映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【ドレミファ娘の血は騒ぐ】感想/伊丹エロ教授が脳裏に焼き付く怪作!


ドレミファ娘の血は騒ぐ (HDリマスター版) [DVD]

基本情報

公開:1985年

監督:黒沢清(他監督作品:スパイの妻 岸辺の旅)

脚本:黒沢清 万田邦敏

キャスト:洞口依子(秋子)伊丹十三(平山教授)麻生うさぎ(エミ)加藤賢崇(吉岡)

上映時間:80分

あらすじ

<以下、Amazonプライムビデオの紹介文より引用>

秋子は高校時代の上級生吉岡を慕って、田舎から都内の某大学にやって来た。秋子の目に、華やかなキャンパスは夢のようにも、またハレンチのようにも映る。そこで発見した吉岡の姿は、すでに以前の彼とは似ても似つかぬ軽佻浮薄な出鱈目人間のそれであった。抱き続けた夢は破れ、秋子は田舎に帰る決心をするが、それをひきとめたのは心理学ゼミの教授・平山だった。「恥じらい」の心理を独自な理論で研究している初老の平山は、秋子を格好な研究対象として自説の完成を計る…。

「世界のクロサワ」と言われたら「それはアキラかキヨシか?」と問わねば会話が進まない時代となりました。「ドレミファ娘の血が騒ぐ」はキヨシのほうの作品です。

タイトルだけは昔から聞いていましたが、そのタイトルから中身がまったく想像できないのと機会がなくてこれまで視聴してませんでしたが、アマプラに入っていたのでこの度観てみましたよ。ううーん、もっと若い時に観たら「理解出来ないワタクシの感性が鈍いのか…」などと2晩くらい真剣に悩んだことでしょう。今は怖いものなしのおばちゃんなので躊躇なく言えます。「わからん」と…。それでももちろん見所はたくさんありますよ!では感想いってみましょう〜。

感想

バブル前夜のあの空気が詰まってる

1985年作品。時はバブル経済前夜でございます。80年代の文化といえば「薄くて軽い」つまりは軽薄ですが、その軽薄の一旦を担うのが「アバンギャルド的なものへの憧れ」でした。そんな憧れが詰まったような作品だなあと思いましたよ。Epicソニーとディレクターズ・カンパニーが制作クレジットに名前を連ねている本作は、もとは日活ロマンポルノとして制作されたものの、納品を拒否されたために絡みシーンを大幅にカットし編集しなおしたのだとか。制作中のタイトルは「女子大生 恥ずかしゼミナール」。中身に合ってて良く分かりますし観たくなるいいタイトルじゃないですか!

以下、ワタシの勝手な想像ですけど、おそらくこのタイトルとまだ固まってない脚本を出して日活側に通してお金をひっぱり、でも新進気鋭の若手監督が集まったディレクターズ・カンパニー内ですから「好きなことやっちまおうぜ!」となってアバンギャルド過ぎな作品を作っちゃって、日活側から「いや当初と話が違うんですけど」と断られ、宙に浮いた同作をepicとディレクターズ・カンパニー側が買い取ったのではないでしょうか。(再度言いますけど妄想ですよ!)

おおらかな時代というかどんぶり勘定な時代というか、若者が元気だった時代というか。たぶん合理性が尊ばれる今ならこんな作品、生まれんな。そういう意味で貴重な作品と言えましょう。伊丹十三もエロ教授役で出てるしさ。

後年のクロサワっぽさがすでに見える?!

同作は黒沢清監督にとって1983年の「神田川淫乱戦争」(ピンク映画の枠組みで上映されたコメディだそう)に次ぐ長編2作目。すでに後の「黒沢清っぽいカット」が観られます。人物の後ろからまるで水面を滑るようにスーッとカメラが後頭部に寄っていくシーン。写っているものは普通なのにカメラの動きのせいで奇妙。なんとも居心地が悪くなる違和感です。「CURE」にも同じカットがあったように思います。

また、冒頭のほうで洞口依子がキャンパス内を歩くシーン。カメラ前を横切る赤い扉、赤い旗を持った女学生に追い越し追い抜かれるなど、おそらく何度もリハをして計算しつくして作ったシーンに見えます。(とても美しいです)

「スパイの妻」でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した際のドキュメンタリーで主演の蒼井優がこんなことを言ってました。「黒沢監督は『ここに立ってからこうこっちに動いて、このセリフを行ったらこっちに向かって』、と動きを入れてリハーサルをするんです。ふつうは(ホン読みの際は)ホンだけで合わせることが多いのではじめての経験でした」(うろ覚え)

このやり方を当時からされていたのでしょうか?とても演劇的なんだけど、カメラが動くことで演劇を超えてくるというこの感じ「今、映画を観てる!」って思えてとても好きです。

それと、同作はジャンルとしてはコメディらしいですが(正直、笑いどころあまりないです)後の黒沢ホラーに出てきそうなロケ地のホラーみがすごい。大学シーンは東京水産工業試験所跡地で撮られたそうで、初台のここ現在はオペラシティになっているそうな。

まとめると

黒沢清監督作品については簡単に語っちゃいけないなと思っていたのですが、書いとかないと観た事すら忘れそうだったんで書きました。一番好きな「CURE」、それからマジで怖い「回路」あたりも書きたいのですが、また今度。あ、あとエッチな裸のシーンちょくちょくありますけど映倫区分はG(誰でも観られる)となっています〜。

人生変わった度

赤電話のお姉さんエロかったですね!

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この後続けて観てしまった2本の黒沢清作品レビューもぜひどうぞ。

kyoroko.com

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