映画ごときで人生は変わらない 

不穏映画が大好物のアラフィフ女 感想と考察が入り混じる映画レビュー。不穏度を数値化しています

【アカルイミライ】評価と感想/光るクラゲはなぜ海に還るのか?

 

不穏度

20(100を満点として)

未来ってのは絶対的に明るいものだと思うの

100点をつけた殿堂入り不穏映画はこちら。黒沢清作品も入っています。

基本情報

公開年:2003年

監督&脚本:黒沢清

キャスト:オダギリジョー(仁村雄二)浅野忠信(有田守)有田真一郎(藤竜也)

藤原耕太(笹野高史)

上映時間:115分

あらすじ

<以下、アマゾンの紹介文より引用>

生きる目的もない主人公・雄二(オダギリジョー)が唯一心を許せる存在の守(浅野忠信)。ある日、守が飼っていたクラゲを託された雄二は、新たな何かを見出していく…

評価

面白かったです!黒沢清監督作品としては珍しく(!?)観終わった後、明るい気分になりました。CURE」「回路」「カリスマ」で世界的に評価されるようになった後の2003年作品。初見です。90年代の空気を引きずっているだけに閉塞感はすごいですが、うーんどうしてだろう?どことなく明るいんですよ。

あと、衣装の主張がやけに強い。個性的なY2Kファッションというだけでは括れないものがあり、訳のわからんキャラクター(主にオダギリジョーと浅野忠信)の複雑性を強調しているように思えます。「回路」レビューでは衣装にイチャモンをつけましたが、ここまでぶっ飛んでいるとそれはそれで良い気がします。

流れで今作制作過程とインタビューで構成されたドキュメンタリー「曖昧な未来、黒沢清」も観たのでそちらも含めて以下、感想です〜。

感想

映画の中にはOVER50代、20代、10代という3つの世代が出てきます。作品が作られた2003年は主役の雄二(オダジョー)に近い世代だったワタシも50代。ついつい自分世代に肩入れをして観てしまいます。

今作に出てくる50代の一人は、雄二とその友人の守(浅野忠信)が働くおしぼり工場の社長(笹野高史)。寿司を食べさせてやるからいいだろ、と若者の家に上がり込んでテレビを見て居座る。今ならアウトなこの行為、当時は当たり前にありましたね。おじさんは何も嫌がらせでやっているわけではなく、若者を理解したいし仲良くなりたいのですよ。でも軽蔑された上に殺されます。敏感な若者は上世代の「隙あらば搾取してやろう」という魂胆を見抜くからです。イタタタタ…。

何がすごいって、これを撮影した当時の監督は40代後半。つまり笹野高史に近い世代です。彼らの気持ちが分かるはずなのに、若者に媚び、かつ搾取しようとする同世代をガッツリ殺しているのです。

「異なる価値観の衝突から、何か新しいものが生みだされるという考え方がそもそもおかしい。」

これは今作についてのインタビューで黒沢監督が言っていた言葉。身も蓋もないですが本当にその通りです。

ここまでだといつもの陰惨系ですが、物語を明るくしているのは、もう一人のOVER50代、真一郎(藤竜也)の存在。

社長を殺し、刑務所で自殺した守の父親です。雄二は真一郎のリサイクル工場で働き始めます。兄のような存在だった守が死んだという衝撃もありますが、そもそも雄二はちと変わった子なんで色々やらかす。真一郎は適度に面倒を見つつも深入りはしない。この距離感が観ているほうも心地よいし、他世代と接する時はこうでないとアカンよな、と思います。こっちなら殺されずにすむやろし。

そして3世代を繋ぐのが、守の忘形見であるクラゲです。生前、守は1匹のクラゲを飼っています。海水を徐々に薄くして真水でも生きられるくらいに改良し、雄二に託す。

雄二はそのクラゲを床下に流してしまいますが、生き延びて仲間を大量に増やし、川に出て再び海を目指します。

暗い水の中でポーッと光るクラゲはとても幻想的。川を流れる大量のクラゲを見つけた真一郎が喜びを爆発させるシーンはなんとも美しい。

そして10代世代の集団は雄二と共にビルのオフィスに強盗に入るのですが、その時に光るクラゲのようなヘッドセットをつけるんですよ。オフィスで暴れ回る10代の少年たちと、川を揺蕩うクラゲが重なります。

ラストシーンは彼らが表参道を徒党を組んで歩く長いカット。なぜか最後明るい気分になるのは未来ある10代が映っているからでしょうか。(ちなみにこの10代集団の中に松山ケンイチがいるようです。)

20代のオダジョーは何かに対してずっと苛立ち怒っているんですが、同じ苛立ちはあっても10代は楽しそう。そう、彼らにはミライがあるからね。

気になるのは、せっかく真水で生きられるようになったのに、クラゲはまた海に帰るということ。世代は巡るだけで何も変わらない、ということが言いたいのでしょうか…?10代でどんなに革命を叫んだとて、歳を取れば古き良き同じ場所に帰って行くということでしょうか?ここの解釈については今もずっと考えています。

それとドキュメンタリーのほうにプロデューサーとしてアップリンクの浅井隆氏が出られていました。この方、2020年に元従業員たちにパワハラで訴えられていましたよね。(その後和解)。おそらく若い頃の常識をアップデートできず、世代の断絶に気が付かなかったのでしょう。なんて残念…。

この映画は「異なる世代は分かり合えない」ことを描いているように思いましたが、じゃあどうするの?という明確な答えはありません。ただオダジョーと藤竜也の関係、なんかいいよね〜ってところから個々が考えるしかないのでしょうね。どんな映画?と聞かれても説明できないこの作品、いい話なんだか悪い話なんだかさっぱり分かりませんが、この2人の関係の爽やかさだけは確かです。

2020年代の今、この作品をリメイクしたらどうなるんだろう?案外、50代が20代を殺し、10代と仲良くなるんじゃないかな〜?なんて思いました。

「アカルイミライ」はアマプラで観られます〜。

アカルイミライ

アカルイミライ

  • オダギリジョー
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「曖昧な未来、黒沢清」

本編には女性がほとんど出てきませんが、こちらではプロデューサーとスタイリスト、2人の女性がインタビューに答えていて、その感性がしっかり映画に反映されているのが分かります。女性Pが「色気のある人を使いたい」とキャスティングしたのがオダギリジョーと浅野忠信と藤竜也ってのが大正解の大拍手しかないですわ。

「ジャンル映画」に関する監督の考えや、「雄二(オダジョー)はダーティー・ハリー」発言など、へえ〜と思うことがいっぱい!ファンならずとも面白いのではないかと。これのために本編観たんじゃないかってすら思ったりして。

アマゾンプライムは30日間無料体験できます。ここから申し込みに飛べます〜。

やたらと黒沢清作品レビュー書いてます。小難しく捉えられがちですが、単純に怖くて面白いよ〜ってことを伝えたくってさ。

とくにお勧めは「CURE」。一番好きな作品。人怖です。猟奇モノです。精神病棟で刑事の役所広司と容疑者の萩原聖人が対峙する有名な長回しがあります。ここに役所がセリフを間違えたのでは?と思える妙な言い様があり、ずっと引っかかっていたのですが 濱口竜介監督が著書「他なる映画と」の中で「あれは役所の即興では?」と推測されていたのには震えましたよ…。この話は長くなりそうなのでまたどこかで。

kyoroko.com

ついでに貼っておきますね。濱口竜介著「他なる映画と」。「映画をほとんど見ていない人にも理解できて、自分の感じている『映画の面白さ』への深みにつれていけるように」という思いで綴られた本。CUREのくだりが出てくるのは一巻です。

他なる映画と 1

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