不穏度
50(100を満点として)
南米の幽霊ははっきり見える
あらすじ
コロンビアの架空の町マコンドを舞台に、ブエンディア家の6世代にわたる100年の歴史を描いた物語
評価
師も走るっちゅう12月ですから、ワタシのような雑魚は全力疾走しても追いつかず、なんやかんやと忙しい時期となりました。
そんなこの時期にNetflixではじまった「百年の孤独」。作者ガルシア=マルケスの息子の映像作家ロドリゴ・ガルシア氏が製作総指揮をつとめ、ついに映像化です。お恥ずかしながら原作は未読。内容には興味を持っていたのでこの機会に観てやろうじゃないの!!と再びNetflixに入り直しました。
おおお〜!思ってた通りの面白さ!映像も美しく文句のつけようなし!が、激しめの濡れ場があるのでご家族での視聴はおすすめできません!
それから、原作未読とはいえ、ある程度知っておきたいなということで、視聴前に以下のブログを一読させていただきました。とても参考になったし、村上春樹好きなんで読みたくなったよ!
なぜ『百年の孤独』が面白いのか、ネタバレ抜きで語ってみる: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
では以下、第1〜4話のあらすじと感想を。ちなみに前半である今シリーズは8話まで。その後、同じく8話からなる第2シリーズが配信される予定だそうです。
第5話以降は視聴次第こちらに書いています。
感想
第一話「マコンド」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
亡霊と呪いを恐れ、ウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディアは村を出ることを決意。新たなる安住の地を手に入れるべく、仲間たちと険しい旅に足を踏み入れていく
上にあげさせていただいたブログにもありましたが、『長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思い出したに違いない。』という冒頭の一文は大変有名だそうで。
ドラマもまさにこのナレーションから始まります。どうやら時折導入されるナレーションは原作そのままっぽい。
第1話は1組の夫婦とその仲間たちが新しき村「マコンド」を開拓するまで。
いとこ婚のウルスラとホセ。妻は「この村は血が濃いので豚のしっぽのついた子供が産まれる」と恐れて性交渉を拒否。それをバカにした村人を殺害してしまう夫ですが、あくまで「決闘」なので無罪になる。しかし夫婦の前に死んだ男が幻覚となって現れる。このシーンがとても良いです。家の入り口前にいたと思った幽霊が、カメラをパンすると今度は窓の外を歩いている。無言で首から血を流して夫婦を見つめる男の幽霊は、あまりにハッキリと見えておどろおどろしいというより、美しく幻想的です。おおお〜これが南米的不穏表現なのか?!と、このあたりで、これは見応えのあるシリーズだぞという期待感が生まれます。
んで、安住の地を探し旅に出る2人と、彼らについていく村人たち。数人だと思ったら意外と大人数。2人(とくに夫のホセ・アルカディオ)のカリスマ性がわかります。
第二話「まるで地震のよう」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
アウレリャノが戦争の幻影を見る一方、ホセ・アルカディオはある女性と出会う。その頃、錬金術に執着する夫にかわり、ウルスラは一家を支える方法を模索していた。
えーと、早くも第二世代の話です。上の「あらすじ」のアウレリャノとはウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディアの次男。「ある女性と出会う」ホセ・アルカディオは長男です。(父親と同じ名前です。ややこしい!)
アウレリャノは予知能力があるっぽい。しばしば幻覚のようなものを見ます。
ここで描かれるのは開拓者で父親のホセ・アルカディオ・ブエンディアが錬金術(当時最先端の科学)に夢中になる様子と、その息子の恋模様。
ホセ・アルカディオ・ブエンディアは大人数を率いて未踏の地に新たな村を開発するような人ですが、同時に科学的探究心も強く勉強好きな一面もあったことが明かされます。奥さんのウルスラは呆れ果てますが、主人公としては実に魅力的だし、まったく違う一面が第二話ではじめて出てくるのも良いです。
そしてどうやら冒頭で「銃殺隊の前に立っているアウレリャノ・ブエンディア大佐」とはこの予知能力のあるアウレリャノのことっぽい。(次世代、次々世代でも似たような名前の人が出てくるのでよう分からん!!)
第三話「神の銀盤写真」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
奇妙な少女がやってきて、マコンドでは錯乱を伴う疫病が広がる。メルキアデスの写真機に夢中になるホセ・アルカディオ・ブエンディア。レベーカとアマランタはピエトロの気を引こうと競い合う。
長男のホセ・アルカディオが村の占い師との間に子供を作り、その子を置いてジプシーたちと一緒に逃げてしまうという怒涛の展開だった第二話に比べ、主要人物に大きな事件は起きない閑話休題的な回。
とはいえ、ブエンディア家に遠縁だという気味悪い女の子が押し付けられ、家族が増えます。その子がもたらした「伝染性の不眠症」のおかげでマコンドは大混乱。夜の村に松明の明かりが灯るファンタジックな画作りです。ところでこの女の子・レベーカってもしかして第二話で家出した長男、ホセ・アルカディオの子供だったりするかな?どうなんだろう??
やがてレベーカは成長、美しい娘になります。「村一番の美女」とか「美しい」とやたらと言われる彼女、演じる役者さんはとてもインパクトのある顔をされています。妖艶な魅力はあるけれど、正直標準的な「美女」とはちょっと違うんですよね(今日び、こういうこと言うと叱られそうですが)。
このひねったキャスティング、マジックリアリズムを文学表現から映像表現にうまく転化しているようで、すごいなと思いましたよ!この女性が美女と呼ばれる世界に、視聴者は境界線を超えたことすら気づかずにスッと入っていくことができる。ほんの5センチ床から浮いているような不思議な浮遊感がたまりません。
そんで死んだはずのメルキアデス(ジプシーで、父親ホセ・アルカディオの錬金術の師匠)が出てきたりなんかして、ブエンディア家は家を増築し、「この地に来て30周年パーティー」を開いたりなんかする。
さすがに皆歳をとったので、この回でウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディア役の役者も一回り上に交代。
今回はここまで。
そろそろ相関図が欲しいぞと思って検索したら思いっきりネタバレ読んでしまったので、しばらく検索は我慢だ!第4話以降観たらまた続きを書きます。
第四話「クリの木」
あらすじ
<ネットフリックスの各エピソード紹介文から引用>
マコンドに新たに着任した町長が家族とともに住み始める。アウレリャノが初めての恋を経験する一方、ある人物の死がホセ・アルカディオ・ブエンディアを狂気へと追い込んでいく。
ホセ・アルカディオ・ブエンディアらが一から開拓した村マコンドに国(コンロビア)から派遣されたと“町長“がやってくる。そりゃ揉めるでしょ、と思ったら案の定揉めます。しかしあろうことか、次男のアウレリャノはこの家の娘に恋してしまう。しかもその相手は「恋」の言葉も知らない少女。ロリコンです。あちゃー。
んで、第三話の回で「村一番の美女と言われているが個性的な顔立ち」と書いたレベーカもイタリア男と恋に落ちて結婚の約束を交わす。しかしもう一人の娘アマランタも同じイタリア男に惚れていたため絶望して自殺未遂。姉妹で一人の男を取り合うってやつです。
そうこうするうちに、ブエンディアの家に居候していたメルキアデスが亡くなってしまう。メルキアデスは家長ホセ・アルカディオ・ブエンディアの錬金術の師匠であり、かけがえのない心の友だった人。彼を失い錯乱するホセ。暴れたところを皆に押さえつけられて、中庭の大きな木に縄で縛り付けられるのですが、おそらくその木がエピソードタイトルの「クリの木」でしょう。
現実を超えた摩訶不思議なことが起きるブエンディア家の周囲ですが、心の動きは我々と同じです。今回はとくに一家を支える肝っ玉かあさんウルスラに共感してしまいました。マコンドを創るまでは行動力とリーダーシップに溢れたかっこいい男だった夫のホセ・アルカディオ・ブエンディアですが、第2話以降はずっと趣味の錬金術に没頭しています。ウルスラは文句を言いつつ家計を支えるため飴作りをしながら子育て。今話では政治的にも人物として立派なところを見せます。
そんな彼女の前に一話に現れた「あの幽霊」が出たかと思うと、いよいよ伴侶を失う…夫はおそらく今話で退場かと思われます(第5話以降視聴後に追記:違いました。死んでません)。過酷な運命ですが、今の彼女なら乗り越えていけるでしょう。強さと優しさを兼ね備えた理想の女性です。
さて、シリーズ1の前半までを観てきました。小説でいえば1/4まで進んだ計算です。同作は「百年の孤独」という大変印象的なタイトルですが、劇中に「孤独」という台詞が出てきたのはここまで1度だけ。
ブエンディア家の子供たちの中には、長男のホセ・アルカディオ(家長とは別です)が村の占い女に産ませた男の子・アルカディオも一緒に暮らしています。父親である長男は家出。家長のホセとウルスラは自分たちの子として育てますが、アマランタは意地悪で「アンタ、親いないもんね」と言ったりする。だからアルカディオは「自分はこの家の子じゃない」ことを知っています。そんで家の中で『兄』にあたるアウレリャノに弱音を吐くと、アウレリャノは「誰もが孤独から逃げられないんだよ」みたいなことを言います。第三話での話で、覚えている限り「孤独」はこの一言だけ。この子、なんか影薄くてかわいそうなんですよ。アウレリャノの今後の人生がどうなるのかも楽しみです。
波乱万丈ではありますが、今んところそのアウレリャノをのぞいては、ブエンディア家の人々にあまり「孤独」感は感じません。家は栄え、村人にも慕われています。物語を最後まで追った時にしんみりと感じるのでしょうか…?!
後半の第五話〜八話までは別ページを立てて引き続き感想を書こうと思います〜。
⇨(追記)第5話以降はこちら。視聴終り次第続きを書いています!
「文庫化されると世界が滅びる」という噂は、あまりに長い間文庫化されなかったことから生まれた都市伝説だとか。そんな「百年の孤独」、ついに2024年夏、新潮社から文庫で登場。集中力が年々落ちて長編小説がすっかり読めなくなってしまいましたが、今なら読めるような…気がする!!