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【ブゴニア】感想(ネタバレあり)/「ブゴニア」の意味とは?リメイクでもランティモス節は健在だった!

不穏度

30(100を満点として)

劇伴は不協和音じゃありません

基本情報

公開年:2026年

監督:ヨルゴス・ランティモス

脚本:ウィル・トレイシー

キャスト:エマ・ストーン(ミシェル) ジェシー・プレモンス(テディ) エイダン・デルビス(ドン)

上映時間:118分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

人気絶頂のカリスマ経営者として脚光を浴びるミシェル(エマ・ストーン)が誘拐された。犯人は、陰謀論に心酔するテディ(ジェシー・プレモンス)とドン(エイダン・デルビス)の2人組。ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙人だと信じてやまない彼らの要求はただ一つ。「地球から手を引け」彼らの馬鹿げた要望を一蹴するミシェルだが、事態は思わぬ方向へと加速していき——。

評価

うーん…。面白くなくはないのですが、期待していたほどではないな…。

そもそもリメイクなので仕方ありませんが、ヨルゴス・ランティモスっぽさがあんまりないよなあ。ストーリーも、原案の韓国映画「地球を守れ!」(2003年)の時代なら新しくてぶっ飛んでいたのでしょうが、最近こういう流れ、多いよなあ…なんてのが映画館を出た直後の感想でした。

だがしかし!

家に帰ってタイトル「ブゴニア」の意味を調べているうちに気がつきましたよ。リメイクとは思えないほどバチバチにランティモス節やんけ!と。

そもそもランティモス作品常連のエマ・ストーンは相変わらず良いし、「憐れみの3章」でも好演したジェシー・プレモンスがとにかく光っています。

では以下、ざっくり感想と「ブゴニア」の意味について調べたところを。

感想

奇跡を起こす儀式「ブゴニア」

まずはタイトル「ブゴニア」の意味。ローマ時代の詩人、ウェルギリウスの「農耕詩」という作品の中に出てくる言葉だそう。

「農耕詩」は哲学的・詩的・神話的な要素を織りこんだ農業指南の書ですが、養蜂の話の中で「絶滅した蜜蜂を牛の死骸から再生させた」という奇跡の儀式が出てきます。その儀式こそが「ブーゴニア」。やはりぶちこんできましたよ、古代ギリシャ・ローマの逸話を。

エマ演じるミシェルを誘拐する2人組は養蜂家です。そして蜜蜂の大量死問題(CCD)が出てくる。CCDの原因は農薬と言われていますが、はっきりとしたことは分かっていない。そんなことから2人組、とくにテディ(ジェシー・プレモンス)は陰謀論に溺れています。その陰謀論の行き着く先が誘拐だったのです。途中で明らかになりますが、ミシェルは農薬会社のCEOなんですよ。

閉鎖空間の会話劇が面白い!

話が転がり始めるのは誘拐シーンから。護身術に長けたエマVSグタグタの男2人の格闘という素晴らしいシークエンスがあるのですが、いかんせんそこまでのテディのモノローグが長い。

正直、冒頭は少し退屈です。ただ、自転車に乗るテディが良い。何日も洗っていないような長い金髪をなびかせながら、脛丸出しの短パンでロードバイクを走らせている。爽やかなのか怪しいのかすら良くわからない感じがいいです。ちなみに後半、血まみれテディの自転車爆走も観られます。こちらもすごく良いです。

さてミシェル監禁後は3人のキャラクターがそれぞれ引き立って面白い会話劇になります。心理学も学んだというミシェルは適度に話を合わせつつ、自分が有利になるように誘導する。誘拐監禁というとんでも無い困難の中でも諦めず対処する、デキる女です。

対するテディも、ミシェルが宇宙人だと信じる狂人ですがどうやら頭は悪くないようで、簡単には相手に乗らない。

ドンはテディの言いなりですが、そもそもこの計画にあまり乗り気ではありません。

この3人が屋敷の中で過ごす3日間が描かれます。世間の耳目を浴びるセレブが行方不明になったのですから、世間はもちろん大騒ぎです。んで最後どうなるかというと…

 

(以下、ネタバレです!!要注意!)

 

誘拐犯の2人は死に、本当に宇宙人だったミシェルは宇宙船に戻って人類を滅亡させます。…って書いちゃうと簡単ですが、血飛沫が飛ぶ2人の死にざまと、最後の死屍累々の静謐な映像は実に素晴らしいのでお好きな方はぜひ観て下さいね!あと、あっけなさすぎる人類滅亡のさせ方は笑うところだと思います!

さて、ここで話をウェルギリウスに戻します。

「ブゴニア」という奇跡を起こすのはアリスタエウス。アポロンの息子です。 ギリシャ・ローマ時代から、秩序正しい社会を組織し勤勉に働く蜜蜂の姿は人間に通じると言われていました。その蜜蜂の大量死に直面したアリスタエウスは母親に救済方法を聞く。牛を犠牲にし、蜜蜂を再生させる方法を教えてくれたのは母親です。そして見事蜜蜂の群れを蘇らせたアリスタエウスは「英雄」と言われます。

映画を観た方ならお分かりでしょう。「蜜蜂の社会=人間社会」(とくに管理されたミシェルの会社)、母親、英雄…。全て映画「ブゴニア」の中に出てくるモチーフです。

ミシェルを宇宙人だと見抜いた彼らはなぜ死ななくてはならなかったのか?それも首が吹っ飛ぶほどの勢いで。全ての答えはローマ時代の詩に書いてあったのですよ!

「ブゴニア」の儀式では牛の喉を掻き切ります。生贄の死体の中に生まれる新しい命。テディとドンは新たな人類のための生贄とされたのです。

過去、宇宙人の手によって人類が同じような絶滅と再生の儀式を施されたことは、ミシェルによって語られます。

う〜ん、なかなかすごい話です。

確かに人類は一旦滅びないとあかんのでは?と思うし、賢い狂人であるジェシー・プレモンスは生贄にピッタリな気がするもんね。

ま、この映画を観た陰謀論者が「選ばれし生贄」と自称するんじゃないかと思うとちょっと嫌ですが。

そしてランティモス監督は、つくづく人間が嫌いなんだなと思いました。そういうところがワタシは大好きですけどね!

「ブゴニア」公式サイト貼っておきますね!

gaga.ne.jp

こちらのサイトを参照させていただきました!

『農耕詩』の独創性-「アリスタエウス物語」の解釈をめぐって- – 山下太郎のラテン語入門

「憐れみの3章」レビュー貼っておきます。私的ランティモス監督作品ランキングが入っています。

kyoroko.com