不穏度
70(100を満点として)
血まみれファックの衝撃たるや…!
基本情報
公開年:1987年
監督&脚本:アラン・パーカー
キャスト:ミッキー・ローク(ハリー・エンゼル) ロバート・デ・ニーロ(ルイ・サイファー)リサ・ボネット(エピファニー)シャーロット・ランプリング(マーガレット・クルーズマーク)
上映時間:113分
あらすじ
<アマプラの紹介文より引用>
1955年、ニューヨーク。失業中の私立探偵エンゼルは、不穏な動きを見せるミスター・サイファーからの依頼を快く引き受けた。ハーレムの街からニューオリンズのブードゥー教の儀式まで、彼の捜査はやがて地獄への壮大な転落へと向かう。そして、エンゼルが質問した目撃者はすべて残酷に殺害され、警察はエンゼルを疑うようになる。パニックに陥り、追い詰められ、恐ろしい幻覚で疲れ果てた探偵は、任務を放棄しようとする。しかし、サイファーから信じられないような事実を聞かされる...。
評価
10年ぶりくらいに観た感想は「何かよう分からんけどやっぱ良いわ〜」というもの。不穏な雰囲気がすんごく良いということは覚えていたんですが、ストーリーはほぼほぼ忘れてたんですよ。いつものように忘れっぽい自分のせいだと思っていましたが、気がつきました。この映画、ものすごくストーリーがわかりずらいです。なんだか編集がゴチャっとしている感じ。でも、いいんです。ストーリーを追う映画ではありません。
怖すぎるのは嫌だけど、ゾワっとした雰囲気を楽しみたい人にはお勧め。ジャンプスケアで脅すような安いカットもないし。50年代の雰囲気とか、ブードゥー教の儀式とか、古いエレベーターとか、いちいち長い影なんかがゾクゾクする不穏感を煽ってて、お好きな人には堪らないはず。
いちおう「どんでん返しモノ」の枠に入るようですが、いまいちキレが悪くて中盤あたりで気づいてしまうんで、以下、気にせずオチまでネタバレしつつの感想です〜。
感想
この作品、テレビでマツコ・デラックスが「人生観を決定づけた一本」として挙げていたんですよ。どこがどう決定づけられたのかまでは語られませんでしたが、ある種の性癖にブッ刺さる、世界観の確立された映画です。
主演は、最高のビジュアルだった頃のミッキー・ローク。後に悪魔(ルシファー)と判明する依頼主にデ・ニーロ。今作を好きな人が必ず話題にするのがデ・ニーロのゆで卵の剥き方ですが、まあこれは観てもらうとして。
アマプラの紹介文ではわかりにくいのでストーリーを補足すると、NYの私立探偵であるミッキー・ロークは、デ・ニーロから、行方不明になったジョニーという歌手を探して欲しいという依頼を受ける。ミッキー・ロークはジョニーの痕跡を探し、ルイジアナへ。そこでジョニーの知人や元恋人と接触。妻は亡くなっていたがその娘に会うこともできた。しかし、肝心のジョニーにはなかなか辿り着けない。しかも会った人が次々と残忍な手口で殺されるので、犯人だと疑われてしまう。
最後の方にあるクライマックスが、血の雨が降る中のファックシーン。ミッキー・ロークはジョニーの娘と一夜を共にしたのです。
その後、真相が判明。ジョニーはミッキー・ローク自身だったのです。デ・ニーロ扮する悪魔と契約を交わしたジョニー。「歌手として成功する代償に魂を捧げる」と。しかし姑息なジョニーはその契約から逃れるために、当時若い兵士だったミッキー・ロークの心臓を食べて生贄にし、魂を盗んだというわけ。ミッキー・ロークの役名は「ハーリー・エンゼル」。エンゼルのハートというタイトルはここに繋がります。
ジョニーを探していたのはハーリーの魂、自分を探させないために近しい人を殺していたのはジョニーの魂です。
1つの肉体に2つの魂。娘とのファックは近親相姦ということになります。そりゃあ血の雨が降るわけです。
まあ、なんちゅうか、ありがちな話ではあるんですが、途中で入ってくるブードゥー教に惑わされるので分かりにくい。ルシファーが出てくるってことはキリスト教の話だから、ブードゥー教関係ないよね?あるの?怪談に「因習村モノ」ってありますが、ブードゥーはおそらくアメリカの田舎の怖さの象徴として使われたのかと。
そして原作は「堕ちる天使」という小説だそうですが、このお話、ロバート・ジョンソンの伝説を下敷きにしているように思います。
1930年代にブルースギタリストとして活躍したロバート・ジョンソン。R&B好きにはお馴染みです。ごく普通のギタリストだった彼がある時期家を離れると、帰ってきた時には異様に上手くなっていたと言います。その理由こそが十字路伝説。ミシシッピー州のとある十字路で、向こうから来た悪魔に魂を売り渡し、引き換えにギターのテクニックを手に入れた、というもの。
「エンゼル・ハート」のジョニーは歌手。劇中にもルイジアナの路上でタップダンスを踊る子供の姿やバンド仲間の演奏シーンがあり、アメリカの土着的音楽が流れているのはこの伝説を意識したからでしょう。
もちろん、ロバート・ジョンソンの十字路エピソードはいわゆる都市伝説ではありますが、彼、27歳で亡くなっているんですよね…。
それと思い出したのが、映画「私の男」(2014年・熊切和嘉監督)。浅野忠信と二階堂ふみの性交シーンに血の雨が降ります。この作品、ホラーでもスリラーでもないのでこのシーンが唐突すぎて印象に残っていたんですが、「エンゼル・ハート」のオマージュなんですね。二人は義理の父娘ですから。ま、これはまた別の話。
「エンゼル・ハート」、ストーリーは初めと終わりだけ分かれば良くて、あとはたっぷり不穏感に浸りつつセクシーなミッキー・ロークを眺めていれば充分お腹いっぱいになれますのでぜひ一度はどうぞ!
アマプラに時々ある現象ですが、字幕がヒドイです!ところどころ日本語を脳内補正しながら観る必要あり!
アマゾンプライムは30日間無料体験できます。ここから申し込みに飛べます〜。
アラン・パーカー監督作品で他に観たのは「ミッドナイト・エクスプレス」のみですが、こちらもとても良かったです。脚本がオリバー・ストーン。舞台はトルコの刑務所。重いし暗いんだけど最後までずっと手に汗握る面白さでした!
![エンゼル・ハート [Blu-ray] エンゼル・ハート [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51DBslhFrbL._SL500_.jpg)

