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不穏映画が大好物のアラフィフ女 感想と考察が入り混じる映画レビュー。不穏度を数値化しています

【家族ゲーム】感想(ネタバレあり)/ヘリコプターが奏でる家族の不協和音

 

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  • 松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太
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不穏度

20(100を満点として)

心に残るラストシーンの不気味さ

100点をつけた殿堂入り不穏映画はこちら

基本情報

公開年:1983年

監督&脚本:森田芳光

キャスト:松田優作(家庭教師・吉本)宮川一朗太(沼田 茂之)伊丹十三(沼田 孝助)

由紀さおり(沼田 千賀子)辻田順一(沼田 慎一)

上映時間:106分

あらすじ

<以下アマプラの紹介文より引用>

〜前略〜

高校受験を控える息子を持つ沼田家は、成績のパッとしない息子のために家庭教師をつける。だがやって来た吉本(松田優作)は三流大学の7年生という風変わりな男だった。

評価

昔観た時と印象はほぼ変わらず。暗くて不気味で、松田優作が気持ち悪くて脳裏に残るカットがいくつもあり映画としてとても面白いんですが、でも「面白い」という言葉とは違う気がする。言語の範疇で収まらない「感覚的」な感じがまさしく映像芸術と言える傑作です。

確かずいぶん昔テレビで放映していたのを観た記憶があり、それ以来の再見。昔は良かった…と軽々しく言うつもりはありませんが、こういう映画をゴールデンタイムに放映していたことだけは、昭和の良いところと言えるよね。では以下、感想です〜。みなさんご存じの名作なんでネタバレあり!

感想

83年のキネマ旬報ベスト1で森田芳光監督の出世作と言える今作。当時の核家族の様子が実にリアルに反映されています。月島の巨大マンション(団地)に住む沼田一家は父・母・2人の息子の4人暮らし。「外で稼ぐのが仕事」で家庭を一切顧みない父親、専業主婦の母親はもともとボーッとしている性格なのか、家族のことにあまり関心がない。長男はレベルの高い高校に通う優等生。一方の高校受験を控えた次男は成績も振るわない問題児です。

両親が子供に言うことといえば「勉強しろ」「良い大学、高校へ行け」ばかり。そう、ワタシが思春期だった頃の1983年の家族ってこんなんでしたよ!「良い学校」とは偏差値の高い学校のことで、じゃあなんのために良い学校に行かなくてはらないのか?については親も、そして先生も教えてはくれませんでした。

現代なら父親はもう少し家庭にコミットするだろうし、母親も子供の特性を重んじて共に進路を考えることでしょう。あと、今は高校受験より中学受験だよね。

それと家の中が暗い。この薄暗さも昭和なんだよなあ。

さて、この「ごく普通の家族」の中に風の又三郎のようにやってくる異物が、家庭教師の吉本。松田優作です。三流大学の7年生。暴力も辞さないスパルタ方式で次男の成績アップに貢献します。

次男の茂之は「問題児」とされていますが、とても個性的。ジェットコースターの構造に興味があり、絵を描いたり模型を作ったりしているんです。友人との関係の築き方も面白い。一家を客観視している観客は「良い方向に伸ばしてあげればひとかどの人物になるのでは」と思います。んで、吉本が導いてあげるのかな?と期待するけど、そうはらない。吉本はあくまでお金のために受験勉強を教え、茂之を「良い高校」に入れるだけです。

ただ、そんな吉本を演じるのは松田優作なのですよ。彼の底知れぬ懐の深さによって、吉本がこの家庭に対して疑問とフラストレーションを抱えているのをこちらも感じ取ってしまうんです。

そして訪れる最後の食卓シーン。高校合格の祝いの席です。いつものように横並びに食卓に座る一家。真ん中に功労者である吉本です。その場で父親が最近成績の下がってきた長男に苦言を言い出す。諌める母親。そのあたりから吉本がおかしな行動を始めます。食卓を荒らし、父親、母親、子供たちを腹パンやチョップ、ビンタという多種多様な暴力で沈め、家族の象徴である食卓を破壊し去っていく。この長く素晴らしいカットのためにそれまでの時間があったことがわかります。とても有名なシーンなのでどこかで目にしたことがあるかもですが、ここだけ観てもダメですからね?!この前の陰鬱な「起承転」を観ないとこのカットの素晴らしさは分かりません。

さて、この素晴らしいカットで終わると思いきや、最後に今作を永遠の名作にしている不思議なシークエンスがあります。吉本が去り、家族一丸となって片付けをし終わった、ある日の午後。母親がいつものように食卓で内職(?)をしているとヘリコプターの音がやかましく響く。「何か(事件でも)あったのかしら?」。

このセリフは、前半に優作が言う「ラジオをつけてもいいですか?なにか大きな事件があった時のために」(うろ覚え)と呼応します。

そして母親が子供部屋を開けると子供たちはぐっすりと眠っている。母親も一度は窓を開けて不安げにヘリを見上げますが、やはり食卓につっぷして眠ってしまう。

この場面の意味については40年間侃侃諤諤の議論が繰り転げられてきました。監督からのアンサーは「大事件が起きてもこの一家は寝ている」という言葉だけ。この言葉通り、ヘリの音は「外界で起きていること」の象徴です。

一家と外界を繋ぐのは大黒柱の父親のみ。他の3人が父親に守られて小さな団地の部屋で眠る様はさながら繭のようです。これを「平和で暖かな風景」と読むか「不気味」と読むかは観客次第。ワタシは断然「不気味」派で、皆が皆お互いのことをまるで理解していないのに、こんなに近くで眠る(安心しあっていられる)っていうのが家族なんだなあ、と。あまりに気持ち悪いので、最後に部屋ごと爆発しないかな〜なんて思いましたもん。

それにしても家族、とくに思春期の子供のいる家族の不穏感や緊張感は映画や小説の題材にピッタリのようで、「聖なる鹿殺し」を思い出したりなんかしました。下にレビュー貼っておきますね〜。

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2013年に櫻井翔主演でドラマ化もされています。吉本の人物像はかなり複雑に脚色されているっぽい。

アマゾンプライムは30日間無料体験できます。ここから申し込みに飛べます〜。

 

家族のグロテスクさをより感じる映画「聖なる鹿殺し」。たまらなく不穏です。

kyoroko.com

あ、あと松田優作といえば遺作「ブラックレイン」のレビューも書きました。

kyoroko.com