不穏度
15(100を満点として)
聖人君主などいない
※不穏度100映画はこちらにまとめています
基本情報
公開年:2025年
監督:エドワード・ベルガー
脚本:ピーター・ストローハン
キャスト:レイフ・ファインズ(トマス・ローレンス枢機卿)スタンリー・トゥッチ(アルド・ベリーニ枢機卿)ジョン・リスゴー(ジョセフ・トランブレ枢機卿)セルジオ・カステリット(ゴッフレード・テデスコ枢機卿)イザベラ・ロッセリーニ(シスターアグネス)
上映時間:120分
あらすじ
<以下アマプラ紹介文より引用>
全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者にして、バチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まった。票が割れるなか、舞台裏で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていく。そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発するのだった――
評価
ひゃ〜!評判に違わず大変面白かったです!ここのところ身内の健康問題などでバタバタで、映画一本通しで観ることもできず途中で止めたり、PCの小さな画面での鑑賞となりましたが、それでも伝わる映像美とストーリーの面白さに大満足!宗教=政治であることを目の当たりにさせられての気持ち悪さも実に良かったです。時間のある時にもう一度しっかり観ようっと。では以下、感想です〜。(ちょっとネタバレありですが、最後までは書いていません。最後までのあらすじを知りたい方はwikiの「教皇選挙」に載っています!)
感想
バロック絵画的である理由
なんせ舞台がバチカンだし、出てくる人物が皆枢機卿なので当然ですが、画の重厚感がすごい。錚々たる役者陣、真っ白な大理石、真紅の祭服、シンメトリーなサン・マルタ館(枢機卿たちが泊まるホテルです)の廊下…。投票を行うのはミケランジェロの天地創造に囲まれたシスティーナ礼拝堂です。
とくに後半、テロによってシスティーナ礼拝堂の窓ガラスが割れ、土煙が入ってくるスローの場面と、その後、とある枢機卿が教皇選挙の決定打となるスピーチを行うシーンが実にドラマチック。
スピーチの現場は劇場のように座席が配された部屋で、このシーンの前にも何度か出てきます。深い青い座席の色と、祭服の赤と白。この配色だけでも惚れ惚れするほど美しいのですが、彼らが座る位置や体の向き、角度も綿密に計算されているように見えます。
そして極め付けは照明。画面中央が明るく見える丸い光を当てており、その外はかなり暗い。この場で主役となる感動的なスピーチを行う枢機卿はその光と影の境目当たりに座っています。
ドラマチックな構図、強い光と影のコントラストは実にバロック絵画的。ここでちょっとバロック美術について調べてみると面白いことが分かりました。時は16世紀、マルティン・ルターがカトリック協会を批判、プロテスタントが誕生します。この宗教改革によってカトリックは信者も収入も激減。どうにかして信者を呼び戻そうと生まれたのが「より分かりやすく」「感情や感覚に訴える」大仰なバロック美術だったのだとか。
「教皇選挙」の劇中、外ではイスラム過激派によるテロが起きています。さらに前教皇が進歩的な改革派だったため保守派との対立も深刻になっている(まあ現実とほぼ同じですね‥)。
現代はカトリック教会の存在意義が揺れている、いわば16世紀と同じような状況だと言いたいのですね。そこに登場するのが、バチカンのドロドロを描くバロック絵画のごときこの作品…ってわけです。皮肉が効きすぎてて一周回ってる感じもしますけど、実にうまく出来ていますよね〜。
最後に提示される大きな問題とは
さて、教皇選挙=コンクラーベは2/3の得票者が出るまで繰り返されますが、その間、有力候補者が次々と脱落していきます。立派に見える人物も一枚皮を剥がせばボロが出るってわけ。どいつもこいつも…という感じですが、政治家と違うのは老獪な人物はいないんだな、ってところです。「告解」というシステム(システムと呼んでいいんか…?)があるからでしょうか?人間なので碌でもないことはするけど反省もするし、反則行為をした人はちゃんと失脚する。これは救いです。
そして最後、意外な人物が新教皇に選出されますが、彼には秘密がありました。それを知ったローレンス(主役/今回の選挙を仕切った枢機卿)は苦悩の表情を浮かべます。「教会は過去のものではない。前進するものです。」という彼の言葉に心を揺さぶられたのにも関わらず。彼がこの秘密を公にした時、世界は熱狂と反発に包まれることでしょう。ワタシは素晴らしい教皇を選んだ!と思いましたが、怒る人たちがいるのも分かります。右や左に揺れながらより良い世界を目指す、それが前進するということなのです。
お話のテーマはもちろんですが、現代のカトリック教会が抱える大きな問題を直接語らず映像で小出しにしつつ、最後に大きく提示して観客に引き渡すという映画としての話術には感嘆しました。
原作は和訳で出ていないようですが、同じ構成なんですかね〜?出たらぜひ読みたいぞ!
「教皇選挙」はアマプラで観られます〜
