不穏度
20(100を満点として)
モデルとなった実際の事件が不穏すぎるもんで「不穏映画(ドラマ)」の中に入れましたが、不穏感を煽る演出はあまりないです。ピカレスクロマン。
評価
Netflixは面白そうなオリジナル作品が入ったらその月だけ契約して観る、という方法を取っています。この貧乏人メソッドでこれまで「ストレンジャー・シングス」シリーズ、イカゲーム、サンクチュアリ、三体などなどを観ましたが、大掛かりに宣伝しているものは間違いなく面白い。
そして今回、「地面師たち」のために契約しまして、ここんところ忙しいんで全7話を2回か3回に分けて観るかあ〜…なんて思ってたらまんまと一気見してしまいましたよ。なんでかって?そりゃあアナタ、面白かったからですよ!!
監督&脚本・大根仁。(モテキ、面白かったよね〜)。役者陣に豊川悦司、綾野剛、北村一輝、ピエール瀧、小池栄子、染谷将太、リリー・フランキー、山本耕史ら。さらに音楽は石野卓球。ナレーションは山田孝之。さあ、もうこの時点で期待度MAXでしょ?
では以下おおまかな各話のあらすじとざっくり感想です。
全7話のおおまかなあらすじ
えっとですね、初めに言っておくと同作のレーティングは16+となっています。つまり16歳以下は見ちゃだめよ、ってことです。
なにしろセックス&ドラッグ&バイオレンスなんで。あ、言っておくとドラッグはピエール瀧ではないです。でもピエール瀧に「お前が言うな!!」と食い気味に言いたくなる、全国民からの突っ込み待ちセリフがありますんで、どうぞお楽しみに!
ではまず、ものすごくざっくり、回ごとの大まかなあらすじと時間です
第1話 地面師たちが10 億円の詐欺を働きます。たいした金額ではないのでこの回はジャブ。地面師グループの仕事方法や登場人物紹介回と言えましょう。ここで離脱しちゃダメよ!54分
第2話 100億円の大仕事(詐欺)をやろうじゃないの!の巻 51分
第3話 綾野剛がホストに?!の巻 51分
第4話 大手不動産会社もエグいわ〜の巻 62分
第5話 池田エライザかっこいいね!の巻 45分
第6話 想定外に次ぐ想定外!!の巻 37分
第7話 最後に笑うのは誰だ?!の巻 62分
1話目で騙される新興不動産会社のモデルはオー○ンハウスよね?!(詐欺事件にはあっていませんが、イケイケな会社の雰囲気とか)
その後100億の詐欺のターゲットになる「石洋ハウス」のモデルは2017年の実際の事件で55億円を騙し取られた積水ハウスでしょう。
というか、wikiを読むと大きな設定は変えているものの、ディティールはドラマそのまんま!これから観ようという方は先に読まないほうがいいかもです。
原作はノンフィクションではなく小説。が、明らかに上の事件をモデルにしています。地面師という言葉、ワタシもこの事件で初めて知りましたが、そりゃあキャッチーだしドラマにしたくなるよね。
大手デベロッパー社員の山本耕史が言うんです。「俺たちは土地の奪い合いをしてるんだ!これは戦争なんだよ!」と。土地の奪い合いは比喩でもなんでもなく戦争の原因そのもの。
だよな〜、不動産関係の人たち特有の殺気(偏見)って理由があるんだよな〜、と改めて思いましたよ。
感想
全体的にはとても面白かったです。でもストーリー上というかキャラ設定上に一つ大きな違和感がありまして、そこの違和感は最後まで拭えなかった。これは多くの人が感じるのでは?と思います。(ネタバレになるので何かは言いませんが)
そして配信ドラマならではの『世界的表現』を如実に感じるのはセックスシーン。あのですね、エゲツナイことをしてるんだけどパンツ履いたままなんすよ、男女とも。生おっぱいも見せません。血みどろのエグいシーンはあるし、ドラッグ絡みでは注射ぶっ刺してるシーンもあるのに(何度も言いますが瀧じゃないよ?)、性的な表現には厳しい。おそらくこれが今の映像表現の世界基準なんだと思います。
それとキャラクターが皆わかりやすくステレオタイプ。外見からくる印象そのまんまの行動をする。唯一綾野剛はその線の細さを生かし「コイツはどっちなんだ?」と思わせる行動をします。
以前韓国ドラマを観た際に驚いたのは「怒りを堪えている時は拳を握りしめ、その拳がアップになる」などの「記号的表現」の多さでした。言葉が分からなくても通じるボディランゲージを多く取り入れることで世界に進出できたんだろな、と。
同作のステレオタイプ的キャラクターにも同じ意図を感じます。
と、このへんの作りには世界を感じるんですが、それでも日本的というか、こういう部分にお国柄って現れるんだなあと思ったのは「客観性」を保っている所。
誰かの内面に観客を同化させず、一歩引いたカメラで淡々と出来事を追う。泣けるシーンなかったもんね。韓国でリメイクしたら毎回異なる誰かに共感して泣くことになりそうです。エキセントリックになり過ぎないこの感じ、ワタシはとても好きですが海外の人が観たらどう思うんだろ?これから出てくるであろう評価も含めて注目です!
※取り急ぎのざっくり感想文なんで、また追記するかもです。
あの白骨死体は…?!もう一つの実話
エピソード1の冒頭に出てくる雀荘の白骨死体。実はあれも実際の事件だそうで。
2018年12月11日のFRIDAYデジタルにこんな記事が載っていました。
2014年に開通した新橋から虎ノ門に抜ける環二通り(通称マッカーサー道路)周辺はオリンピックに向けて大規模再開発が進む。その一角にある古いテナントビルの底地の持ち主女性が、2016年の10月、白骨死体で見つかった。
彼女は死の2年ほど前から奇行を繰り返しており、警視庁愛宕署は「事件性なし」と判断しているが、不動産業界ではその死を怪しむ声が根強い。なぜなら、2015年の4月に彼女の住民登録が港区新橋から大田区大森南に、突然移動していたからだ。彼女が大森南に実際に住んでいた痕跡はなく、「地面師による偽装工作の一環」と疑われるのも当然だ。
さらにこの記事についていた写真を見て「ひっ!」ってなりましたよ。
ドラマに登場したのと全く同じビルじゃないですか?!前面のシャッターの部分は少し変えたように見えますが。テロップの場所も「新橋」となっていたし、FRIDAY記事の地図を見てもドラマの空撮と同じ場所に思えます。
さらに下の写真は2022年9月撮影のGoogleマップの同ビル。Googleマップに残されている最も古い写真である2009年当時から変わらぬ姿で建っています。もうこれ、実際の場所でロケをした、ってことで確定では…。
「実際の事件」と書きましたが、現実でもドラマ上でもこの話は事件性のあるものとはされません。ドラマではリリー・フランキー演じる刑事が「地面師が絡んでいるようだ」と勘を働かせる、導入エピソードとして使われるのみです。
でもこうやって人知れず闇から闇へと葬り去られる地面師がらみの事件もあるんでしょうね…。
FRIDAYの記事はジャーナリストの森功氏によるもの。より詳しいところが「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」という本にまとめられているようです。こちらはノンフィクション。むちゃくちゃ面白そうです。今の積ん読を消化したらポチッとしたい!
NetflixドラマはSF「三体」もすんごく面白いぞ!レビューはこちら。