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不穏映画が大好物のアラフィフ女 感想と考察が入り混じる映画レビュー。不穏度を数値化しています

【I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ】評価と感想(ネタバレあり)/《名前のつけられない人間関係》がしっかり映った良作!

 

基本情報

公開年:2024年

監督&脚本:チャンドラー・レバック

キャスト:アイザイア・レネティン(ローレンス) ロミーナ・ドゥーゴ(アラナ)クリスタ・ブリッジス(テリ/ローレンスの母親) パーシー・ハインズ・ホワイト(マット・マカーチャック/ローレンスの友達)

上映時間:99分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

カナダの田舎町で暮らすローレンスは映画が生きがいの高校生。社交性がなく周囲の人々とうまく付き合えない彼の願いは、ニューヨーク大学でトッド・ソロンズから映画を学ぶこと。唯一の友達マットと毎日つるみながらも、大学で生活を一新することを夢見ている。ローレンスは高額な学費を貯めるため、地元のビデオ店「Sequels」でアルバイトを始め、そこで、かつて女優を目指していた店長アラナなどさまざまな人と出会い、不思議な友情を育む。しかし、ローレンスは自分の将来に対する不安から、大事な人を決定的に傷つけてしまい……。

評価

笑って泣けて、なんという爽やかな青春ストーリー!とても良かったです。映画マニアで周囲に馴染めない高校生のローレンスがとにかく良い!「レディ・バード」の男子版って感じです。

時代は2003年。毎日のようにレンタルビデオ屋さんに行ってたあの頃を思い出さずにはいられないし、映画好きでなくても初めてアルバイトをしたあの頃、進学に悩んだあの頃を思い出すことでしょう。

作中の柱となる、バイト先の店長との上司でも友達でもない「名前のつけられない関係性」がとても良いな〜と思ったので、以下、そのあたりの感想など。ネタバレありです!

感想

年間数百本観るほどではないですが10代の頃から「映画好き」を自認する人間としてはやっぱり思いますよ、シネフィルのあの特権意識って一体なんなん?って。

映画を観ることってあまりにありふれた大衆的な行為だからこそ、どうにか差別化と意味づけをしたいんでしょうけど。

さて、主人公のローレンスはまさにそんなシネフィル的特権意識を持った高校生。さらに思春期のごにゃごにゃを抱えているもんですから始末が悪い。しかも中盤以降にバラされるのですが、4年前父親が自殺しています。これでこじらせないほうがおかしい。

そんな彼の夢は、カナダのクソ田舎を出てNY大学に行き、映画を学ぶこと。しかし母子家庭でお金もないので、レンタルビデオ屋でアルバイトを始める。主にこのビデオ屋が彼の成長ストーリーの舞台となります。

ここで出会うのが、女性店長のアラナ。ともすればオタク道を突っ走ろうとするローレンスは戒められつつ、仕事仲間になっていく。

35歳くらいの店長は彼からすれば「終わった人」。もちろん上司として立てつつも、こんな田舎のビデオ屋で働いてて何が楽しいの?と思っています。

アラナのほうもそう思われていることを感じている。

高校や大学で体験するバイトあるあるって感じですよね…。

さて、映画がただのあるあるで終わらないのは、アラナが思わぬ自己開示をするからです。

一度は役者を夢見てLAに行った彼女ですが、枕営業をする羽目になり、それでも芽が出ず失意の末実家に戻ってこの店で働き始めた、と。要は、あなたみたいに夢を追った時期だってあったのよ、という話です。

母親以外には話したことがない、というこの痛い過去話を彼女はバイトの高校生に打ち明けます。一体なぜでしょう?

複雑な自意識を持つローレンスの行動は問題ばかり。世に言う「バカな子ほど可愛い」ってのは、「バカな子」に過去の自分を見るからではないでしょうか?だからこそ、あなたはこうならないでね、とか、こうなるかも知れないけどきっと大丈夫よ、とか言いたくなる。

ローレンスの気持ちも分かりますが、アラナの気持ちも痛いほど伝わって泣けてきましたよ…。

こうして2人の距離は縮まるのですが、男子高校生と女性店長という異性の組み合わせであることがとても良いです。アラナは性的搾取をされましたが、彼女がローレンスに伝えたかったのは、性別関係なく夢は叶わないこともある、という事だったからね。

ただの上司や同僚ではなく、師と呼べるほどでもなく、かと言って友人とも違う。さらに異性なのでなんとなく意識しちゃったりもする。

長く生きていると、こういう名前のつけられない人間関係って増えてくるんですよね。

この、画に映らない繊細な人間関係が観えるのは何でだろう?と思って気がついたのは、ローレンスが一人で歩くカットの多さ。

彼を取り巻く人間は、アラナとバイト先の人々、お母さん、唯一の友達であるマット。

人間関係を描いた作品ですから、それぞれと一緒のフレームに収まっているシーンももちろん多いんですけど、後から思い出すと寒空の下を一人で歩くカットが印象に残っているんです。誰かと話し、そして一人で考える。それが彼の成長のワンセット。罵り合いの末に仲直りするアラナとの関係も、一人の時間が育んだものに思えます。

ちなみに友人マットとの関係もとても良いです。ローレンス、びっくりするほど酷えこと言いますが。

監督&脚本のチャンドラー・レバックは今作が長編デビューだそう。なんとなく誰かの自伝かと思いましたが、違うようです。

「レディ・バード」くらい評判になってもいいと思うのにいまいち知られていないのは、ローレンスがこき下ろす「田舎」なカナダ映画だからかしら…?

ともかく誰もが気分よく観られる隠れた良作だと思いますよ!少なくともワタシは無茶苦茶好きです!

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