不穏度
50(100を満点として)
南米の陽は明るく、影は濃い。
あらすじ
コロンビアの架空の町マコンドを舞台に、ブエンディア家の6世代にわたる100年の歴史を描いた物語
評価
ほぼ毎晩1話づつ観ている「百年の孤独」。シーズン1は小説の前半にあたり、第8話まで。配信日は未定ですが、後半はシーズン2として同じく8話になるそうです。
さて、シーズン1の前半である第1話〜第4話までの感想はこちら。ここからはこのページで第5話〜最終話まで書いていこうと思います。
これまで「地面師たち」「三体」「極悪女王」などいずれも一気見してきたNetflixのドラマシリーズですが、今回は1話づつのペースで観ています。つまらないというわけじゃなく、そんなリズムがちょうど良いんですよね。ナレーションは(おそらく)小説の文章をそのまま持ってきているようだし。
いろいろ起きるブレンディア家のあれこれはTVでホームドラムを見ているよう。ハラハラするけど「また来週!」くらいのペースでいい。色彩もセットも美しく、幻想的でありながら現実的。大人のドラマという感じです。もしかしたら若い方には退屈かも知れません。
では第5話から第8話(最終話)までのあらすじと感想です〜。
感想
第五話「レメディウス・モスコテ」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
学校長に就任するアルカディオ。アウレリャノに重大な知らせを伝えるピラル。
ブエンディア家に喜びをもたらすレメディウス。だがある日、悲劇が一家を襲う。
え〜っと、「あらすじ」に突然いろんな人の名前が増えましたね。そもそもタイトルの「レメディウス・モスコテ」が人の名前。第5話で次男のアウレリャノが恋してしまった敵方の娘の名前です。この娘に初潮が来たもんで2人は結婚(どんだけ子供に求婚したんだか!)。この娘レメディウスが明るくてとっても良い子で、ブエンディア家に爽やかな風を吹き込みます。
あ、そういや第5話で死んだと思ってた父親ホセ・アルカディオは生きてました、すんません。ただ「狂人になった」ということで中庭の木に縛りつけられています。
今回はその他、各自いろいろありまして。
第5話の感想で「かわいそうな子」と評したアルカディオは家を出て、村唯一の学校の先生になります。錬金術を教えるのです。良かったね。
あと、レジーナとイタリア男は結婚できそうでなかなかできない。アマランタが邪魔をするからです。アマランタ性悪やな〜。
それから一家に赤ちゃんが一人増える。あらすじにもある「ピラル」とは占い師ですが、売春業的なこともやっています。家出した長男のホセ・アルカディオとの子供がアルカディオですが、次男であるアウレリャノも彼女と致しており、子供ができてしまうのです。アウレリャノはこの子を引き取り大事に育てる決意をします。そうこうするうちに新妻であるレメディウスが妊娠。しかし妊娠中毒症で亡くなってしまうのです。「一家を襲う悲劇」とはこのこと。
んで最後、家出していた長男ホセ・アルカディオが突然の帰還。さあ、どうなる?!…ってとこでおしまい。
バタバタといろんなことが起きる中、村に教会が建つというエピソードも。「村ができて30年もたって教会がないとは!」と神父が本当に驚いたんだか嫌味なのかみたいなことを言う。これまで教会がなくて不自由していなかった村人たちですから、教会設立を渋る。そこで神父は「10センチくらい宙に浮く」という「奇跡」を起こしてみせます。
それを「インチキ」と言うのが木に縛られたホセ・アルカディオ。狂人とみなされ「俺は狂っている」と言っていますがそうではない。「急に謎の言語を話すようになった」と家族が恐れたその言葉はラテン語です。学問に邁進した結果、そうではない周囲の人と話が通じなくなっただけだったのです。奇跡の空中浮遊も科学で説明できる、と。今世紀まで続く宗教VS科学の対立を描いているのです。
ところで南米での布教活動といえば映画「ミッション」を思い出しました。原住民にキリスト教を不況する様子が描かれますが、まあ、地の果てまでよく行かされてたよね、宣教師たち。ブラック企業の営業やんけ。
いろいろ起きて大忙しのブエンディア家。子供達がすっかり大人になり、女主人であるウルスラに一丁前に刃向かったりするのが印象的でした。時代とともに人の感覚が変わっていくのは当然だけど、お前らお母ちゃんの偉大さを全然わかってねえな…って感じです。
それにしてもいよいよ登場人物の名前がややこしくなってきたな…。どっか間違えてたらすんません。そんなこんなで、第6話観たら続けて書きます〜。
第六話「アウレリャノ・ブエンディア大佐」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
突然帰ってきたホセ・アルカディオ。豪快な振る舞いで周囲を驚かせとりわけレベーカの目に留まることに。一方、政情不安の中、アウレリャノは革命を先導する存在に。
第6話は怒涛の政治回。
インテリでおっとりもののアウレリャノがどうして「大佐」になったのかがわかります。マコンドで初めての選挙が行われ、「保守党」と「自由党」が争うのですが、保守党が勝つよう不正が行われます。その上、村には保守党が寄越した軍隊がやってくる。それまで「政治には興味ないっす」という立場を取っていたアウレリャノ、さすがにブチギレて自由党側に立ち、革命家となるのです。
でも保守党がやることもひどいんですが自由党のほうも「保守党を倒す!」以上のことをあまり考えてないように見えるんですよね。おそらくそのあたりは今後描かれることでしょう。
恋愛面では荒くれ男になって帰ってきた長男ホセ・アルカディオがレベーカと結婚します。突然振られたイタリア男かわいそすぎ…。どこかで『遠縁の娘として突然やってきたレベーカは家出したホセ・アルカディオの娘では?』と書きましたがどうやら違うようです。巨大なイチモツを持つ男らしい男ホセと、性欲過多な女レベーカとの組み合わせ、ピッタリです。
そして新婚のこの2人、墓地の前に建つ家に住み始めるんです。原作通りなんでしょうが、こういうセンス、本当にカッコいい。死者の眠る地のすぐ側で生(性)の営みが行われる。一家の6代に渡る物語を描く際に差し込まれる一枚の画と考えても素晴らしいです。ますます原作読みたいぞ。読める気がするぞ。
全体的に、視聴者である我々が「神の目線」であることを色濃く感じた回でした。「そりゃあそんなことしてたらそうなるでしょ」という方向に進む。岡目八目ってやつです。でも当事者になったらそこまで考えられないんですよね。問題を抱えた時は冷静に俯瞰で見ることが大切やね、なんて教訓めいたことも感じたりして。
第七話「アルカディオと自由党の楽園」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
アルカディオがマコンドで自由主義による統治を強制する中、アウレリャノは保守党からある大佐を解放しようとしていた。そしてついに戦争の脅威は町にも影を落とし始める
悲惨な戦争回。
シリーズものドラマながら、戦争映画に引けをとらない迫力の戦闘シーン。大砲で崩れ落ちる建物の石礫がカメラの目の前まで迫ってくるし、人もバンバン殺される。しかも軍服を着た兵士ではなく女性や子供ら市民が。
いや、ひどいね。伝染性の不眠症とやらで大騒ぎしていたあの牧歌的な夏の夜のマコンドを返してくれよ…。
町は保守党VS自由党の戦いに巻き込まれます。ブエンディア家の子供たち、アルカディオとアウレリャノは自由党側に立つ。「保守党の既得権益をぶっ壊す!」的なスローガンを掲げていますが、結局やることは保守党と同じ。いや、もっとひどい。っていうか、人類はこのターンを何回繰り返しているのやら…。
マコンドに残ったアルカディオは「保守党から町を守る」と言いながら権力に溺れていき、最後は結局保守党から処刑される。
「大佐」となったアウレリャノは町を離れ、ゲリラ戦を戦うことになる。
そんな中、レベーカに振られたイタリア男はもう一人の娘、アマランタに求婚。彼にご執心だったはずのアマランタですが、なぜかプロポーズを断ります。イタリア男はショックで自殺…。
ここで、これまで性悪だと思っていたアマランタの闇が垣間見える。大人になった彼女、影が薄く、あまり喋らないし大人しいんです。これ、母親のウルスラと正反対なんですよね。父息子の関係とはまた異なる母娘の難しさが描かれています。ゴッドマザーのウルスラは大した人物ですが、これが母親だとするとどうでしょう?家のことをすべて取り仕切り、反対意見は通らない。「この家のためよ。(娘である)あなたのためよ。」と言われては反論できないのです。自分の意見を言えず、でもその大きな傘の下から出ることもできず、アマランタは心を拗らせていったのでしょう。ずっと独身でもいいから幸せになって欲しいものです…。
…と、なんだか暗い気持ちになる回でした。
第八話(最終話)「空からたくさんの花が降り注いだ」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
長年の時を経てマコンドをめぐるアウレリャノの戦争計画が明かされる。失意の中でウルスラが思い知る、一族にまつわる衝撃の事実とは?
最終話。第7話から続く内戦の話。
ここでコロンビアの歴史についてちょっと調べてみましたら、1800年代初頭のスペインからの独立戦争後、現代に至るまでずーっと内戦が続いてるのな…。作者のガブリエル・ガルシア・マルケスが生きた時代は1928-2014。大学生の時にボゴタ暴動が起きています。まさに保守党VS自由党(共産主義)の戦いでした。「百年の孤独」執筆は1965年。キューバ革命が1959年なので、共産化を目指すゲリラ活動が南米中で盛んな時代です。
ドラマの中で明記されていませんが、「百年の孤独」の具体的な年代は1828年から1928年の間と考えられているそうです。作者が生まれる前の時代ですね。とするとボゴタ暴動は直接関わってはいませんが、そもそもが空間も時間も奇妙に捻れたマジックリアリズムの世界ですから、きっと影響は与えているのでしょう。
さて、ドラマのほうは前半の終わり。狂人として栗の木に縛られていた家長ホセ・アルカディア・ブエンディアが亡くなります。あらすじに『ウルスラが思い知る、一族にまつわる衝撃の事実とは?』とあったので、まだ何か秘密があったの?!とワクワクしていましたが、特に何もなく。物語はどうやら次の世代(3・4代目)に移りそうだぞ、という予感と共に終了します。
ここにきて耐えきれず、相関図を検索して見てしまいました。ええ〜!次世代の主役はそこの子供なのかあ〜。そんでやっぱり名前が同じ子は同じような運命を辿るのかあ〜、どひゃあ〜!
それにしても執筆当時30代半ばだった作者の「神の目線」には驚きます。
ドラマの中の登場人物たちは恋しちゃなんねえ相手と恋に落ち、(何度も言いますが、激しいベッドシーンばっかりなんでご家族での視聴は要注意!)冒険の熱に冒され、欲が生まれては隣人と争い…を繰り返しています。人間の歴史を俯瞰、つまり神の目線で見るとこんなものなんでしょう。
内乱続きの荒廃した国でこんな才能が生まれることがあるんですね。
ともかく、後半を描くという予定のシーズン2を楽しみにしています。まさか打ち切りとか…、ないよね?!
第一話〜四話までのあらすじと感想はこちらです。