仕事ができちゃうのかしら?!」などと砂糖菓子のごとく甘い夢を見ちゃったらアカンってことです。

映画の中では描かれていない「それを成し遂げるだけのこれまでの人生の努力」があったらリチャード3世は「今のあんたなら出来る!」と、彼女の前に現れたのです。

「エア」のソニーも、マイケル・ジョーダンを見つけるまで、あちこちの高校バスケ部に足を運び、寝る間を惜しんで取り寄せた試合のビデオを見ていたんですよね。

そう、「情熱の嵐」は準備をしている者だけに訪れる。

みんな立派やん。えらいやん。

翻って自分ごととして考えると、50歳を過ぎて新しいことを色々始めたのはいいものの、すべてが中途半端だからなあ…。誰もワタシの前に現れてくれないよなあ…などと反省したし、とても感銘を受けましたわい。

うん、がんばろっと!!…っていう気持ちになれる、良い映画です!

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「エア」のレビューはこちら。ちと長いけど良い映画です。実話モノ好きな方はぜひ!

kyoroko.com