映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

NHKドキュメント 「シン・仮面ライダー」を観て。【映画周辺の雑記】

シン・仮面ライダー観てきたよ!と軽めの感想を書きましたが、ちょっとこれについても書いときたくてざざざーっと。

「シン・エヴァ」の際に製作、放送されたNHKの密着ドキュメント。確かあの放送後に興行収入100億円突破したような記憶があります。それに味を占めたのか(?!)またしても放送されていた庵野作品撮影ドキュメンタリー「ドキュメント シン・仮面ライダー ヒーローアクション挑戦の舞台裏」。今回は「庵野の無茶な要求に戸惑うアクション監督の苦悩」がメインになっていました。

さて、ワタシは主に情報番組、情報バラエティなどのテレビ番組作りにちょいと関わる仕事をしていたのですが、こういう演出家っています。本人の中に正解があるのかないのか知らんけど、とにかく人からネタ(アイデアその他なんでも)を出させます。出したネタがいいのか良くないのか、そのジャッジはふわふわさせつつ、ぎゅうぎゅうと雑巾を絞るように出させる。テレビの場合今週の視聴率を分析したらすぐ来週に反映させたいので、とにかく時間がない。夜の8時に「明日の昼までにお願いします」みたいな発注が来る。こちらは昼夜問わず仕事をしてヘトヘトになり、さすがに「もうありません!」とブチ切れるとピタリと音沙汰がなくなる。出来上がったものを観ると結局何一つこちらが出したものは使われていない。役に立たず悪かったかな…なんて反省していると、「前回はありがとうございました〜」なんてケロッと次の仕事をよこす。場合によっては「おかげ様で〜」など猫撫で声を出しながら。このパターンの方、正直ワタシはお断りするケースが多かったですが、それでもついていく人は宗教の教団員っぽくなるんです。ついていける人を羨ましく思うこともあります。うまくいけば教祖のようにその人は神格化され、意を組んで動くチームが出来上がり、大きな仕事を成し遂げることでしょう。

庵野ドキュメント番組の中でこんな話がありました。「先にコンテを切っちゃうとそれ以上考えなくなるからコンテ切るのやめました」。わかります。正解はないのだから早急に決めたくない。もっと良いものがあるはずだ。すべてのアイデアを机の上に並べてその中から選択したいのでしょう。これを「モノづくりの苦しみ」と尊びます。

しかし時代は変わるんだよねえ。この手のアイデア出しAIが一番得意そうなんだけど、まだ制作現場で試してないのかな?

「ドキュメント シン・仮面ライダー ヒーローアクション挑戦の舞台裏」を観たワタシの感想は「もうこれが最後だろうし、苦しんだ人たちにもいい思い出になるんだろうな」というものでした。

このドキュメント番組は単に「シン・仮面ライダーの撮影現場はこんなんでした」というだけなく「映像制作の現場がこんなんだった時代もありました」という意味合いの番組となって残ることでしょう。他の多くの仕事がそうであるようにこのやり方はもうすぐ淘汰されます。その後に出来上がったモノが同じように面白いのか、より面白いのか、はたまたまったくつまらんモノなのか、ともかくそこまで見届けたいなと思うのでありました…。