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【名もなき者】感想/ティモシーの歌声に魅了されまくる141分!

 

 

基本情報

公開年:2025年

監督:ジェームズ・マンゴールド

脚本:ジェームズ・マンゴールド ジェイ・コックス

キャスト:ティモシー・シャラメ(ボブ・ディラン)エドワード・ノートン(ピート・シーガー)エル・ファニング(シルヴィ・ルッソ)モニカ・バルバロ(ジョーン・バエズ)

上映時間: 141分

あらすじ

<公式サイトより引用>

1960年代初頭、後世に大きな影響を与えたニューヨークの音楽シーンを舞台に、19歳だったミネソタ出身の一人の無名ミュージシャン、ボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)が、フォーク・シンガーとしてコンサートホールやチャートの寵児となり、彼の歌と神秘性が世界的なセンセーションを巻き起こしつつ、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでの画期的なエレクトリック・ロックンロール・パフォーマンスで頂点を極めるまでを描く。

評価

良かったです。すごく良かった。何がってディラン役のティモシー・シャラメが!なんと劇中のディランの歌をすべて歌っているんです。5年半かけて歌とギターとハーモニカを練習しただけあって、ディランにとても似ています。似ているんだけどモノマネじゃなくて、ティモシー・シャラメという人がちゃんと歌に出ちゃってる。出世作となった「君の名前で僕を呼んで」、ウッディ・アレン監督の「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」、そしてSF大作「DUNE」と、「いつも美味しいとこもってくな〜」というイメージの役者でしたが、今回は輪をかけていいところを持っていってしかもモノにしているという凄まじさを感じました。まだ余韻で頭がふわふわしていますんで、今んところ書けるだけ書く感想です〜。

感想

いつも年長者風を吹かせているワタシですが、さすがにディランはリアルタイムでは知りません。ボブ・ディランはすでに伝説のアーティストでした。

知っているのは代表的な曲をいつくかと断片的な情報。それでもフォーク・フェスで、いつものように「風に吹かれて」を期待する大観衆の前でロックンロールをぶちかまし、大ブーイングを浴びた事件のことは知っています(最近ではブーイングは音響の酷さへの抗議であって、彼のロックは好意的に受け止められたという説も出てきています)。

監督のジェームズ・マンゴールドも1963年生まれ。ですので1960年からはじまるこの青春物語の時代を経験してはいない。でもイイ感じに小汚い60年代のNYは「あの頃」を感じさせます。美術セットもとても良い。

この映画はNYに出てきたディランがフォーク界の大スターになり、問題のフェスに至るまでを描きます。最後にカタルシスのあるライブシーンが控えているという構成は「ボヘミアン・ラプソディ」と同じ。

そのボヘミアン・ラプソディと比較すると、本作のボブ・ディランはいまいち心の中が読めません。マイノリティとして生きるフレディ・マーキュリーが、コンプレックスをバネにして野心を燃やすのはよく理解できますが、ディランにはあんまり「野心」が見えないんですよね。いや、ギター1本抱えてNYに来た時点で「有名になりたい」「金持ちになりたい」という野心はムンムンなはずですが。存命している人なんであんまり汚い部分は描けないのかな、と思いました。

あとそれ以上に本当にディラン自身が謎めいた人なのかも知れません。最後のフェスでも歌う「ライク・ア・ローリング・ストーン」。歌詞の意味はいかようにも取れます。「YOU」を多用しているし、サビにいたっては「How does it feel?(どう感じる?)」とこちらに疑問を投げかけています。「I」=自分の話はしてないんですよね、全然。自分の話は一切せず、こちらを指差して答えの出ない問いかけを続ける。こんな歌が彼の代表曲であること自体、ディランを謎めいた存在にしていますよね。

さて、そんな一筋縄ではいかない男、ディランを演じるのがティモシー・シャラメ。冒頭、憧れの歌手を病室に見舞うのですが、そこでアコギを取り出して一曲。もうこの瞬間に魅了される。作中の人物たちも、観客も。声が美しいとかすごく上手いとかじゃないんだけど、妙に説得力のある歌声なんですよ。それで童顔。そりゃあすぐ売れるだろうて。

さらに彼、ところどころハッとするような台詞回しをします。歌うように語るんですよ。口をついて出てくる日常の言葉がもう詩になっている。ディランが本当にこういう人かは分かりませんが、実に魅力的。

そんで、冒頭にも書きましたが、全てティモシー自身がギターを弾き、歌っている。まるで初めて世界に触れたかのように繊細で、でも根拠のない自信からくる傲慢さをも感じさせる声。本当に豊かな感性を持った人なんだなあと思います。彼の歌声は本作のサントラがApple Music他の配信で聴けるので興味のある方はぜひ!

パンフレットも久々に買いました。ディランを取り巻く人間関係も良いし、音楽と音響はもちろんいいし、衣装などのビジュアルも素敵。それと60年代当時は昔の歌をカバーするのが普通でディランのように自作の歌を歌うというのは珍しかった…というのには驚きました。音楽が今ほど巨大産業ではなかった時代の様子はとても新鮮!

…などなど色々と言いたいことはあるけど、今しばらくはこの映画の余韻に浸ろうと思います。

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こちらはサウンド・トラック。ティモシーが歌っています。

余談になりますが、ディランが付き合う美人フォークシンガー、ジョーン・バエズが「朝日の当たる家」という歌を歌うシーンがあります。これはアメリカの伝統的なフォークソング。「パーフェクト・デイズ」という映画の中で、これの日本語版を石川さゆりが歌っています。すんごくイイです。この歌聞くだけでも価値があります!レビュー置いておきます。

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