不穏度
90(100を満点として)
基本情報
公開年:1985年
監督:ルネ・ラルー
脚本:ローラン・トポール ルネ・ラルー スティーヴ・ヘイズ
上映時間:72分
あらすじ
<以下アマプラの映画紹介文より引用>
全身真っ青の皮膚で、目だけが赤い巨大なドラーク族が支配している惑星では、人間は虫けら同然に扱われていた。孤児となった人間の赤ん坊が、ドラーグ族の知事の娘ディーヴァのペットとして育てられることに。テールと名付けられた赤ん坊は成長し、ディーヴァが勉強に使っている学習用具をこっそり使い、この惑星についての知識を深めていった。彼はディーヴァの隙を狙っては、ひっそりと暮らす人間たちに様々な知識を共有させる。
評価
うへ〜!キモっ!!キモチ悪いです。シュールです。お好きな人にはたまりません。ワタシも大好きです。でも2度は観たくないかな、キモ過ぎて。
日本公開は1985年ですが、制作国のフランスとチェコでは1973年公開。半世紀以上前のアニメですが、全く古さを感じさせません。公開当時から存在は知っていましたがなかなか観る機会がなく、3年ほど前にやっとアマプラで観ました。
なんせビジュアルのインパクトが強すぎてストーリーを全く覚えていませんが、wikiによればどうやら人類がペットとして飼われいた星を脱出して地球に来るまでの物語らしい。
※wikiにはラストまでのあらすじネタバレが載ってます
ちなみに原タイトルは「 La Planète sauvage(野生の惑星)」。ストーリーからしてもレヴィ=ストロースの「La pensée sauvage(野生の思考)」の影響下で生まれたことは明白でしょう。1962年に発表された「野生の思考」は構造主義の発火点となり、西洋の思想史においても転換点となった著作です。
人類から見れば気味悪いドラーク族ですが決して蛮族というわけではなく豊かな文明を築いている。そんな彼らの生態を割と詳しく描写してしているところからしても、60〜70年代の文化人類学の文脈の中にある作品かと思います。
では以下、内容を思い出しつつのざっくり感想です〜。
感想と考察
キモさの理由を考えてみた
えーと、この映画、何から何までキモいんですが、まず目に入るキモいものはなんといっても「ドラーク族」というキャラクター。
ドラーク族は舞台となる惑星の主で巨人。対する人間は手のひらサイズです。
外観は青い皮膚に赤い目。耳は魚のヒレみたい。目ん玉が小さいのも生理的にイヤですねえ。「瞑想」とかいう行為で生殖活動をするのもキモい。(まあ、このあたりのギミックは70年代のSFっぽいなあと思いますが)。
そこらの作品ならもうこのインパクトのある宇宙人を創作しただけで充分に思えますが、この星の風景というか、生物やら造形物もいちいち全部不気味なんですよ。画面に出てくるもの全てがキモい。
同作、監督のルネ・ラルーと、脚本に名前を連ねているローラン・トポールの競作とも言える作品。原画を担当したのがこのローラン・トポール(国籍はフランスのポーランド系ユダヤ人)という方、だそうで。日本ではあまり知られていないのですが、イラストレーターであり漫画家であり、小説家であり…のなんでも屋だったらしい。今で言えばリリー・フランキー、昔で言えば寺山修司みたいなもんか?
この人の「マゾヒストたち」というイラスト集があり、「ローラン・トポール」で画像検索すると何枚か観ることができますが、テイストは同作と同じ。ルネ・ラルーの名前が前に出ていますが、キモさの元凶はこの人の作風なのです。
ちなみに日本にトポールを紹介したのは澁澤龍彦。三島由紀夫を介してのことだったとか。濃い人物名が並ぶところでトポールの作風を感じていただければ。
さらにもう一つ、この作品のキモキモポイントはその「動き」。アニメに暗くて申し訳ないんですけど、何ていうんですかね?こういう動き。技術が追いついていないわけではなく明らかに意図的にカクカクさせてますよね?!
説明の仕方もわかんないので、予告編置いておきます!
それから予告編を観てて思ったんですが、「キモさ」を演出するための構図もすごい。人間が怯えた顔で上を見上げるカットの次に、画面上から青い手が降りてきて人間をつまみ上げるカットがあるのですが、そのカットを横からのカメラで抑えるところが、二次元的なペラペラ感が出て「なんかキモい」になるんですよね。同作は「切り絵アニメーション」だそうですが、奥行きのなさって気持ち悪く感じるんだあ〜って初めて気がつきましたよ。
今のアニメなら怯える人間の顔の上に手が覆い被さってくるといった三次元的構図になりそうですが、こうなると「怖い」にはなっても「キモい」にはならないと思うんです。
浮世絵を初めて見た西洋人もそのスーパーフラットさに「キモっ!」って思ったのかしら?知覚認知心理学あたりで説明つきそうじゃない?!
…なんて考え出すとキリがないのでこのくらいにしておきますが、まさにSFアニメの金字塔と言えるカルト作品「ファンタスティック・プラネット」、一度は観て悪夢にうなされると良いと思います!
「ファンタスティック・プラネット」はアマプラで観られます〜。
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