不穏度
35(100を満点として)
とにかく路地が暗いんよ…
基本情報
公開年:2009年(日本)
監督: ナ・ホンジン
脚本: ナ・ホンジン
主要なキャスト:
キム・ユンソク (オム・ジュンホ役)
ハ・ジョンウ (チ・ヨンミン役)
ソ・ヨンヒ (キム・ミジン役)
上映時間:125分
あらすじ
<以下、アマプラ紹介文より引用>
デリヘルを経営する元刑事ジュンホの元から、女たちが相次いで失踪。時を同じくして、街では連続猟奇殺人事件が勃発。ジュンホは、女たちが残した携帯電話の番号から客の一人ヨンミンに辿り着く・・・。「女たちは俺が殺した。そして、最後の女はまだ生きている。」捕らえられたヨンミンはあっけなく自供するが、証拠不十分で再び街に放たれてしまう。警察すらも愚弄される中、ジュンホだけは、囚われた女の命を救うため、夜の街を猛然と走り続ける・・・。
評価
胸糞悪くて面白かった!!
アウトロー刑事崩れと猟奇連続殺人鬼の対決というよくあるスリラーで、「殺人の追憶」と「セブン」とついでに「グロリア」を贅沢に凝縮して、ちょい軽くしたような一作です。心理的圧迫感はあまりなく、アクション映画寄り。
って言うとありふれた作品に聞こえますが、さにあらず!
とにかくリズム感が素晴らしい。観ているだけでその職人技に気持ち良くなってしまいます。
ナ・ホンジン監督作品は初めて観ましたが、そりゃあ評価もされるし、お客も入るわなあ、これは。今までなんで観なかったんだ、くっそう…。公開当時に観ていたらもっと衝撃的だったはず…!
では以下、どんなところか良かったかの感想です〜。
感想
オープニングは電話をしながら車を走らせる女性。誰かと待ち合わせです。次いで事務所で電話対応をしているジュンホ(キム・ユンソク)。やがて冒頭の女性がデリヘル嬢であること、ジュンホは元刑事で今はデリヘルの経営者であることがわかります。
そして残酷な方法で何人ものデリヘル嬢を手にかけている奇連続殺人犯・ヨンミンは割とすぐ出てきます。ミステリーではありません。
ヨンミンからの依頼でミンジュを家に行かせたジュンホ。ヨンミンを怪しみ警戒していましたが、その甲斐なくミンジュは監禁される。ジュンホへの「助けてメール」が繋がらず焦るミンジュ、車の中でイライラしつつ待機するジュンホ。次のカットではもうミンジュは手足を縛られている。緊張感とスピード感を維持したまますばやく展開させるカットバックが素晴らしい。
ジュンホは古巣の警察と合流したり離れたりしながら、監禁場所を探り当てようとします。
主人公のジュンホはとにかく乱暴。スリラーでありつつアクションものでもあるので、その手の映画にありがちなアウトローキャラクターです。快楽のために風俗嬢を手にかけるような怪物とは、法律の外に出ないと対峙できないというわけですね。
そんでこれまたこの手の映画にありがちですけど、かわいくて賢い女の子が出てくる。ミンジュの子供です。ジュンホは独りぼっちで留守番をしていたこの子を助手席に乗せ夜のソウルを疾走する。
さらにタイムリミットものでもあります。ヨンミンを拘束したはいいものの逮捕状がなかったので、法律により証拠がなければ24時間以内に釈放しなくてはならないのです。
そして夜の場面が多く、雨が降り続くという典型的なノワールものでもある。
どうです?この美味しいところてんこ盛り丼。
こんなにありがちな王道要素ばかりなのに、アメリカ製アクションでもなく香港ノワールでもない、「韓国映画ならでは」があって面白い。
ジュンホがひたすら走るソウルの街は、他のどの都市とも似ていません。坂だらけで細く薄暗い路地が張り巡らされ迷路のよう。(「パラサイト」と同じ場所でロケしたのでは?と思われる路地がありました。)
あと、「殺人の追憶」レビューでも書きましたが、韓国アクションで何が面白いかって、華麗な飛び蹴りが出るところなんですよ。テコンドーのお国ですから。いよっ!出ました!!って掛け声かけたい感じになる。
さてそんなこんながあり、子供を連れながら監禁されたミンジュの居場所を探すジュンホ。ママは生きていると信じていた子供がその死を察する場面、ここが痺れるほど良いです。ジュンホと風俗嬢との会話を聞いて分かってしまうのです。その前の数少ないカットでこの子がとても賢いと知っている観客にはたまらんですよ。その後、この子は車の中で大泣きするんですが、この時カメラは車外にある、つまり泣き声は聞こえないというのも実にセンスを感じます。「可哀想な子供」という甘い要素に寄りかからないように、距離を置いている。ハードボイルドです。
そして最後。
ミンジュは自力で脱出しますが、結局ヨンミンに捕まって殺されます。ヨンミンの家にたどり着いたジュンホは、彼を半殺しにしますが時すでに遅し。
ひでえな。よくこんな酷い話作れるね?!ってくらい後味悪い。善良な女性が殺され、子供が不幸になり、主人公は失意のどん底、犯人は捕まったが生きている。
え?何これ?倫理観どこいったん?
でもこのドグサれ感が実に韓国映画っぽいっていうか、邦画にも欧米作品にもない「エキセントリックな不条理感」があるんですよね。
しょっちゅうだと疲れますが、たまに観るならすごい面白いです。
さて、実は今回ナ・ホンジン作品を観たのは、新作「HOPE」がむっちゃ面白そうだったからなんですよ。
『非武装地帯(DMZ)近くの寒村に突如現れた正体不明の謎の生命体と、それに立ち向かう人々を描くSFアクション・スリラー』ですってよ!
ナ・ホンジン監督9年ぶりの新作『HOPE』にカンヌ熱狂!コメディ、ホラー、SF、アクションが暴走する“問題作”の反響を現地からお届け(MOVIE WALKER PRESS) - Yahoo!ニュース
日本公開は2027年だそう。それまでにもう何本かナ・ホンジン作品を観たいと思っています!
「HOPE」、トレーラー置いておきますね。
そして「チェイサー」を今すぐ観るならアマプラでどうぞ。
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テイストは違うけど同じ猟奇連続殺人鬼が出てくる韓国映画「殺人の追憶」レビューはこちら。「パラサイト 半地下の家族」でアカデミー作品賞を受賞したポン・ジュノ監督作品。
アクション風味が強い「チェイサー」よりも、陰鬱で心理的にずっと重いです。覚悟の上でどうぞ。
後味の悪さなら外せない「セブン」レビューはこちら。チェイサーの上をゆく胸糞悪さです。世紀末の名作!
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